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鶏を買ったら……知り合いが増えた。
ルパとブラックベアー
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「はは……、本当にそうですね。でも、犠牲者はまだ出ていないんですから、いいじゃないですか。僕は薬草を持ってもう一度、角ウサギの状況を見てきます。テリアさんは街の中で出来るだけ待機していてください。角ウサギたちが動き出したら凄い音がするはずなので、接近されていたらすぐにわかると思います。そうなったら迷わず逃げてください」
「で、でも。ニクスさんを一人にさせるわけには……」
テリアさんは震えていた。
そりゃそうだ。死ぬかもしれないと言うか、角ウサギ数万羽に襲われて生きていられる訳がない。そうわかっているのに、テリアさんはギルドにいる。凄く強い精神の持ち主だ。加えて、とんでもなく正義感の強い方だと僕は思った。
小さな体のどこにそんな勇気があるのか教えてほしい。僕が多少の傷ならすぐに治せるようになっていなかったら、きっと一目散に逃げていただろう。
「テリアさんは無理しないでください。僕は大丈夫ですから、構わず逃げてください。たとえ角ウサギたちに勝ってもテリアさんが死んでいたら僕は悲しいです」
「ニクスさん……」
「テリアさん。決っして無茶な真似はしたら駄目ですよ」
「わかっていますよ。ニクスさんがそう言うなら、私も無理はしません。街の中で逃げ遅れた人がいないか調べるくらいにしておきます」
「はい、それくらいにしておいてください。あと、傭兵のおじさんにも同じように言っておいてください。決っして戦いに行こうとしないでと」
「わかりました。伝えてきます」
「あの、薬草の値段っていくらですか?」
「通常は銀貨一枚くらいです」
「なら、これを置いていきます」
僕は角ウサギたちの素材が入った籠をギルドの床に置いた。
「お金を払わずに物を取るのは犯罪なので、同価値の素材で見逃してください」
「もう、こんな状況なのにニクスさんは律儀ですね。あとで鑑定しておきますから、気にしないでください」
「ありがとうございます」
僕は薬草を手に入れ、街中に誰もいない状態なのを利用し、街中で炎の翼を出現させて空中に浮き上がる。
「よし、プルス。家に全力でいったん帰ろう」
「もぅ、主はどれだけルパに惚れてるんですか? あんなに嫌われているのに」
プルスは僕の頭上で呟いた。
「惚れてるとかそういう問題じゃないでしょ。ルパは足を怪我しているんだよ。もし、何かあったら大変じゃないか。少なからずあの場所にはブラックベアーが出るんだ。僕も殺されかけたし、ルパがブラックベアーに気づかない訳ないけど、最悪な場合遭遇しているかもしれないでしょ」
「主は考え過ぎですよ。そんな状況滅多に起こりません」
「だとしても、急いで帰るよ。ルパの身に何かあったら耐えられない」
「はいはい、さっさと帰ってルパに罵倒されましょう」
「僕、罵倒される前提なんだ……」
僕は炎の翼を使い、空中を高速で移動した。すでに日が落ちていたため、プルスに飛んでもらっている。
僕は飛んでいる間何もすることがなく、とても暇だった。早く着けと思いながら、石槍を握り占めている。
「ん? 嘘だろ!!」
「いえ、嘘じゃないみたいです!! 主の予想が当たってますよ!!」
『グラアアアアアアア!!』
『グルルルルルルルル!!』
ブラックベアー一頭とルパが睨み合いを続けていた。
ルパは体から血を流しており、ブラックベアーも額から黒い血を流している。
今にでもブラックベアーが突進し、ルパに襲い掛かろうとしていた。
『グラアアアアアアア!!』
「させるかよ!!」
僕はブラックベアーの頭上から真下に向い、石槍を頭のてっぺんから突き刺す。
「なっ!」
石槍はブラックベアーの頭蓋骨を貫通して地面に突き刺さる。たとえ死ななくても、石槍が地面に突き刺さっているため、ブラックベアーは逃げられない。突き刺して少しの間は動いていたが、すぐに全く動かなくなる。
「はぁ、はぁ、はぁ。ルパ、大丈夫?」
「ニクス……、遅い……」
ルパは僕の顔を見て泣き出しそうな表情をしたあと、膝をついて前屈みに倒れた。
「ルパ!」
僕はルパのもとにすぐに駆け寄って様態を見る。
ルパの頬に一本の傷が、入っており血が流れていた。服も裂かれ、爪の鋭い傷が三本入っていた。
「これはすぐに直さないと傷が残ってしまうかもしれない」
僕はルパの止血している部分に手を当て『ファイア』で燃やす。血はすぐに止まり、傷も塞がった。顔の傷も跡が残らずに消えてくれた。
「よかった。ルパの顔に傷が残らなくて」
ルパは目を覚まさず、眠ったままだった。
「ルパは血の長し過ぎで気絶したみたいですね。頭を低くして足を少し高めに起きましょう。そうした方が脳に血が行きやすくなります」
「わ、わかった」
僕はルパを寝かせ、足元に木を置き、少し高くい所に置く。
