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鶏を買ったら……知り合いが増えた。

呪い付きの剣を買う

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「あ、服が売ってる。なになに……銀貨一枚。結構安いな。質素な服を何着か買っていこう」

 僕は自分の大きさに合った上下の服を七枚ずつ買い、金貨二枚を店員さんに支払う。お釣りとして銀貨六枚を受け取った。服を買った後、パンツと内着を買い忘れていたと気づき、それぞれ五枚ずつ買って金貨一枚を店員さんに支払う。

「金貨二枚と銀貨四枚を使って残り、金貨四七枚と銀貨六枚。でも、欲しかった服が買えたからいいか。あとのお金は動物さん達と剣に当てよう」

 僕は動物と剣、どちらが先に見つかるかとドキドキしながら市場を歩いていたら、剣や包丁、ナイフ、などの刃物を売っている鍛冶屋があった。

「先に見つけたのは剣か。よし、入ろう」

 僕は鍛冶屋に入ると、他の冒険者さんや傭兵などが武器を見ていた。

「ん~、何かいい剣はないかな~」

「主は剣にこだわりがあるんですか?」

 プルスは僕の脳内に話かけて来た。

「いや、まったくないよ。他の武器よりも多少使えるから持っておきたいだけ。ちゃんとした剣なら安くても構わない」

「そうですか。でしたら、あれにしたらどうですか」

 プルスは僕の頭を剣の沢山入った傘入れに向ける。

「これは……。遺品の剣じゃないか。値段は一本銀貨一枚か。安いな。なになに、張り紙に『呪い付き』って書いてあるよ。銀貨一枚はめちゃくちゃ安いけど呪い付きはな……。ん? 呪いなら燃やせるじゃん」

「はい。籠の中にある剣の中には良品も含まれているそうです。それも呪い付きとして安く売られているみたいですから、買った後に呪いを燃やせば何ら問題なく使えますよ」

「そうだね。剣も使われずに残ってるの可哀そうだし。何なら全部買って折れた時の予備にしようか」

「いいですね。主はすぐ剣を壊しそうですし。こだわりがないなら、安くて大量にかったほうがお得な気がします」

「まぁ、いい剣を長く使ったほうがいいのは知ってるけど、今の僕には良い剣なんて必要ない。使う機会も石槍があれば減るだろうからね」

 僕は店員さんに話しかけようとしたのだが、剣の手入れ品が目に入り、やすりが売っていたので迷わず手に取る。
その後、遺品の剣が入った筒を持ち上げて店員に尋ねる。

「すみません。この剣を全部買ってもいいですか?」

「え……。その剣は全部呪い付きですよ。いいんですか?」

「はい、構いません」

「そうですか。こちらとしても呪い付きの剣を買って頂けてありがたいので、二割引きにさせていただきます。加えて、こちらの紙やすりはタダで構いません」

「本当ですか。ありがとうございます!」

――やったよ、プルス。二割引きだって。紙やすり、タダだって。凄いね。

「呪い付きの剣たちが相当いらなかったんですね」

――まぁ、呪い付きの剣があったら他の剣にも呪いが乗り移っちゃうかもしれないからね。

 剣の本数は一〇本。本来なら金貨一枚かかるのだが、二割引きということなので、銀貨八枚で済んだ。

 補足だが、普通の剣を一本買うだけでも金貨一〇枚は必要だ。良剣になると、金貨五○枚とか一〇○枚とか、見境がなくなっていく。

 僕は剣が振れさえすればいいので、一〇本も呪い付きの剣が買えて幸運だ。

 僕は呪い付きの剣を自分の背負っている空の籠に入れて鍛冶屋を出る。そのまま進んでいた方向に歩き出した。

「プルス、僕思ったんだけど、呪いってそもそも何? 授業で習った程度でよく知らないんだ」

「呪いはですね、死者の魂が最後の念を放った時、それを剣が吸った状態です。切れ味が悪くなったり、病気になったり、とんでもなく重かったり、呪いの効果は様々ですが、良い効果は1つもありません。逆に良い効果が付いている武器もあるみたいですよ」

「へぇ……。この剣たちの呪いは見れないの?」

「鑑定士なら見れると思いますが、私達には分からないですね」

「そうなんだ。何か面白い効果でもついてたらそのまま残しておいてもよかったんだけど」

「良い効果は付いてないんですから、呪いなんて残しておく必要ありません。さっさと燃やして普通の剣にするべきですよ」

「そうだね。じゃあ、プルスが僕の頭の上から剣の呪いだけを燃やしてくれる?」

「お安い御用です」

 プルスは僕の頭の上でもぞもぞと動き、後ろを向いた。

「ぴよ~~」

 プルスの吐き出す炎によって背中が熱くなり燃えているとわかる。

 僕は本当に剣の呪いだけが消えているのかと疑問に思いながら、熱が去るのを待った。

 数秒後に背中から熱さが消えたので、僕は後ろを振り返る。先ほどまで禍々しかった剣が今は西日に当てられて柄を輝かせていた。

「ほんとに普通の剣に戻った。これで僕は気兼ねなく使えるようになったわけか」

「そのようですね。どの剣を左腰に掛けますか?」

「ん~、一番無難なやつがいいかな」

「なら、本当に質素なこの剣ですね」

 プルスは自身の何倍もある大きさの剣を持ち上げ、僕に渡してきた。

「ありがとう、プルス」

 僕は剣の柄を持ち、鞘から引き抜く。すると銀の剣身が現れ、現役さながらの光沢を見せる。

「うん。問題なく使えそう」

 僕はベルトとズボンの間に剣を差しこんだ。

「よし、次は動物だ。大きめの動物達がいたらいいんだけど、どこかに売ってないかな」

 僕は今日来た一番の目的である動物を探していた。豚、牛、馬、など少し手のかかる動物を探していたのだが全く見つからない。

「あれ~、何でいないんだろう。プルスには理由が分かる?」

「さぁ、分かりかねますね。ですが、一つ言えるのは、動物が売っていないということはこの街にとって動物達が必要ないということです」

「なる程、この村には動物を売る必要性がないのか。何でなんだろう?」

「単純に場所が悪いからだと思います。この村を出たら未開拓の土地になるのです。つまり、魔物がわんさかいる訳ですよ。そんな場所で酪農をしようとする者がいるかと言われるといません。動物たちを守るだけでも相当お金が掛かります」

「ここに、動物を欲している人がいるんだけどな……」

「主は変わった人間なので枠には入りませんよ」

「何それ、酷い。僕だけ仲間外れみたいじゃん」

「そう言われましても。あ、あそこから動物の気配がします」

「え、ほんと!」

 僕はプルスの感じた気配を辿っていく。すると、露店に鶏が売られていた。

「鶏か。卵が手に入るから、買うのはありだな」

 僕は鶏の入っている鉄檻を眺めていた。
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