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決断
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もう一人の子供を産んでもいいと、夫に伝えた。
息子にも、見るように伝える。両親みたいに子供に隠れて(いるつもりだったはず)こっそりとやるようなことはしたくない。
今まで息子に見せていたのは夫婦のコミュニケーションのための物だったけど、これからははっきりとした目的がある。
大雑把だけど排卵周期はだいたいわかっている。狂わなければ3か月以内に妊娠すると踏んだ。彼女に聞けば教えてくれるかもしれないけど、それくらいは「お楽しみ」でいいと思った。
夫の仕事のスケジュール、息子と私の予定などを考え、計画表を作った。夫と息子にも確認してもらう。夫の仕事は突然残業が入ったりすることは滅多にないからほぼこの通りに可能なはず。
そして、その日が来た。
「あのね」
彼女だ。それにしても随分と深刻な様子。
「あなた、ついさっき排卵したの」
なら、確実に妊娠できる。それにしては彼女の口調はあまり楽しそうではない。
「実はね、3時間前にももう片方の卵巣から排卵しているの。意味わかるわよね」
私は固まった。ということは・・・・・。
「あなた、今日やったら双子を妊娠しちゃうわよ」
頭の中がぐるぐると回る。何をしたらいいのか想像がつかない。
「あなたが取る道はいくつかあるわ。一番簡単なのは、今日はやらない方法」
そうは言っても今日に決めたのは私自身だ。当日になっていきなりやらないと言い出したら、夫は何と思うだろう。
「もう一つは、明日になったら急いで婦人科に行ってアフターピルを処方してもらう」
これも難しい。そもそも今回コンドームを使わないのは、妊娠するため。暴行されたわけでもなく、相手が夫なのにアフターピルを処方してもらうための理由付けが思いつかない。
「もう一つは、つらい選択になるけど、片方の受精卵を取り除く手術を受ける」
これは絶対無理。堕胎と同じだ。どちらかを選ぶなんてできるわけがない。
「覚悟を決めて双子を産むという方法もあるわよ」
今まで経済的なことを考えて子供をこれ以上作らないことにしていたのに、双子を育てるとなったら苦しくなるだろう。
「うまくいく保証は無いけど、私の力で流産させることができるかもしれない。二人とも流れてしまうかもしれないけど」
うまくいく、なんて言わないで。
無情にも時間だけが過ぎていく。いつ夫が帰ってきてもおかしくない。それがこんなに辛いのは結婚以来初めてだ。
「もう時間が無いわよ。どうするの?」
そう言われても、何一つ思い浮かぶ方法は無い。
「一つ方法があるわ。仮病を使うの。」
「お芝居なんかする自身、無いわ」
「でしょうね。あなたに覚悟があるなら、本当に気分が悪くすることできるけど、やる?」
「分かったわ。任せる」
しばらくすると、本当に気分が悪くなってきた。彼女の力もあるのだろうけど、プラシーボ効果によるものも大きいかもしれない。
息子の部屋に行く。
「ごめん。今日出来そうにない。パパにも電話入れておいて。もう寝る」
息子が夫に電話を入れる。大きな声が聞こえて来た。
「気分が悪いから今日はできないって。顔色悪そうだったよ」
近所中に聞こえるような声。赤面状態だけど、今日はそれどころではない。着替える余裕も無く、ベッドに崩れ落ちる。直ぐに意識は消え失せた。
息子にも、見るように伝える。両親みたいに子供に隠れて(いるつもりだったはず)こっそりとやるようなことはしたくない。
今まで息子に見せていたのは夫婦のコミュニケーションのための物だったけど、これからははっきりとした目的がある。
大雑把だけど排卵周期はだいたいわかっている。狂わなければ3か月以内に妊娠すると踏んだ。彼女に聞けば教えてくれるかもしれないけど、それくらいは「お楽しみ」でいいと思った。
夫の仕事のスケジュール、息子と私の予定などを考え、計画表を作った。夫と息子にも確認してもらう。夫の仕事は突然残業が入ったりすることは滅多にないからほぼこの通りに可能なはず。
そして、その日が来た。
「あのね」
彼女だ。それにしても随分と深刻な様子。
「あなた、ついさっき排卵したの」
なら、確実に妊娠できる。それにしては彼女の口調はあまり楽しそうではない。
「実はね、3時間前にももう片方の卵巣から排卵しているの。意味わかるわよね」
私は固まった。ということは・・・・・。
「あなた、今日やったら双子を妊娠しちゃうわよ」
頭の中がぐるぐると回る。何をしたらいいのか想像がつかない。
「あなたが取る道はいくつかあるわ。一番簡単なのは、今日はやらない方法」
そうは言っても今日に決めたのは私自身だ。当日になっていきなりやらないと言い出したら、夫は何と思うだろう。
「もう一つは、明日になったら急いで婦人科に行ってアフターピルを処方してもらう」
これも難しい。そもそも今回コンドームを使わないのは、妊娠するため。暴行されたわけでもなく、相手が夫なのにアフターピルを処方してもらうための理由付けが思いつかない。
「もう一つは、つらい選択になるけど、片方の受精卵を取り除く手術を受ける」
これは絶対無理。堕胎と同じだ。どちらかを選ぶなんてできるわけがない。
「覚悟を決めて双子を産むという方法もあるわよ」
今まで経済的なことを考えて子供をこれ以上作らないことにしていたのに、双子を育てるとなったら苦しくなるだろう。
「うまくいく保証は無いけど、私の力で流産させることができるかもしれない。二人とも流れてしまうかもしれないけど」
うまくいく、なんて言わないで。
無情にも時間だけが過ぎていく。いつ夫が帰ってきてもおかしくない。それがこんなに辛いのは結婚以来初めてだ。
「もう時間が無いわよ。どうするの?」
そう言われても、何一つ思い浮かぶ方法は無い。
「一つ方法があるわ。仮病を使うの。」
「お芝居なんかする自身、無いわ」
「でしょうね。あなたに覚悟があるなら、本当に気分が悪くすることできるけど、やる?」
「分かったわ。任せる」
しばらくすると、本当に気分が悪くなってきた。彼女の力もあるのだろうけど、プラシーボ効果によるものも大きいかもしれない。
息子の部屋に行く。
「ごめん。今日出来そうにない。パパにも電話入れておいて。もう寝る」
息子が夫に電話を入れる。大きな声が聞こえて来た。
「気分が悪いから今日はできないって。顔色悪そうだったよ」
近所中に聞こえるような声。赤面状態だけど、今日はそれどころではない。着替える余裕も無く、ベッドに崩れ落ちる。直ぐに意識は消え失せた。
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