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ビースト共和国

お荷物

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「うん。次、あの黄蛇が襲ってきたら僕が戦う。ルパに同じ思いをさせたくない。でも、ルパは死地を潜って何倍も強くなったそう思わない?」

「んー、よくわからない。でも、さっき戦っている間、ずっと集中できてた。今、あれだけ集中しろって言われても無理。さっきの戦い、凄いヒリヒリして体が熱くなった。あの感覚を忘れたくないから、この後、鍛錬しようっ!」

「わかった。じゃあ、このリマクスコ街で鍛錬が出来そうな場所を探そう。ミアもいいかな?」

 僕は淡々と食事をとっていたミアに聞いた。

「え……。ああ、はい。良いと思います」

 ミアは食事を止め、頭を縦に動かした。僕達はリマクスコ街内にある広場を探した。

「ここなんてよさげだね。へー、アルマズ広場って言うんだ」

 僕はリマクスコ街にある広場にやって来た。とても広く、鍛錬を行っても問題なさそう。獣族は周りに大勢いるわけではないので、ルパとミアの二名と一緒に鍛錬を行う。

 僕達は久しぶりにしっかりと鍛錬を行い、体が鈍っていないか確認した。僕はルパから攻撃を何度も食らいそうになり、死地を潜った後のルパの動きは明らかに違った。
 戦いに自身があり、一歩が大きい。そのため、長所である関節の柔らかさが伸び、懐にあっという間に入られると突きりそうなほど良く伸びる攻撃が飛んでくる。すごく戦い辛い。手首を縛り、僕が勝ったものの。このまま行くと、確実に攻撃を当てられてしまう。

「はぁ、はぁ、はぁ……。くっそー。あとちょっとだったのに……」

 ルパは本気で悔しがっていた。ミアはいつも通りと言うかいつもより動きが硬いと言うか。

「ミア、調子が悪いなら無理に戦わなくても良いよ。久々に鍛錬をしたし、体が鈍っていると思うから今日はここまでにしよう」

「は、はい……」

 ミアは俯きながら頷いた。何か思うことでもあるのだろうか。

「ミア、どうかしたの」

「ニクスさん、私はルパちゃんが一人にならないようにって引き取ってくれたんですよね。なら、ルパちゃんがニクスさんと離れる気が無いと知った今、私はニクスさん達と一緒にいてもいいんですか。今の私じゃ、あんな人達と戦うなんて夢のまた夢。メイドの仕事も無ければ、営みも出来ません。私はニクスさん達のお荷物なんじゃないかって思って……」

 ミアは視線を下げ、心の底から絞り出した声で真剣に言った。お荷物なわけない。でも、彼女がそう言う考え方になってしまっている現状に問題がある。確かに今の状況だけを見れば、自分がお荷物だと思っても仕方がない。

 ――なんて言ったらいいんだろうか。ただ、お荷物じゃないと言っても理解してくれなさそうだし、かと言ってあの黄蛇と戦えとか不可能だし、下の世話もしたくても心が拒絶しているのに無理やりやらせるのも忍びない。

「確かに、今のミアはお荷物かもしれない。でも、僕達の仲間だ。あと、今はお荷物なだけで、鳥籠にいた時は凄い助かっていたんだよ。料理洗濯掃除。その他諸々たくさんこなしていたじゃないか。それぞれ個性があって得意不得意があるんだ。僕とルパは戦うのが得意で、ミアは苦手なだけだよ。逆に僕とルパは家事が得意じゃないけどミアは得意だ。鳥籠にいる時の僕達なんてミアにおんぶにだっこ状態だったでしょ」

 ルパの方を向くとうんうんと頷いていた。ルパもミアがお荷物だなんて思っていない。

「えっとじゃあ、私はただただニクスさんの専属メイドと言うことになるんですか?」

「まあ、僕の想定していた通りにならないとするなら、そうなるかもね。ルパは僕と離れる気が無くなっているみたいだから、ルパの傍にいてあげてと言うお願いは叶えなくてもよくなった。でも、まだ僕がどうなるかわからないし、ルパが一人になることだってあり得ない話しじゃない。そう言う時に、ミアが傍にいてあげてほしい。命令じゃなくて、友達、仲間として」

 僕はミアに右手を差し出した。

「ニクスさん……」

 ミアは僕の右手を握り、微笑んだ。心の不安が少し解消されたのか、良い顏をしている。自分がお荷物になり、捨てられるとでも思っていたのだろうか。残念ながら、僕はすでにミアも家族の中に入ている。今更捨てられない。

 すでに夕方になっており、今日は鍛錬に使ってしまった。でも、体を動かしたおかげで気分がとてもすっきりした。やはり体を動かすことは素晴らしい。

 僕達は宿の近くにある肉屋で、焼肉を食し、宿に戻ってお風呂に入る。

「んーー。んーー。んーー」

 ルパは鏡の前で自分の筋肉を見ていた。やはり綺麗な体で、全身を通して無駄がない。脂肪の量や筋肉量、骨格などから考えても戦うに適した体だ。

「おっぱいが無い!」

 ルパはいきなりバカになったのか、僕の方を見ながら言う。

「いや、知らないよ。胸が大きすぎても戦いには……」

 僕はディアさんの胸を思い出した。明らかに巨大で絶対に邪魔なのに彼女は馬鹿みたいに強い。つまり、胸があろうがなかろうが、強い者は強いと言うことだ。

「えっと、僕はそのくらいも好きだよ」

 僕は苦笑いを浮かべながら、擁護する。

「でも、ミアの胸の方が好きでしょ!」

 ルパはミアの方を見た。水着を着ているが、顔を埋めたくなるほど大きな谷間が出来ており、彼女は腕で胸を隠すようにお湯につける。

「ルパ、酷だけど大きくすることはもう難しい。お母さんの胸が大きくないと大きくならないと言う研究結果もあるし、子供のころ食事と睡眠をしっかりと取っていないと大きくならない。だから、ルパはもう難しい。諦めるんだ」

 僕は夢を見せるのではなく、現実を言う。

「うう……。残念……。で、でも、お尻は良い感じなんじゃないかな……」

 ルパは鏡にお尻を向け、綺麗な曲線を撫でる。彼女が言う通り、お尻は最高だった。

「うん! 完璧なお尻だ! まるで黄金比を思わせるような曲線に真っ白な肌、すらっと伸びる脚とのつながりも綺麗で、撫でたくなるくらい綺麗なお尻だよ!」

「…………不愉快」

 ルパは僕の発言に対し、言い放った。

 ――いや、見せてきたのはそっちでしょ! まあ、僕も調子にのったのがわるかったか。

 僕は反省し、甘噛みで許してもらった。
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