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第十話 激突! そして相乗り駆け!
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まず口火を切ったのは、000335派遣中隊の主戦力、シューターチームによる狙撃だった。
遠距離の敵を最初に捉えたのは、ストーム07…つまり、飛行猟兵たちを引き連れたお嬢ちゃんの得物[多方向同時攻撃砲ハルノオウギ]である。
ハルノオウギ(遠距離射撃モード)での先制攻撃が空中を跳ぶ蜂型飛行種第一陣へと最初に放たれ、続いてシューターチームの持つ火砲が火を噴いた。
火砲は狙い違わず敵異形種群へと吸い込まれ、直撃を受けた第一陣飛行種の亡骸が次々と墜落、その合間にレンタングル・ウォーカーによる地上への砲撃が開始される。
砲撃は次々と地上で群れなす蟻型異形種群の所々で炸裂し、大地に肉片と体液を伴い破片を撒き散らす。
それ等の攻撃が続く中、次々と命無き囮兵器、突撃用ドローン隊が敵戦線へと突っ込んでいく。
ドローンたちに与えられた任務は、死兵となって敵を引き付け、一秒でも多く時間を稼ぐことであった。
「すまん。頼むぜ」
前線のレンタングル・ウォーカー隊の真横に位置した俺、グランド01は、突撃していくドローンにそう機械の副腕で敬礼し、礼を言う。そして自分本来の腕の指ではスコープに映る敵目掛けて引金を引く。
スコープが遠方飛行種のバラバラになった姿を捉え、その両脇の異形種も同じ運命を辿る。だが、攻め寄せてくる敵の数は膨大。一向に減る気配はない。
連中は逃げることを知らず、俺にはそれでも諦めずに引金を引き続けるしか他に方法を知らなかった。
(良し! 次! !? そっちからも来るか!)
ドローンが一秒でも長持ちすれば、それだけ本隊である俺たちの安全に繋がる。俺はドローンたちへと横合いから近付く飛行種へと次弾を撃ち込む。
クリーンヒットした弾丸が再び飛行種多数の身体をバラバラにした。
(だが、これだけでは間に合うまいよ!)
一見上手くいっているように見える囮作戦。だが、目的が達成されるかどうかは未知数だった。
なぜなら、多数の敵異形種の群れはこれだけ苛烈な攻撃を加えても、数を十分に数を減らしたとは言えない状況だからである。
異形種の後続は、味方の被害を意に介さずに突撃してくる。
「まったく。少しはこちらを恐れてくれ」
愚痴を言う俺。しかし、もちろん異形種の群れは俺の愚痴などお構いなしに迫ってくる。
迫りくる圧倒的な数の暴力。
放った囮ドローンへの追撃も厳しい。
このままでは、程なく全機破壊されるだろう。
そうなれば、分散されていた敵の圧力は一気に本体へと向くことになる。
誰かが、この状況を覆さなければ、その波に一気に飲み込まれるだろう。
それ故に。
「こりゃ、俺の出番だな…」
そう呟き、俺は自分の身に纏ったジャケット・オオヤマツミのリミッターを大幅に解除する。
そうは言っても、俺の肉体の限界ギリギリまでに、である。
本当にリミッターを解除してしまったなら、システムが人体構造を無視した動きを始めてしまい、搭乗者の全身を複雑骨折させ、下手をすると死亡させてしまう。
俺はそのギリギリのポイントまでリミッターの解除を指定した。
もちろん、単身で立体機動をしながら周辺部を移動し、敵群を引き付けられるだけ引き付けるためである。
「さて…行くか!」
「付き合う」
!?
良く知っている声に驚き、後へと振り返る俺、グランド01。
何と気合を入れた俺のすぐ後ろに、無音でふわりと舞い降りる影があった。アマノサグメジャケットを身に纏ったお嬢ちゃん、ストーム07だ。
どうやら、敵を狙撃する傍ら、無茶するんじゃないかと、中隊の隊長である俺の動向にも気を配っていたらしい。
隊長の動向も観察しているとは、本当に優秀な副官だ。
「シューターチームの指揮はいいのかよ?」
「あの娘たちは優秀。私がいなくてもオーダーは果たす。それより問題はあなたよグランド01、あなた今、単騎駆けしようとしていたでしょう」
おう、断定口調!
