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県立西高校、一年三組の教室。休み時間に一人の小柄な少女を取り囲み女の子たちがワイワイやっていた。
「すごいよ伝子、また一組カップル作っちゃったじゃん」
「ホント、いったいどうやってるの?」
「いや……それはそのぉ……」
伝子と呼ばれた少女は、授業中先生に当てられまいとしている小学生のようにうつむき、机に視線を落としていた。彼女の名前は日向野伝子。一見小学生かと見まがうくらい低い背に、さくらんぼのような赤い玉のついたゴムでちょこんとまとめたツインテールの髪、顔にちょっとそばかすのある、美人ではないが小動物のような可愛らしさを持つ一応女子高生。彼女はクラスメートの皆から『恋文配達人』という二つ名をあたえられていた。その由来はというと、伝子に手紙を託して好きな人に渡してもらうとその恋は成就する、というジンクスがあるからだ。もっともそれはジンクスという不確実なものではなく、伝子には正真正銘そういう力、すなわち『好き』だという気持ちを手紙に込めて相手に確実に伝え、好きになってもらえるようにする力があるのだ。
ちなみにそんな力をもってしても100%の確率にはならなかったりする。例えばあまりにモテる男の子には両思いの場合を除き通じないし、相手にすでに彼女がいる場合もダメ。それに、自分に対してはこの能力を使うことはできないからだ。
「ちょっと、あんまりからかうと伝子がかわいそうだよ」
その時、すらっとした高い背に背中の半分位まで伸びたつややかな黒髪、少し切れ長でイタズラ好きな色をたたえた瞳に、リップを塗った唇がなまめかしい美少女が後ろから割って入って来た。
「あ……真穂ちゃん」
「さ、次は美術の時間だし、早く移動しないと」
真穂と呼ばれた少女はそう言いながら女の子たちを押しのけ、デパートで母親を見つけてホッとした迷子の子供のような顔をしている伝子の手を取ってさっさと教室を後にした。その様子を机の周りに集まっていた女の子たちはポカンと見ていた。
「すごいよ伝子、また一組カップル作っちゃったじゃん」
「ホント、いったいどうやってるの?」
「いや……それはそのぉ……」
伝子と呼ばれた少女は、授業中先生に当てられまいとしている小学生のようにうつむき、机に視線を落としていた。彼女の名前は日向野伝子。一見小学生かと見まがうくらい低い背に、さくらんぼのような赤い玉のついたゴムでちょこんとまとめたツインテールの髪、顔にちょっとそばかすのある、美人ではないが小動物のような可愛らしさを持つ一応女子高生。彼女はクラスメートの皆から『恋文配達人』という二つ名をあたえられていた。その由来はというと、伝子に手紙を託して好きな人に渡してもらうとその恋は成就する、というジンクスがあるからだ。もっともそれはジンクスという不確実なものではなく、伝子には正真正銘そういう力、すなわち『好き』だという気持ちを手紙に込めて相手に確実に伝え、好きになってもらえるようにする力があるのだ。
ちなみにそんな力をもってしても100%の確率にはならなかったりする。例えばあまりにモテる男の子には両思いの場合を除き通じないし、相手にすでに彼女がいる場合もダメ。それに、自分に対してはこの能力を使うことはできないからだ。
「ちょっと、あんまりからかうと伝子がかわいそうだよ」
その時、すらっとした高い背に背中の半分位まで伸びたつややかな黒髪、少し切れ長でイタズラ好きな色をたたえた瞳に、リップを塗った唇がなまめかしい美少女が後ろから割って入って来た。
「あ……真穂ちゃん」
「さ、次は美術の時間だし、早く移動しないと」
真穂と呼ばれた少女はそう言いながら女の子たちを押しのけ、デパートで母親を見つけてホッとした迷子の子供のような顔をしている伝子の手を取ってさっさと教室を後にした。その様子を机の周りに集まっていた女の子たちはポカンと見ていた。
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