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鶏を買ったら……知り合いが増えた。

恐怖は行動力になる

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「プルス、血は戻せないんだったよね」

「はい。血は戻りません。治るのは傷だけです。血を戻すには一度殺すしかありません」

  プルスは身の毛がよだつ言葉を吐く。

「え……。プルスは人を生き返らせられるの?」

「条件が合えばですがね」

「条件?」

「死んだ人間を生き返らせるには第一条件として他人が殺すこと、第二に死亡してから五分以内に治療すること、最後に何かしらの繋がりがあることです」

「いろんな条件があるんだな……。二つはわかったけど何かしらの繋がりって何?」

「そうですね簡単に言えば信頼関係ですかね。これらが揃っていないと人を生き返らせることはできません」

「でも、条件が満たされていれば人を生き返らせられるんだ。神獣ってすごいんだね」

「ですが、私が生きてきた中で一度も生き返らせられた者はいません」

「え……、そうなの? 何で」

「復活させるには大量の魔力が必要になります。殺される状況ということは、周りに敵がいることです。そのような状況で仲間を復活させる余裕はありません」

「そうか。戦い以外で死ぬなんてほぼないもんね。病気も回復できるし。毒は無効だし」

「はい。なので蘇生させるためには敵から逃げる必要があります。ただ、逃げるにしても、敵の方が上手だと簡単に捕まって負けますね」

「プルスの元主には死んだ仲間を助けようとした人はいた?」

「はい。その時は奇しくも敵がペガサスでした。ペガサスは地面と空、両方を高速で移動できます。なので逃げるには不利でした」

「そうなんだ……。でも、仲間を助けようとする人がいたんだ。昔の時代にもそういう人がいてほっとしたよ」

「ま、仲間は大切にするのが当たり前という風潮がありますからね。ただ、信頼されておらず蘇生できなかった場合が多々ありました。やはり、人を信用するのは並大抵ではないみたいです。こっちは信用していても相手からは信用されていなかったという場面が良くありましたし、そうなったときの主は辛そうな顔をしていましたね」

「そりゃあそうでしょ。こっちは信用していたのに相手からは信用されていなかったなんて……。想像しただけでも泣きそうになる」

「人から信用されるのはとても難しいですから、簡単には蘇生出来ないんです」

「なるほどな。じゃあ、ルパが今死んでも蘇生させられないんだ」

「そうなりますね。でも今は血液が減ってしまっただけなので心配しないでも大丈夫ですよ」

「そうだよね。ルパは大丈夫なんだよね。誰かが目の前で死ぬのはもう見たくないんだ」

「何かトラウマでもあるんですか?」

「昔にね……」

「そうですか。でも、人はあっという間に死にます。知らぬ間に死にます。気づかないうちに死にます。死の要因なんてそこら中に転がっているんですよ。でも、人は死が遠い存在だと思っている。なぜか死が訪れないと心の中で思っている。ですが、死は刻々と迫ってきているんです」

「そうだよね。生きているだけで死に近づいている。それは時の流れと同じく変えられない事実。人はいずれ死ぬ。僕やルパだって、そう思っていても怖いものは怖い。恐怖心が僕を支配してくるんだ」

「死が怖いのは自分が長く生きていられると思っているからです。危険を感じるのは安全な状態を変えたくないからです。なら、どうすればいいのか。そんなの、考える必要もない。自覚することです」

「自覚する?」

「はい。死に近づいていると自覚します。すると、何が出来るかを考えだし、行動が出来るようになるんです。今の状態を自覚して本当にいいのかと考えこめば、恐怖が脚を動かせる原動力に変えられます。安全な場所にいては危険だと思えれば恐怖が生まれ、脚が動きます。先ほどの主のように、自分が動かなければルパが死ぬかもしれない。そう考えたら、体が勝手に動いてしまった。もちろん怖かったと思いますが、主は行動出来たんです」

「確かにそうだ。あのブラックベアーに立ち向かえた。つまり、僕はブラックベアーよりもルパが死ぬ方が怖かったのか」

「そう言うことになりますね。ルパが死ぬかもしれないと言う恐怖が主を突き動かした。ルパが死ぬと言う事態を回避するために動いたとってもいいですね」

「なるほど。僕はルパに相当死んでほしくないんだな……。まぁ、死んでほしい相手なんて誰もいないけど。とりあえず、ルパが無事でよかった」

 僕はルパの頭を撫でる。

「ふぅ……」

 ルパの口角が少しだけ上がったように見える。だが、眠っているのでいい夢を見ているだけかもしれない。

 僕は焚火が弱くなっていたので薪を取りに向かい、焚火に投げ入れる。

「主、ブラックベアーを食べてもいいですか?」

「いいよ。そこに置いてあっても意味ないし。解体するのも面倒だから、魔石以外は全部食べちゃって」

「わかりました」

 僕は石槍をブラックベアーの頭部から抜き、プルスを地面におろす。

「ぴよーー!」

 プルスが火を噴くと、大きな体のブラックベアーは一瞬で灰になった。

「パグ、ハグ、ハグ……」

 プルスは無我夢中になって食べていく。

「食い意地も凄いよなぁ……。あんなに大量の灰を食べるなんてここら辺にあった灰もほぼ食べつくしてたし、ほんと食べた灰はどこに行っているのやら」

「どこって? トイレにありますよ」

「はい?」

 プルスは大量にあった灰を全て食べつくしていた。

「トイレなんてどこにあるの。森の中ってこと?」

「いえ、家の中にトイレの場所を作ったんです」

「いつの間に……。でも、家の中で糞をするなんて、いったいどういうつもりなの」

「そう言われましても。私には野糞なんて出来ませんよ。恥ずかしいじゃないですか」

「僕達はいつもしているんだけどな……。それで、どこをトイレにしているの。掃除しないと汚いでしょ」

「いえ、掃除する必要はありませんよ」

「何で?」

「汚くないからです」

「糞なのに汚くないの?」

「主も以前見たではありませんか」

「ん? 見たっけ?」

「はい。まぁ、見てもらったほうが早いですよね」

 プルスは飛び跳ねながら家の中に入って行った。少しして何かを転がしながら持ってくる。
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