参ったねこりゃ!
「見抜かれていたか。と、いうことは止めに来たんじゃなく地獄へのデートに付き合ってくれるって事かい、お嬢ちゃん?」
「さっき言った。付き合うって」
俺の言葉に、頬を膨らましてちょっと拗ねて見せるお嬢ちゃん。正直、辛抱たまらん可愛さだった。
まさに地獄に咲く一輪の華!
「それでは慎んでエスコートしてみせますわ。お嬢さんお手をどうぞ!」
熱烈な異性のラブコールを断るほど、俺は朴念仁じゃないし、ノリが悪い訳でもない。それに、正直単騎駆けは内心怖かった。
ただ、000335派遣中隊の隊長として、その義務感と勇気で恐怖心を克服していただけなのである。
そんな状況で共に戦ってくれると言われて、俺に断る理由も勇気もまったくなかった。
まして、それが可愛いお嬢ちゃんとなら尚更だ。
「ありがとう」
「どういたしまして」
そう会話した俺たちは、かつて二人だけで敵陣を突破した時の態勢を再び取る。
俺、グランド01が移動砲台の足場代りとなって、お嬢ちゃんことストーム07が上部の砲台代りとなる比翼連理の体勢だ。
「そんじゃま、行くぜお嬢ちゃん!」
「ええ」
アマノサグメジャケットを身に纏うお嬢ちゃん。その小振りなお尻をオオヤマツミの上に乗せた俺は、勇気凛々、余裕綽々といった態で中隊の右方向へと走り出した。
一緒になった俺とお嬢ちゃん。恐れるものは何もない。
俺グランド01は、相乗り駆けというとても正気とは思えない狂気の囮役をやり遂げるべく、アマノジャクに突っ走っていく。
お嬢ちゃん、ストーム07と共に!
勝利へと向かって!
遠距離の敵を最初に捉えたのは、ストーム07…つまり、飛行猟兵たちを引き連れたお嬢ちゃんの得物[多方向同時攻撃砲ハルノオウギ]である。
ハルノオウギ(遠距離射撃モード)での先制攻撃が空中を跳ぶ蜂型飛行種第一陣へと最初に放たれ、続いてシューターチームの持つ火砲が火を噴いた。
火砲は狙い違わず敵異形種群へと吸い込まれ、直撃を受けた第一陣飛行種の亡骸が次々と墜落、その合間にレンタングル・ウォーカーによる地上への砲撃が開始される。
砲撃は次々と地上で群れなす蟻型異形種群の所々で炸裂し、大地に肉片と体液を伴い破片を撒き散らす。
それ等の攻撃が続く中、次々と命無き囮兵器、突撃用ドローン隊が敵戦線へと突っ込んでいく。
ドローンたちに与えられた任務は、死兵となって敵を引き付け、一秒でも多く時間を稼ぐことであった。
「すまん。頼むぜ」
前線のレンタングル・ウォーカー隊の真横に位置した俺、グランド01は、突撃していくドローンにそう機械の副腕で敬礼し、礼を言う。そして自分本来の腕の指ではスコープに映る敵目掛けて引金を引く。
スコープが遠方飛行種のバラバラになった姿を捉え、その両脇の異形種も同じ運命を辿る。だが、攻め寄せてくる敵の数は膨大。一向に減る気配はない。
連中は逃げることを知らず、俺にはそれでも諦めずに引金を引き続けるしか他に方法を知らなかった。
(良し! 次! !? そっちからも来るか!)
ドローンが一秒でも長持ちすれば、それだけ本隊である俺たちの安全に繋がる。俺はドローンたちへと横合いから近付く飛行種へと次弾を撃ち込む。
クリーンヒットした弾丸が再び飛行種多数の身体をバラバラにした。
(だが、これだけでは間に合うまいよ!)
