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鶏を買ったら……知り合いが増えた。

Bランク冒険者

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――えっと、僕達の勝ち?

「主は何もしてないですけどね……」

 プルスは不貞腐れながら呟く。

「あの、何をしていたんですか?」

 僕は殺気を放っていた男性に話かける。

「騎士団が街を守るのかを見ていた」

「騎士団ですか……」

「そうだ。案の定、今日は騎士団がいないようだな。騎士団はどうした?」

「貴族の護衛に行きましたよ。明日来るそうです」

「ちっ! あいつらは来ない……」

「え? 嘘だ。今回はたまたま被っただけですよ」

「違う。あいつらは街を守る気なんてないんだ。どいつもこいつも街を守る気がないやつらばかり、反吐が出る」

 男性は両手を握り締め、歯をかみしめていた。

「えっと、あなたはいい人なんですか?」

「いい人? は、笑わせるな。お前を殺そうとしたのに、いい人なわけあるかよ」

「兄貴の顔は悪人顔だからな。悪そうに見えるが俺達みたいなやつらを舎弟に置いてくれるいい兄貴なんだよ! 殺さないでくれ!」

 悪人ずらの男性の横からチンピラが叫ぶ。

「あ! 誰が悪人顔だって! おい、もう一回言ってみろ、相棒に腸内のクソ食わせるぞ!」

「ご、ごめんなさい、すみませんでした!」

 舎弟の一人は頭を地面に擦りつける。

「はぁ、皆さん。お金は持っていますか?」

「持ってるわけねえだろ! 俺達がどれだけ貧乏か知ってるのかこの野郎!」

「兄貴なんて三日も何も食べてないんだぞ、こら!」

「金は全部パンに変えて子供達に配ってんだよ! 舐めるな!」

 舎弟の男性たちは凄い剣幕で僕に怒ってくる。

「いや、怒られても……。というか、本当に良い人達ですね」

「バカにするんじゃねえぞ! 俺達は街を牛耳っている冒険者集団だ! いい子ちゃんぶってるお前とは違うんだよ!」

 またしても舎弟が叫んだ。

「えぇ……。何が言いたいんだ、この人達」

「お前ら、少し黙れ。うるせえと相棒に食わせるぞ」

「ご、ごめんなさい」×舎弟たち。

「こいつらは皆、馬鹿なんだ、許してくれ」

 怖い顔に加え髪の長い男性は頭を下げる。

「まぁ、別に気にしてないのでいいですけど……。あの、騎士団が来ないっているのは本当ですか?」

「ああ、来ない。街を守る気がないからな。街を守るどころか搾取している。街は騎士団に守ってもらうために多額の税金を課せられているからな。皆、生きるので精一杯だ。税金を高め、搾るだけ絞って見捨てやがった」

「騎士団がそんなことするわけないじゃないですか」

「するんだよ。やつらが守るのは貴族と金持ちだけだ。あとはどうでもいいと思ってやがる。それが気に食わねえ」

「にわかに信じがたい話ですけど、本当だとしたら大問題ですよ。騎士が街を守らないなんて、そんな事実は合ってはならない。あなたは騎士団が動くかどうかを確かめるために今回の事件を起こしたんですか?」

「そうだ。やつらは来ない。ならば、騎士団に払っている税金は払う必要がない。街の長に話を着けねえと、いつまでも苦しい生活が続きやがる。今回の件ではっきりした。騎士団は街の緊急時でもやってこない」

「確かに着てないですけど、明日に来ないかはわからないじゃないですか。もしかしたらやってくるかもしれませんよ」

「待ってもいいが、奴らは来ない。そういうやつらだ、騎士団ってのはよ」

「わかりました。明日、騎士団が来ないのならあなたを信じます。もし来たら、街の人たちと騎士団にちゃんと謝ってくださいよ」

「ちっ……わかった」

 召喚獣を連れた男性は頷く。

 僕は空中に浮いていたが炎の翼を消して地面に下りた。

「ふぅ……。とりあえず、角ウサギたちが偽物でよかった。本物も混ざっているみたい出すけど、攻撃してこないのなら問題ないかと思わいますし、僕は一度戻ります。あなたの名前は何ですか?」

「俺の名前、そんなもん、どうでもいいだろう」

「兄貴の名前はグラス・スライサー! 街で唯一のBランク冒険者だ! 覚えておけ!」

「グラスさんですね。わかりました」

「ちっ……」

 グラスさんは舌打ちをして舎弟を睨みつける。

――この人がお金を奪っていた理由が子供達のためだったのか。いや、嘘なのかも。でも嘘だったら嫌だな。

「くっ……。それにしてもお前の蹴りで骨が行っちまった。どんな威力をしているんだ」

 グラスさんは右腕がパンパンに腫れている。

「すみません、殺されかけたので咄嗟に取った判断が蹴る、だったんですよ。投げるにしておけばよかったですね。そもそも何で殺そうとしてきたんですか?」

「このままだと俺の一年が燃やされると思った。加えて召喚獣を従えている人間だ、同じ力を持つ者同士で戦いたかったからに決まっているだろ」

――こんな所にプルスみたいな人がいた。グラスさん、戦闘狂なんだ。

「ニクス、お前の力は常人の域を超えている。どう考えても普通じゃない。お前の一蹴りで俺の右腕がぶっ壊れた。あの時は舞い上がっていたが、冷静に考えればすぐ逃げるべきだったな」

「すみません。すぐに治しますね」

「治す?」

 僕はグラスさんの右腕に指をさし、詠唱を放つ。

『ファイア』

「なっ!」

「うおおおおいいいい!!」×舎弟たち

 グラスさんの右腕は炎に包まれ、髪をたくし上げながら燃えている。

「安心してください。熱くないはずなので」

「兄貴! 熱くないんですか!」

「いや、どう見ても熱いっすよね!」

「そんなに燃えてたら腕が焦げちまうっすよ!」

「いや、熱くはない。加えて痛みまで引いて来やがった……」

 グラスさんの腕から炎が消えると、腕が元通りになっている。

「嘘だろ……。腕が治ってる。いったい何をした?」

「まぁ~、回復魔法の類だと思ってくれればいいかと思います。お代はいらないので、腕を粉々に折ったことは許してください」

「腕が治ったのに越したことはないが、これを回復魔法の類にするのは無理だろ。何でファイアが回復魔法になるんだ」

「秘密主義な者で……」

「さっき自分の名前喋ってただろ。はぁ~、まぁ良い。腕が治ったのなら戦える。あのクソ野郎どもを戦場でぶっ殺して目を覚まさせてやらねえと」

「えっと……、グラスさんって結局何が目的なんですか?」
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