上 下
3 / 39

3*王子様と会うことになりました

しおりを挟む



大人しくその部屋で待っているとドアがノックされた

「・・・ハイ。」


カチャ

「失礼します。」

背の高い濃い紺色の短髪と薄い焦げ茶色の瞳が印象的な綺麗な男の人と、シルバーのようなグレーのような肩にかかるくらいに切りそろえられていて、薄い青の瞳が印象的な男の人二人が一礼して入ってきた。

「雛様、悠二様、お迎えにあがりました。私は、メルデア王国第一騎士団団長をしておりますブライアン・ロバーツと申します。そしてこっちのが副団長のノア・バンクスです。」

一度、悠二を見ると「大丈夫です」と言いながらニコッと笑ったのでそれを見て頷いて
入ってきた男達に視線を戻す。

「私は、梅垣 雛です。こっちのは、大磯 悠二です。よろしくお願いします。」

名前を呼ばれてたので知ってはいるんだろうけど『一応』、と自己紹介してペコっと頭を下げる

「では、殿下が待っておいでですので行きましょうか。」
ブライアンがそう言って手を差し出す

(この手は・・取ったほうがいいのか?)
迷った挙句に差し出されてるし、とオズオズと手を重ねようとした時

「ブライアンさん、気軽にお嬢に触れるのはやめてくれませんかね。」

悠二が怒っている。いつもはヘラヘラしてるくせにこれはガチ怒り寸前だ。
空気がピシッと割れたように一気に冷たくなった気がしたがブライアンは気にしてないように手を引いて悠二に頭を下げた

「申し訳ございません、悠二様。以後気をつけます。」

それを見て雛は内心オロオロしたが表面には出さないようにした。
悠二を睨みつけたら口をへの字にしてプイッとそっぽ向かれてしまった。

(プイってなんだ、プイって。可愛いかよ。そんなに怒ることでもないでしょうが!あいつの沸点どこなの?イマイチ分からないな。)


「団長、急がないと殿下がお待ちです。」

ノアがブライアンに言うと無表情で扉をあけて待っていた

「悪い。では、行きましょうか。」
そう言ってブライアンは前を歩きそれに私たちも後ろについて行く。


暫く行くと大きな扉の前に着いた

(ここに王子様が・・・?)

コンコン

「雛様と悠二様をお連れしました。」

「入れ」

中から厳格そうな声が聞こえて少し背筋が伸びる


カチャ

「失礼します」

先ほど来た時と同じようにブライアン達は一礼して部屋に入るから見よう見まねで挨拶をして入る




「・・・来たか。」

そこには、とても綺麗な金髪をした目がエメラルドグリーンの美男子が立っていた

(…綺麗)
「…綺麗」

声に出てた
「あっ」と口を抑える
悠二はなんとも言えない顔でこちらを擬視しているが無視することにする


「はは。ありがとう。」
きらきらスマイルでとても目が眩しい。
いつの間に近づいていたのか近くに来て手を取られ甲に口付けられる

「ひゃっ」
そんなことされたことないからどんな反応をしていいのかわからず固まると後ろから思いっきり怒鳴り声がする

「お嬢に何しやがるっ!!!」

悠二が王子の肩に手を掛け引き離すと途端に周りにいたものが動き出す

(っ!やばい!)
「ちょ、悠二!」

王子に手を出しそうな勢いに周りにいたブライアン達が悠二を押さえつけていた

「殿下、お怪我は?」

「大丈夫だ。」

「うっ!ぐっ・・・」

ノアが悠二を床に押し付けている

「悠二を離してください!悠二!っ!」

悠二に近寄ろうとするがブライアンに制止されてしまって動けなくなる

「雛様、こちらとしても手荒な真似はしたくありません。暫く、悠二様は頭を冷やしていただいてから来てもらってもいいでしょうか?」

雛の眉間にシワができる。これは‥‥暗に『部屋から悠二を出せ』と言われている。もしくは牢屋とかに入れられてしまうのでは・・・?
そんな予感に素直に頷けない

「‥‥もう良い。悠二殿も雛殿を大切に思っての行動だと思う。次は、気をつけるはずだ。でしょう?悠二殿?」

王子の言葉に一瞬光が見えた気がしたがすぐに思い直す

「‥‥いや、悠二は外に出てなさい。」

「!」


雛の言葉に一同が驚き一瞬目が見開く



「なんでですか!!俺はお嬢の側にいます!」

「うるせぇ。外にいろって言ってんだ。頭を冷やせ。扉の前で待ってろ。」

「っ!!‥‥はい、畏まりました」

雛の怒声に静かに頷き扉から悠二が出て行く

先ほどとは打って変わって引き締まった顔つきで王子を見て頭を下げる

「先程は私の護衛が早とちりしてしまい申し訳ありませんでした。よく言って聞かせますので、今日のところは勘弁して下さい。この通りです。」

静まり返る部屋の中王子が口を開く

「‥‥いや、私も女性に対して軽率だった。申し訳なかった。だから気にしないでくれ」

「ありがとうございます。」

とても綺麗な笑顔で返す

「では、今の状況について話しておこうか。そこに座ってくれ」

「はい。失礼します。」

一人がけのソファーに王子が、ブライアン達は壁に背を向けて姿勢良く立っている。
王子の斜め前に置かれたソファーに腰を下ろし王子を見る

「まず、我が王国、メルデア王国に来てくれたことを感謝する。私はこの王国の第一王子をしているマット・ハーデン・メルデアだ。」

「え?あ、はい。私は梅垣 雛‥‥梅垣が家名で、雛が名前です。」

(聞いたこともない国の名前だな‥‥‥。)

「雛殿。いろいろとわからず不安でしょう。でも、これからは私どもも雛殿達の身の安全とサポートして行くから安心してくれ。まずは、君たちについてなんだが。この世界には1000年以上前からの言い伝えがある。そして、600年ほど前からわかって来たことなんだが、この世界には別の異世界からの者が度々迷い込むらしい。その者のことを『神使(しんし)』と呼ばれている。 それは、この世界にはない知識を広めてとても国が繁栄するとされるから『神の使い』として讃えられている。そして、君と悠二殿は『あの場所』にいきなり現れた。見たこともない服装、見たこともない道具を持ち青ざめた顔をして倒れていたんだ。わが国、建国340年のこの歳月の中、この国には神使が訪れることはなかった。だから、度々無礼な真似をしてしまった。申し訳なかった。」

そう言って頭を下げる王子様。
って言われても、イマイチピンと来ずぽけーっとしてしまう

「あの、迷い込んだのはわかりました。私たちが神使?と言われる者なのも‥‥ただ、私たちには国を繁栄させるような知識や力なんかないと思いますよ?それに、私は来た時のことをよく覚えてなくて、『あの場所』もわからないんです。」

心底不思議そうに首をかしげる。
この国に来た時のことがまるでわからない。悠二は覚えているのだろうか‥‥‥

「雛殿は謙虚だな。此処では君たちの普通が私たちには普通ではないんだ。その『普通』を教えてくれるだけで国が繁栄するんだ。だから、君たちは普通に過ごしてくれてれば良い。
不便があったり雛殿の国との違いを話してくれるだけで良いんだ。だからこそ、君達は国の最重要人物。つまり、保護するべき対象なんだ。王族に匹敵するくらいの権力があると言ってもいいくらいだ。」

「王族!?いやいや、そんな滅相も無い!私達はただの平民です!」

「君たちの世界ではそうだったのかもな。しかし、悠二殿のあの態度‥‥普通の一般人への忠誠心では無いように感じるが‥‥?雛殿が目を覚まさなかった時、片時も離れようとしなかったし心から心配しているように見えた。」

「あー‥‥悠二は、祖父の部下なんです。そして私の護衛でもあるのであの態度なだけでそれ以上でも以下でもありません。」

自分で言って少し悲しくなるが事実なんだから仕方ない。

「護衛?なぜ一般人が護衛なんか必要になる?」

「うっ!そ、れは、祖父が‥‥」

(ヤクザとか言っていいのか!?いや、だめだろう!どこぞの盗賊とか海賊とかマフィアとかに思われても困るし・・ここは、濁しておくのが一番じゃ無いか!?)

「お爺様が?」

「し、心配性だからです!!」

目が泳いでしどろもどろになる
雛の言葉に一同が力が抜ける

「はは。面白いことを言うな雛殿は。そんなことはないだろう。見た所、所作も綺麗だし身なりも気を使われている。
良いところのお嬢様だったのだろう?」

「あ~‥‥確かに?祖父は厳しくて一通りの教育は受けているはずです。もちろん、護身術も人並みには出来ます。それでも、心配なのか悠二を付けているんです。あ、ただ!一通りの教育といっても、こちらとは考え方も違うと思うのでなんとも言えませんが」

「そうなのか。しかし、雛殿は教養面だけではなく感も鋭いようだ。先程は1つ恩を売っておこうかと思ったがそれも出来なかったしな。」

「そうだったのですね。」

だからか。なんか嫌な気配がしたのは。・・・え、あたし、試されてる?


「話を戻そうか。まず、暫くはこの王宮に滞在してもらうことになるだろう。そして、世間には神使が来たことを発表しなければならない。まぁ、今はまだ雛殿達がこの世界に慣れるまでは発表して騒ぎ立てるつもりはないが‥‥その事はおいおい話していこうと思う。何か聞きたいことはあるか?」

「あの、神使というのは、私だけではなく悠二もなんですよね?」

「そうだな。ただ、暴力的になりやすい場合は少し考えなければだが‥‥」

「それは、ちゃんと言って聞かせます。すみません。あと、暫くは此処にいるとして元の世界には帰れるんですか?」

「神使が元の世界に帰ったとは、聞いたことがないな。それは、この世界にいる事を『選んだ』末の事なのか、『帰れる方法がない』からなのかはわからない。だから、これから帰れる方法も責任持って探してみる。‥‥が、わが国としては留まってほしいと考えている。」

とても真摯に真っ直ぐと雛の目を見て言うから少し信じてみようかと思えた

「わかりました。帰り方についてはお任せします。ただ、王宮にいつまでもお世話になるわけにはいきませんので、何か仕事と住むところを見つけたら出ていきます。申し訳御座いませんがそれまでお世話になります。」

深く頭を下げる。
ちょうどその時、ドアを叩く音が聞こえた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

拾った宰相閣下に溺愛されまして。~残念イケメンの執着が重すぎます!

枢 呂紅
恋愛
「わたしにだって、限界があるんですよ……」 そんな風に泣きながら、べろべろに酔いつぶれて行き倒れていたイケメンを拾ってしまったフィアナ。そのまま道端に放っておくのも忍びなくて、仏心をみせて拾ってやったのがすべての間違いの始まりだった――。 「天使で、女神で、マイスウィートハニーなフィアナさん。どうか私の愛を受け入れてください!」 「気持ち悪いし重いんで絶対嫌です」  外見だけは最強だが中身は残念なイケメン宰相と、そんな宰相に好かれてしまった庶民ムスメの、温度差しかない身分差×年の差溺愛ストーリー、ここに開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

迷子の会社員、異世界で契約取ったら騎士さまに溺愛されました!?

ふゆ
恋愛
気づいたら見知らぬ土地にいた。 衣食住を得るため偽の婚約者として契約獲得! だけど……? ※過去作の改稿・完全版です。 内容が一部大幅に変更されたため、新規投稿しています。保管用。

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

魔力なしと虐げられた令嬢は孤高の騎士団総長に甘やかされる

橋本彩里(Ayari)
恋愛
五歳で魔力なしと判定され魔力があって当たり前の貴族社会では恥ずかしいことだと蔑まれ、使用人のように扱われ物置部屋で生活をしていた伯爵家長女ミザリア。 十六歳になり、魔力なしの役立たずは出て行けと屋敷から追い出された。 途中騎士に助けられ、成り行きで王都騎士団寮、しかも総長のいる黒狼寮での家政婦として雇われることになった。 それぞれ訳ありの二人、総長とミザリアは周囲の助けもあってじわじわ距離が近づいていく。 命を狙われたり互いの事情やそれにまつわる事件が重なり、気づけば総長に過保護なほど甘やかされ溺愛され……。 孤高で寡黙な総長のまっすぐな甘やかしに溺れないようにとミザリアは今日も家政婦業に励みます! ※R15については暴力や血の出る表現が少々含まれますので保険としてつけています。

美形王子様が私を離してくれません!?虐げられた伯爵令嬢が前世の知識を使ってみんなを幸せにしようとしたら、溺愛の沼に嵌りました

葵 遥菜
恋愛
道端で急に前世を思い出した私はアイリーン・グレン。 前世は両親を亡くして児童養護施設で育った。だから、今世はたとえ伯爵家の本邸から距離のある「離れ」に住んでいても、両親が揃っていて、綺麗なお姉様もいてとっても幸せ! だけど……そのぬりかべ、もとい厚化粧はなんですか? せっかくの美貌が台無しです。前世美容部員の名にかけて、そのぬりかべ、破壊させていただきます! 「女の子たちが幸せに笑ってくれるのが私の一番の幸せなの!」 ーーすると、家族が円満になっちゃった!? 美形王子様が迫ってきた!?  私はただ、この世界のすべての女性を幸せにしたかっただけなのにーー! ※約六万字で完結するので、長編というより中編です。 ※他サイトにも投稿しています。

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。

早稲 アカ
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。 宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。 彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。 加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。 果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?

処理中です...