一見上手くいっているように見える囮作戦。だが、目的が達成されるかどうかは未知数だった。
なぜなら、多数の敵異形種の群れはこれだけ苛烈な攻撃を加えても、数を十分に数を減らしたとは言えない状況だからである。
異形種の後続は、味方の被害を意に介さずに突撃してくる。
「まったく。少しはこちらを恐れてくれ」
愚痴を言う俺。しかし、もちろん異形種の群れは俺の愚痴などお構いなしに迫ってくる。
迫りくる圧倒的な数の暴力。
放った囮ドローンへの追撃も厳しい。
このままでは、程なく全機破壊されるだろう。
そうなれば、分散されていた敵の圧力は一気に本体へと向くことになる。
誰かが、この状況を覆さなければ、その波に一気に飲み込まれるだろう。
それ故に。
「こりゃ、俺の出番だな…」
そう呟き、俺は自分の身に纏ったジャケット・オオヤマツミのリミッターを大幅に解除する。
そうは言っても、俺の肉体の限界ギリギリまでに、である。
本当にリミッターを解除してしまったなら、システムが人体構造を無視した動きを始めてしまい、搭乗者の全身を複雑骨折させ、下手をすると死亡させてしまう。
俺はそのギリギリのポイントまでリミッターの解除を指定した。
もちろん、単身で立体機動をしながら周辺部を移動し、敵群を引き付けられるだけ引き付けるためである。
「さて…行くか!」
「付き合う」
!?
良く知っている声に驚き、後へと振り返る俺、グランド01。
何と気合を入れた俺のすぐ後ろに、無音でふわりと舞い降りる影があった。アマノサグメジャケットを身に纏ったお嬢ちゃん、ストーム07だ。
どうやら、敵を狙撃する傍ら、無茶するんじゃないかと、中隊の隊長である俺の動向にも気を配っていたらしい。
隊長の動向も観察しているとは、本当に優秀な副官だ。
「シューターチームの指揮はいいのかよ?」
「あの娘たちは優秀。私がいなくてもオーダーは果たす。それより問題はあなたよグランド01、あなた今、単騎駆けしようとしていたでしょう」
おう、断定口調!
参ったねこりゃ!
「見抜かれていたか。と、いうことは止めに来たんじゃなく地獄へのデートに付き合ってくれるって事かい、お嬢ちゃん?」
「さっき言った。付き合うって」
俺の言葉に、頬を膨らましてちょっと拗ねて見せるお嬢ちゃん。正直、辛抱たまらん可愛さだった。
まさに地獄に咲く一輪の華!
「それでは慎んでエスコートしてみせますわ。お嬢さんお手をどうぞ!」
熱烈な異性のラブコールを断るほど、俺は朴念仁じゃないし、ノリが悪い訳でもない。それに、正直単騎駆けは内心怖かった。
ただ、000335派遣中隊の隊長として、その義務感と勇気で恐怖心を克服していただけなのである。
そんな状況で共に戦ってくれると言われて、俺に断る理由も勇気もまったくなかった。
まして、それが可愛いお嬢ちゃんとなら尚更だ。
「ありがとう」
「どういたしまして」
そう会話した俺たちは、かつて二人だけで敵陣を突破した時の態勢を再び取る。
俺、グランド01が移動砲台の足場代りとなって、お嬢ちゃんことストーム07が上部の砲台代りとなる比翼連理の体勢だ。
「そんじゃま、行くぜお嬢ちゃん!」
「ええ」
アマノサグメジャケットを身に纏うお嬢ちゃん。その小振りなお尻をオオヤマツミの上に乗せた俺は、勇気凛々、余裕綽々といった態で中隊の右方向へと走り出した。
一緒になった俺とお嬢ちゃん。恐れるものは何もない。
俺グランド01は、相乗り駆けというとても正気とは思えない狂気の囮役をやり遂げるべく、アマノジャクに突っ走っていく。
お嬢ちゃん、ストーム07と共に!
勝利へと向かって!
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