28 / 39
28*雛の過去②
しおりを挟む「雛、話があるの」
珍しく夜のお仕事から少し早めに帰ってきてお母さんに起こされた
「なに?」
眠い目をこすりながら居間に行くと男の人が座っていた
「あのね、少し前からお母さん、この人とお付き合いしていてね、紹介しておきたくて」
頬を赤くして照れたように話すお母さんはとても幸せそうで私まで嬉しくなった
でも、それは間違いだった
「おい、お前、あの客と寝てんだろう!?」
「そんなわけ‥‥」
バチン
「お母さん!!!!」
「あ”ぁ?ガキはあっちに行ってろ!!!」
男の怒声が部屋に響くビクっとしてもお母さんを叩くなんて許せない。
男を睨みつけてお母さんを庇うように立ち上がる
「なんだその目はぁ!!??」
どす
ガシャン
思いっきりお腹に蹴りを食らってテーブルに吹き飛ばされた
「やめて!!!!雛に手を上げないで!!私が悪かったから!!!」
「お前、誰のおかげで飯が食えてんだ?おめぇみたいな女を囲ってやってる俺のおかげだろうが?あぁ?」
「ごめんなさいごめんなさい」
「俺はお前と別れてもいいんだぜ?それを嫌がるのはおめぇだろ?それに、浮気したのもおめぇだろ?全部お前のせいだろ?」
「ごめんなさいごめんなさい」
お母さんは泣きじゃくって震えて男にすがりついている
くるしくて立ち上がれない
またお母さんが殴られる
やめさせなくちゃ
そんな気持ちで精一杯男の事を睨みつける
「このガキまだ立場がわかってねぇんだな?」
何発か殴られても睨む事を辞めなかった
男はしびれを切らしたのか髪を思いっきり掴んで引きずってベランダに捨てるように投げた
「ここでちゃんと反省しろ」
ガラガラピシャン
お母さんが窓越しに何か言っている
でも、お母さんには笑って大丈夫って言った
男にカーテンを閉められ一晩中薄着でベランダで過ごした
次の日、朝学校があるからなのか部屋に入れてくれた
お母さんは何回もごめんねと言ってくれた
「おまえ、この事学校に言おうとか思ってないだろうな?そんなことしてみろ。おめえの大事なお母さんがどうなっても知らねーぞ?」
ニタァと汚い笑みを浮かべて言われた
「言わない。」
「物分かりのいい娘でよかったなぁ?」
「雛‥‥ごめんね‥‥」
「私は大丈夫だよ。行ってきます」
その日の体育の時間、私は倒れた
保健室で目が覚めて先生が心配そうに顔を覗き込んできた
「梅垣さん‥‥ちょっと、話聞いてもいい?」
(あ、体見られた?)
「もしかして‥‥お家の人に、暴力とか‥‥振るわれてる?」
直球で言われて少し戸惑ったが男の言葉を思い出して先生に笑顔を作る
「あー、いや、これは、階段でこけたんですよ~~最近寒いから氷張ってるじゃないですか!それでツルーンって滑っちゃって!お母さんとはとっても仲良しですよ!」
「あ、そうなの?」
明らかに嘘ってわかるくせに。
面倒ごとは嫌だもんね。
知らないふりしてくれたらいい。
大丈夫、私は。大丈夫
それからも頻繁に暴力を振るわれることが多くなって行った
でも、誰にも相談しなかった。
言っても仕方ないってわかってたから
その日は、家に帰ると男だけが部屋にいた
ランドセルを置きに自室に行くとなぜか男が入ってくる
「おまえ、本当に母ちゃんのこと好きだよな?」
「‥‥好きだけど?」
「じゃあ、母ちゃんのためならなんでもできるよな?」
「‥‥は?」
グイ
男に腕を取られて畳まれている布団に投げられる
男は酔っているのかお酒くさい
男が上に被さってきて何をされるのか察した
絶対、嫌だ!!!
