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33*来た日②

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暫く山道を歩いて馬車に乗せられて二時間ほど立った時

「王都に入ります。」

そんな言葉が聞こえて馬車の窓から外を見る
見たことない景色ヨーロッパのような綺麗な街並み行き交う人も少しドレスっぽいような丈の長いスカートやシャツにスラックスというような格好やとにかく日本ではあまり見ない格好をしていた

(ここは‥‥日本の何処かではないのか?)

馬車のベンチに寝かせた雛を見てもやはり起きる気配がない

(このまま死ぬとか‥‥ないよな?)

何で起きないんだよ。
何処にも怪我した様子はないのに。

なにがあったんだよ。


お願いだから。お嬢、起きてくれよ。




そう願いながら雛の手を握る




「もうすぐ、王宮に入ります。そしたらすぐに医者が来ますので。」

「はい、よろしくお願いします。」






*****


「ん~~特に異常は無いみたいですねぇ~ただ単に寝てるだけですねぇ」

「でも、ずっとこんな感じなんです。揺すっても起こしても抱きかかえても何しても唸りもしないしただ呼吸してるだけで‥‥」

「そしたら、精神的なもの‥‥なのかもねぇ~脳にも異常は見られないし~暫くしたら起きると思いますけどねぇ~~」

「‥‥」

「それか‥‥道を通る時に何かあったのかもねぇ」

「道?」

「神使様は、世界を跨ぐ道を通ってこっちの世界に来るんですよ~その時に寄り道したりぶつかったりすると魂が割れると言われてましてねぇ~そうなると起きない事にも説明がつくんです‥‥」

「てめぇ!!お嬢が死ぬって言いてぇのか!!??」

「そ、そんなことは言ってませんがねぇ、可能性の話ですよぉ」

「っ!!」

「まぁ、見た所異常はないのでねぇ神使様はいつ起きるかは分かりませんが病気では無いですからねぇ~」

「‥‥」




医者はそう言うとそそくさと部屋を出ていった



「神使様、宜しければ、こちらに来た時の状況などお話し頂いても良いでしょうか?」

ブライアンが来ると悠二は少し疲れた表情で雛の手を握っている

「俺はお嬢から離れれないのでここで良ければ。」

「十分です。ありがとうございます。」





「では、まずはお名前をお伺いしても良いでしょうか?」

「俺は、悠二と言います。こっちは‥‥雛です。」

「悠二様と雛様ですね。では‥‥お二人のご関係は‥‥?」

「‥‥家族、みたいなもんです。」

「家族‥‥ですか。」

「はい。血とかは繋がって無いっすけど。兄貴みたいなもんです。」

「はぁ。では悠二様、ここにこられた時のことを覚えておりますか?」





悠二は来た時のことを簡潔にブライアンに話した。
ブライアンはそれを聞いて何かメモを取ったりしている

「悠二様、顔色がとても悪くなっていらっしゃいますのでどうか少しでもお休みになられて下さい」

「‥‥ありがとうございます。でも、お嬢が目が覚めた時に一番近くにいたいんでこのままで大丈夫です。」

「ですが‥‥」

「大丈夫です。俺は頑丈なんで」

「‥‥では、何か食べるものをここに持って来ますので食べて下さいね」

「ありがとうございます。」


パタン



「‥‥はぁ。お嬢、なんで起きないんだよ。魂が傷つくってなんだよ‥‥」


雛の寝顔を見ながら頬をお撫でる

「早く起きていつものくだらない話しましょうよ。」
「あのホラー映画、一緒に観に行くって約束したじゃ無いっすか」
「あ、あとほら、ハタチの記念に二人で飲みに行くってまだできてないじゃ無いですか。いつ行きましょうか?」
「お嬢、そういえば、今日でしたよね?いつも観てるドラマ。ちゃんと録画して来ました?」
「あーまたお嬢にケーキ作ってもらいたいなぁ」
「お嬢が作るクッキーも美味しいですからね。また食べたいなぁ」





一晩中話しかけては考えて話しかけては考えてを繰り返す



「良い加減、お嬢、寝すぎですよ‥‥」
「お嬢、俺、本当はわかってたんです。お嬢が俺の事好いてくれてるって‥‥前、俺に告白してくれようとしたのも‥‥でも、傷つけて‥‥知らないふりして‥‥本当にすみませんでした‥‥でも、俺は極道やめれねぇし親父と約束したから‥‥お嬢はちゃんと堅気の道に行ってもらうって。堅気のめちゃくちゃ良い男捕まえてもらって、でもって、ちゃんと手に職つけて万が一、女手1つでやっていかなきゃいけなくなったとしてもやっていけるようにって。こんな俺みたいな極道の男なんかといて、母親の二の舞になんかさせねぇって‥‥親父と話したんです。だから、俺もお嬢のことは『妹』とか、『守る存在』としてだけ接して来ました。でも、お嬢がこのまま目を覚まさないカモって思うだけで‥‥ぐっ‥‥お嬢、本当は大好きです。お嬢だけが、この世で唯一、に感じるくらい好きです。初めて会った時からお嬢だけを見てきました。今更って言われるのわかってます。でも‥‥言えないままお別れなんかしたく無いっす‥‥。ぐすっ‥‥お嬢、起きて下さい。一緒にいるだけで良いから。欲張らないから、生きてて下さい。目を覚まして下さい‥‥お嬢‥‥!お嬢・・!雛っ‥‥!」


ポタポタと雛の顔に悠二の涙が落ちる
手を握る力も強くなる
そんな時、少し雛の手が動いた気がして雛の顔を覗き込む




「・・・ゆう、じ?」


「~~~お嬢っ!!!」


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