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鶏を買ったら……知り合いが増えた。

大量の角ウサギ?

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「はぁああ!!」

 僕は地面に向って拳を当てた。すると地面が凹み、大量の角ウサギが空中に一瞬だけ浮いた。

 僕の周りにいた角ウサギは反動で失神し、地面に落ちる。半径五メートルくらいの角ウサギは気絶し、動かなくなった。

 何が起こったのかわからない、周りにいる角ウサギたちは無反応に近いほど動かない。だが、僕の方に一瞬で向いてきた。地面の草を食べていた角ウサギが全て僕の方を向いたのだ。それが凄い迫力で大量の視線が体に刺さる。あまりにも痛いので、止めてもらいたかったが魔物に言葉を吹きかけても意味がない。
 低ランクの魔物に話しかけても理解されないのだ。

「さて、どう来るかな。この数が一斉に来るとなると、怖いな……。というか、視界全体が白い地面なんだけど。東西南北どの方向を見ても角ウサギがいる。これって、四キロメートル四方なのでは……。つまり、三六○○万の四倍……。どうしよう。元から一人で勝つ気なんて無かったけど、一人じゃなくても無理な気がしてきた……」

「そもそもなぜこれだけの角ウサギがこの場に居られるのでしょうか。さすがにいすぎな気がします。何か不可解です。繁殖しやすい魔物だとしても、ここまで増殖するはずありませんよ」

 プルスはあたりを見渡して呟く。

――でも、周りにこれだけいるんだよ、見たところ本物だし……。

「本当に本物でしょうか?」

――え、でも。周りに倒れている角ウサギは、どう見ても本物だよ。

「ではなぜ主の足下付近にいた角ウサギの姿が消えているのでしょうか」

――ほんとだ。確かに言われてみればいなくなってる。足の踏み場もないくらいいたのに、僕の近くに一羽もいなくなってる。これは不自然だね。

「はい。ですから、この周りにいる角ウサギは偽物が混ざっているみたいですね。何者かによる魔法の類だと思われます。未だに襲ってこないのがその証拠ですね」

 角ウサギたちはこっちを向いただけで一向に攻撃してこなかった。僕の周りは真っ白で、雪でも積もったのかと思った。だが、その正体は角ウサギ。ただ、偽物が混ざっているらしい。

――こっちから攻撃を仕掛けたら攻撃してくるかな?

「どうでしょう。わかりません。でも、攻撃せずに時間だけ立っていくのは表紙抜けですし、四分の一くらい燃やしてみましょう」

 プルスは僕の足下に降りて、よちよちと歩き、僕の前にたった。

「主、『燃え移る炎(バーニングフレイム)』と唱えてください」

「ば、バーニングフレイム!」

「ぴよ~~!」

 プルスは口から大きな炎を噴き、一羽の角ウサギを燃やした。すると、近くにいる角ウサギにどんどん連鎖して、燃え始める。

 炎が海のように広がり、視界の半分が真っ赤になってしまった。

「こ、これは……。無慈悲な魔法だな」

「ふぅ~。懐かしい景色ですね。私も昔よく敵国の領土を炎の海にしていました。人の作った物はよく燃えましたよ。なんせ、石油を使っているんですからね」

「こんな光景が街の中で起こっていたなんて……。戦乱の世じゃないか」

「まさにそうでしたよ。我々神獣は国の力の象徴のようなときもありましたからね。でも、私達が管理されていない状況を考えると、ほとんどの国が滅びてそう言った制度もなくなったようですけど」

「プルス、本当にいろんな時代を生きているんだね」

「そりゃあもう。記憶の断片でしかありませんが、その断片がぎっしりと詰まっているんですよ」

「そうなんだ」

 炎は僕の視界に映る物、全てに燃え移っていった。燃え移る角ウサギがいなくなると、炎の勢いは止まる。

 燃えていた角ウサギは毛皮と角だけになり、肉と内臓は消えた。先ほどと同じ状態になっているみたいだ。だが、眼の前に落ちている角ウサギの毛皮の枚数は僕が見ていた角ウサギの数より遥かに少ない。それでも一〇○枚から二○○枚くらいはあると思う。でも、それだけで、三六○○万羽の毛皮は取れなかった。

「プルス、毛皮の枚数が少ないのは失敗している訳じゃないよね?」

「はい。そのはずです。やはり偽物の角ウサギたちが大量に混ざっていたようですね。いったい誰がこんなことをするのでしょうか……」

「さぁ、僕にはわからない。でも、街の人を驚かせるにしては数が多すぎる。悪戯の類ではないよ。度を越えてる」

「ですよね。何かの意図がないとこんな小細工しません。あまりに大きな要道ですから、大きな目的を持っている者の犯行かと思われます。でも、この程度の偽物なら簡単に燃やせるみたいですね。そこまで魔力を使用していないにも拘らず、二分の一を呆気なく倒せてしまいました。何とつまらない。拍子抜けすぎますよ……」

 プルスは相当期待していたようで、不貞腐れながら僕の方に歩いてくる。

「まぁまぁ、大きな戦いにならなかったんだから、それだけで……」

 僕は背後から殺気を感じ、身を屈めてプルスを右手で掴み左手は地面に着ける。左手だけで体を支え、右脚を蹴り上げて後方の殺気に攻撃を放った。

「くっ!」

 僕の脚は何者かの体に当たり、殺気は遠のく。

 僕は炎の海へ飛び込んで、敵から距離をとった。

「おいおい……。俺の相棒は火属性に弱いんだって。俺、お手製の人形が半分燃えてるじゃねえか、と思って来てみれば。冒険者が燃やしてたのか……」

 僕に蹴られた男性は右腕を負傷したのか、左手で庇っている。

「あなたは誰ですか?」

「それはこっちが聞きてえんだよ。お前は誰だ?」

 目の前にいる男性は服装からして冒険者。だが、見方によれば盗賊にも見える。

「僕はニクス・フレイズ。ただの、無職だ」

「ニクス……。確かに聞かねえな。新人の冒険者は大体把握しているから、本当に冒険者じゃないようだな」

 その男性は長い前髪をかき上げ、つり上がった眼で僕を睨みつけてくる。まるでヘビのような眼力で、恐ろしい。

「お前の召喚獣、ヒヨコか……。丁度いい。俺の相棒の食事にしてやろうか」

「僕が名乗ったんだ、あなたも名乗ってください」

「名前なんて言う必要ないだろ。どうせお前はここで死ぬんだ」

 目の前の男性は右手に持っていたナイフを左手に持ち直した。

「相棒、右手折れちまった。少しの間、骨の替わりになってくれ」

「相棒……?」

 男性の長袖の隙間から何かがシュルシュルと出てくる。
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