「やめて!!どいて!!!!」
「うるせぇ!!!」
バチン
「気持ち悪い!!!いや!!!!」
「へへ、あの女のガキなだけあって‥‥」
男が顔を近づけてきて咄嗟に
「やだーーーー!!!!」
頭突きして思いっきりお腹を蹴り飛ばす
男がよろけた隙に立ち上がって靴も履かずに外に飛び出した
家からどのくらい走ったのかわからない
ここがどこなのかも分からない
河原の橋の下に身を隠して声を殺して泣いた
このまま私は死んじゃった方がいいんじゃないか
そうしたら、お母さんは少しでも悲しんでくれるかな?
‥‥いや、ホッとするんだろうな
なんでお父さんはいなくなっちゃったんだろう
なんで私ばっかりこんな目に合わなきゃいけないの?
もう嫌だ。辛い。悲しい。
お母さんは謝るだけであいつと別れてくれない
お母さんが幸せならって思ってたけどもう無理だよ‥‥
誰か助けて‥‥
10
お気に入りに追加
230
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
もう彼女でいいじゃないですか
キムラましゅろう
恋愛
ある日わたしは婚約者に婚約解消を申し出た。
常にわたし以外の女を腕に絡ませている事に耐えられなくなったからだ。
幼い頃からわたしを溺愛する婚約者は婚約解消を絶対に認めないが、わたしの心は限界だった。
だからわたしは行動する。
わたしから婚約者を自由にするために。
わたしが自由を手にするために。
残酷な表現はありませんが、
性的なワードが幾つが出てきます。
苦手な方は回れ右をお願いします。
小説家になろうさんの方では
ifストーリーを投稿しております。
美人すぎる姉ばかりの姉妹のモブ末っ子ですが、イケメン公爵令息は、私がお気に入りのようで。
天災
恋愛
美人な姉ばかりの姉妹の末っ子である私、イラノは、モブな性格である。
とある日、公爵令息の誕生日パーティーにて、私はとある事件に遭う!?
行き遅れにされた女騎士団長はやんごとなきお方に愛される
めもぐあい
恋愛
「ババアは、早く辞めたらいいのにな。辞めれる要素がないから無理か? ギャハハ」
ーーおーい。しっかり本人に聞こえてますからねー。今度の遠征の時、覚えてろよ!!
テレーズ・リヴィエ、31歳。騎士団の第4師団長で、テイム担当の魔物の騎士。
『テレーズを陰日向になって守る会』なる組織を、他の師団長達が作っていたらしく、お陰で恋愛経験0。
新人訓練に潜入していた、王弟のマクシムに外堀を埋められ、いつの間にか女性騎士団の団長に祭り上げられ、マクシムとは公認の仲に。
アラサー女騎士が、いつの間にかやんごとなきお方に愛されている話。
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした
さこの
恋愛
幼い頃に誘拐されたマリアベル。保護してくれた男の人をお母さんと呼び、父でもあり兄でもあり家族として暮らしていた。
誘拐される以前の記憶は全くないが、ネックレスにマリアベルと名前が記されていた。
数年後にマリアベルの元に侯爵家の遣いがやってきて、自分は貴族の娘だと知る事になる。
お母さんと呼ぶ男の人と離れるのは嫌だが家に戻り家族と会う事になった。
片田舎で暮らしていたマリアベルは貴族の子女として学ぶ事になるが、不思議と読み書きは出来るし食事のマナーも悪くない。
お母さんと呼ばれていた男は何者だったのだろうか……? マリアベルは貴族社会に馴染めるのか……
っと言った感じのストーリーです。
政略結婚の約束すら守ってもらえませんでした。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
「すまない、やっぱり君の事は抱けない」初夜のベットの中で、恋焦がれた初恋の人にそう言われてしまいました。私の心は砕け散ってしまいました。初恋の人が妹を愛していると知った時、妹が死んでしまって、政略結婚でいいから結婚して欲しいと言われた時、そして今。三度もの痛手に私の心は耐えられませんでした。
【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。
112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。
愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。
実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。
アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。
「私に娼館を紹介してください」
娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる