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第七話 罠?あるいはこれは生贄の儀式?
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(んんん???)
順調に上の階へと向かっていた私がピタリと止まった。突然の停止で、無色透明であるはずの吸血霧が滞留する場所が一瞬歪む。光の透過率が一瞬だけ変わったのである。
(あれ?これって………もしかして罠?)
私の中に唐突に、もしかして、これはそうなんじゃないかという考えが浮かんだ。
(そういえば………あまりにも狩りが簡単過ぎる………ここの蛇頭たち、もしかして囮用の餌にされただけじゃないの………だったら………この一連の依頼や情報も………人間側の狩人の仕業………?)
そう考えると、確かにこうも狩りが順調に進んでいることも納得がいく。
(日本社会にとって邪魔者でしかない蛇頭一味を化け物に殲滅させて………然る後にその化け物も始末するってところかな………?)
しかし、数秒後に私は依然と変わらずに上階へと向かって行った。
なぜなら、この考えは、まだただの勘でしかないからだ。
そうだと結論付ける証拠は、まだ一つも見つかってはいない。
(…それにねぇ、別に罠だとしても、上階の連中を襲って魔力に変換する行為は、どの道続けないとね)
そうなのである。
これが何者かが用意した罠だった場合も、やることは同じなのだ。
強敵とやり合うことになった場合、豊富に魔力をため込んでおく必要がある。
だったら、一層、上階の連中を襲い、魔力を得ておく意味は大きい。
そうなれば、どんな状況に置かれても対処できる。
そんな自身が私にはあった。
(ふふっ!)
私は苦笑する。
それに、万が一私が敗北し滅び去るとしても、それが何だというのか?
私というクズがこの世から消え去るのみ。
その分、世界は平和になることだろう(苦笑)!
そのことに、一体何の問題があるというのか?
私はもうとっくの昔に、自分がこの世から居なくなるべき化け物だと自覚している。
いずれ、ろくでもない最後を迎えることになるだろうとも。
とっくにその覚悟は完了しているのだ。
それに、私が滅びたとしても吸血鬼の能力がレムネリアに戻るだけ。
私を滅ぼした敵の情報も一緒に伝わる。レムネリアに最低限の義理は果たせるだろう。
だから今さら罠だったからって、イモ引いて逃げ出せるかっての!
どんな結果になろうとも逃げずに立ち向かってやる。
私は改めてそう覚悟を決めると、迷わずに上階へと続く階段へと近付いていった。
◇ ◇ ◇
「………早い。もう七名か。東棟の残り五名もそう長くはないな。ただの意志を持った自動人形か、人形の身体と一体化したサイボーグかと思っていたが………」
(…あれは、そんな生易しい存在ではないな。あの霧が本体か?それとも、他に真の姿があるのか?)
「…最悪、アレを呼び寄せることも選択肢に入れておかんとな………」
そう言って、廃ビルの監視をしていた虫使いの男は銅鐘を取り出した。
それは、強欲にしてすべてを喰らい尽くす魔獣を呼び出す宝具だった。
そんな男は、周りを飛ぶ羽虫たちに指で命令を下した。
特異なシンボルを描くことで、この虫使いの男は羽虫たちを手足のように動かすことができた。
羽虫たちにはマイクロカメラが仕込まれており、その画像を受信することで男は情報を得ていたのである。
もっとも、男が得られた情報は現状では限られており、とても最終的な判断が下せる段階ではなかった。
本格的な行動に移行するためには、もっと詳細な情報が必要だった。
だからこそ、虫使いの男は新たな監視用羽虫を現場へと派遣したのだ。
廃ビルから約2キロ離れた地点の道路脇に停車してある白バンから、複数の羽虫がブン…と、飛び立っていく。
もちろん、暦の正体を探り、その危険性がどの程度であるかを調べさせるためであった。
暦の勘は間違ってはいなかった。
順調に上の階へと向かっていた私がピタリと止まった。突然の停止で、無色透明であるはずの吸血霧が滞留する場所が一瞬歪む。光の透過率が一瞬だけ変わったのである。
(あれ?これって………もしかして罠?)
私の中に唐突に、もしかして、これはそうなんじゃないかという考えが浮かんだ。
(そういえば………あまりにも狩りが簡単過ぎる………ここの蛇頭たち、もしかして囮用の餌にされただけじゃないの………だったら………この一連の依頼や情報も………人間側の狩人の仕業………?)
そう考えると、確かにこうも狩りが順調に進んでいることも納得がいく。
(日本社会にとって邪魔者でしかない蛇頭一味を化け物に殲滅させて………然る後にその化け物も始末するってところかな………?)
しかし、数秒後に私は依然と変わらずに上階へと向かって行った。
なぜなら、この考えは、まだただの勘でしかないからだ。
そうだと結論付ける証拠は、まだ一つも見つかってはいない。
(…それにねぇ、別に罠だとしても、上階の連中を襲って魔力に変換する行為は、どの道続けないとね)
そうなのである。
これが何者かが用意した罠だった場合も、やることは同じなのだ。
強敵とやり合うことになった場合、豊富に魔力をため込んでおく必要がある。
だったら、一層、上階の連中を襲い、魔力を得ておく意味は大きい。
そうなれば、どんな状況に置かれても対処できる。
そんな自身が私にはあった。
(ふふっ!)
私は苦笑する。
それに、万が一私が敗北し滅び去るとしても、それが何だというのか?
私というクズがこの世から消え去るのみ。
その分、世界は平和になることだろう(苦笑)!
そのことに、一体何の問題があるというのか?
私はもうとっくの昔に、自分がこの世から居なくなるべき化け物だと自覚している。
いずれ、ろくでもない最後を迎えることになるだろうとも。
とっくにその覚悟は完了しているのだ。
それに、私が滅びたとしても吸血鬼の能力がレムネリアに戻るだけ。
私を滅ぼした敵の情報も一緒に伝わる。レムネリアに最低限の義理は果たせるだろう。
だから今さら罠だったからって、イモ引いて逃げ出せるかっての!
どんな結果になろうとも逃げずに立ち向かってやる。
私は改めてそう覚悟を決めると、迷わずに上階へと続く階段へと近付いていった。
◇ ◇ ◇
「………早い。もう七名か。東棟の残り五名もそう長くはないな。ただの意志を持った自動人形か、人形の身体と一体化したサイボーグかと思っていたが………」
(…あれは、そんな生易しい存在ではないな。あの霧が本体か?それとも、他に真の姿があるのか?)
「…最悪、アレを呼び寄せることも選択肢に入れておかんとな………」
そう言って、廃ビルの監視をしていた虫使いの男は銅鐘を取り出した。
それは、強欲にしてすべてを喰らい尽くす魔獣を呼び出す宝具だった。
そんな男は、周りを飛ぶ羽虫たちに指で命令を下した。
特異なシンボルを描くことで、この虫使いの男は羽虫たちを手足のように動かすことができた。
羽虫たちにはマイクロカメラが仕込まれており、その画像を受信することで男は情報を得ていたのである。
もっとも、男が得られた情報は現状では限られており、とても最終的な判断が下せる段階ではなかった。
本格的な行動に移行するためには、もっと詳細な情報が必要だった。
だからこそ、虫使いの男は新たな監視用羽虫を現場へと派遣したのだ。
廃ビルから約2キロ離れた地点の道路脇に停車してある白バンから、複数の羽虫がブン…と、飛び立っていく。
もちろん、暦の正体を探り、その危険性がどの程度であるかを調べさせるためであった。
暦の勘は間違ってはいなかった。
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