「これでいいかな?」
「はい。あとはルパの眼が覚めるのを待つだけですね。出来るだけ温めた方がいいので、毛布を被せておきましょう」
「うん」
僕は近くに置いてあった毛布をエナの体に掛ける。その後、エナのくじいた足首に薬草を貼り、ルパが目を覚ますまで待つ。
「で、でも。ニクスさんを一人にさせるわけには……」
テリアさんは震えていた。
そりゃそうだ。死ぬかもしれないと言うか、角ウサギ数万羽に襲われて生きていられる訳がない。そうわかっているのに、テリアさんはギルドにいる。凄く強い精神の持ち主だ。加えて、とんでもなく正義感の強い方だと僕は思った。
小さな体のどこにそんな勇気があるのか教えてほしい。僕が多少の傷ならすぐに治せるようになっていなかったら、きっと一目散に逃げていただろう。
「テリアさんは無理しないでください。僕は大丈夫ですから、構わず逃げてください。たとえ角ウサギたちに勝ってもテリアさんが死んでいたら僕は悲しいです」
「ニクスさん……」
「テリアさん。決っして無茶な真似はしたら駄目ですよ」
「わかっていますよ。ニクスさんがそう言うなら、私も無理はしません。街の中で逃げ遅れた人がいないか調べるくらいにしておきます」
「はい、それくらいにしておいてください。あと、傭兵のおじさんにも同じように言っておいてください。決っして戦いに行こうとしないでと」
「わかりました。伝えてきます」
「あの、薬草の値段っていくらですか?」
「通常は銀貨一枚くらいです」
「なら、これを置いていきます」
僕は角ウサギたちの素材が入った籠をギルドの床に置いた。
「お金を払わずに物を取るのは犯罪なので、同価値の素材で見逃してください」
「もう、こんな状況なのにニクスさんは律儀ですね。あとで鑑定しておきますから、気にしないでください」
「ありがとうございます」
僕は薬草を手に入れ、街中に誰もいない状態なのを利用し、街中で炎の翼を出現させて空中に浮き上がる。
「よし、プルス。家に全力でいったん帰ろう」
「もぅ、主はどれだけルパに惚れてるんですか? あんなに嫌われているのに」
プルスは僕の頭上で呟いた。
「惚れてるとかそういう問題じゃないでしょ。ルパは足を怪我しているんだよ。もし、何かあったら大変じゃないか。少なからずあの場所にはブラックベアーが出るんだ。僕も殺されかけたし、ルパがブラックベアーに気づかない訳ないけど、最悪な場合遭遇しているかもしれないでしょ」
「主は考え過ぎですよ。そんな状況滅多に起こりません」
「だとしても、急いで帰るよ。ルパの身に何かあったら耐えられない」
「はいはい、さっさと帰ってルパに罵倒されましょう」
「僕、罵倒される前提なんだ……」
僕は炎の翼を使い、空中を高速で移動した。すでに日が落ちていたため、プルスに飛んでもらっている。
僕は飛んでいる間何もすることがなく、とても暇だった。早く着けと思いながら、石槍を握り占めている。
「ん? 嘘だろ!!」
「いえ、嘘じゃないみたいです!! 主の予想が当たってますよ!!」
『グラアアアアアアア!!』
『グルルルルルルルル!!』
ブラックベアー一頭とルパが睨み合いを続けていた。
ルパは体から血を流しており、ブラックベアーも額から黒い血を流している。
今にでもブラックベアーが突進し、ルパに襲い掛かろうとしていた。
『グラアアアアアアア!!』
「させるかよ!!」
僕はブラックベアーの頭上から真下に向い、石槍を頭のてっぺんから突き刺す。
「なっ!」
石槍はブラックベアーの頭蓋骨を貫通して地面に突き刺さる。たとえ死ななくても、石槍が地面に突き刺さっているため、ブラックベアーは逃げられない。突き刺して少しの間は動いていたが、すぐに全く動かなくなる。
「はぁ、はぁ、はぁ。ルパ、大丈夫?」
「ニクス……、遅い……」
ルパは僕の顔を見て泣き出しそうな表情をしたあと、膝をついて前屈みに倒れた。
「ルパ!」
僕はルパのもとにすぐに駆け寄って様態を見る。
ルパの頬に一本の傷が、入っており血が流れていた。服も裂かれ、爪の鋭い傷が三本入っていた。
「これはすぐに直さないと傷が残ってしまうかもしれない」
僕はルパの止血している部分に手を当て『ファイア』で燃やす。血はすぐに止まり、傷も塞がった。顔の傷も跡が残らずに消えてくれた。
「よかった。ルパの顔に傷が残らなくて」
ルパは目を覚まさず、眠ったままだった。
「ルパは血の長し過ぎで気絶したみたいですね。頭を低くして足を少し高めに起きましょう。そうした方が脳に血が行きやすくなります」
「わ、わかった」
僕はルパを寝かせ、足元に木を置き、少し高くい所に置く。
「これでいいかな?」
「はい。あとはルパの眼が覚めるのを待つだけですね。出来るだけ温めた方がいいので、毛布を被せておきましょう」
「うん」
僕は近くに置いてあった毛布をエナの体に掛ける。その後、エナのくじいた足首に薬草を貼り、ルパが目を覚ますまで待つ。
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