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32*来た日①

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真っ白な中をお嬢を引き寄せて抱きしめながら落ちていく浮遊感に身を固くして目をぎゅっと瞑る

いつまでたっても痛みが襲うことがなくて恐る恐る目を開けるとそこは木に囲まれた湖のほとりにいた


「え?いままで俺たち‥‥っ!お嬢!!」

腕の中の雛の安否を確認する

息をしているか、鼓動は動いているかを確認して怪我などしていないかも確認する

これだけ動かしているのに雛が起きないこと以外異常はなかった

「ここは‥‥どこなんだ?」

携帯を開いても電波がないのか圏外のマーク時間はさっきより一時間ほど進んだだけだった

森の中、朝だからいいがもし夜もここにいないくてはいけなくなったら大変だ。
とりあえず雛に上着をかけて大きい木の木陰に寝かせる

薪用に枝を持って来たり辺りを少し散策して見る

(ここはやっぱり森の中ってことだな。)

雛のもとに帰っても相変わらず寝たままだ時折、呼吸の確認だけとる

「こんなに寝るとか‥‥おかしいよな。」

病院に行きたい
でも、ここがどこかもわからないし万が一野生動物が出て来て襲われても困る‥‥
しかし、雛をこのままにしておくこともできない‥‥

どうしたものかと頭を悩ませていると湖の方から音がする

「魚か?」

(そういえばそろそろ昼だな)

湖の中をよく見ると魚が何匹か泳いでいる
カラフルな魚だが‥‥まぁ、食えるだろう。

とりあえず食料!

湖の中に入って素手で魚を素早く取る

陸に投げられた魚がビチビチ言っている


「こんなもんか。」

4匹ほど取って焚き火に魚を炙った


「お嬢~~早く起きてくださいよ~~腹減りませんか?」

「‥‥」

雛は微動だにせず呼吸だけしている

「先に食っちゃいますよ~~?」

「‥‥」


(ほんとに、どうしたんだ?寝付きの悪いお嬢なのにこんなに深く寝るなんて‥‥)


頭かどこか打ったのか?

俺が寝ている間に何かあったのか?

やっぱり、こんなところ誰か来るとは思えない!やっぱり今日中に人里に行こう!


魚をチャチャっと食べて雛をおぶってよし行こう!となったところで‥‥





「焚き火の煙が上がってるぞ!」

「師長の言っていることは本当だったのか‥‥」

少し遠くで声が聞こえる

(誰か来る‥‥敵か?味方か?)

悠二は雛を一回おろして相手の出方を見る

木に隠れて身を固めて息を殺す


先ほどまで魚を焼いていた焚き火の周りを入念に散策する人たち


(他の組のもんって感じでもねぇな。それにあの服装‥‥なんだ?見たことねぇ。顔立ちも日本人ぽくねぇし‥‥)

悠二は散策している人たちを入念に観察している




「ーーーん?」

(やっべ!)

視線を感じたのか一人の男が悠二たちに近づいて来る


(こうなったらちょっと出て殺るしか‥‥)


「あぁ、ここにいたんですね」

濃い紺色の短髪で薄い焦げ茶色の瞳の優しい顔つきをした男が少しホッとしたように悠二に話しかける

「‥‥お前は誰だ。」

「すみません、私はメルデア王国第一騎士団団長をしておりますブライアン・ロバーツと申します。この国の王宮魔術師長がこちらに神使様が来ると聞いて探しておりました。」

(王国?騎士?魔術?神使?)

悠二の頭がハテナでいっぱいになる

「よくわかりませんよね。でも、私どもは敵ではありません。状況も幾らか説明できるかもしれませんし‥‥できれば一緒に来てはくれないですか?」

敵ではないと言われて少しホッとする。
でも、それだけじゃ信用するに足りない。
でも、この森にいても拉致があかないし雛を医者に見せたい‥‥
少なくともこのブライアンって奴から嫌な気配は感じないし‥‥と考えてついて行くことにする。

「っ!おめぇらを信用するわけじゃねぇけど‥‥ついて行くなら条件がある。」

「条件?何でしょうか?」

「お嬢を‥‥見てもらいたい。医者に連れて行け。」

悠二の背中で隠していた雛をチラッと見せてブライアンに言うとブライアンは目を丸くさせてとても驚いているようだった


「ま‥‥さか。いきなり神使様が二人も‥‥!?聞いたことがない‥‥それに女性‥‥いや、大変だ、こうしては行けない!」

何かブツブツを言っているのを聞き耳立てながら様子を伺う

「わかりました。医者ですね、すぐに手配します。急いで王宮へ行きましょう。」



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