13 / 26
戦車の砲塔は何で1つなのですか~?
しおりを挟む
無事にライセンス契約が結べたそうです。
王立国家は豆戦車を売り込みたくて我が国以外にも平野国家や共和国にも売り出しているようです。
「ユーディ様~今検討中の試作2号戦車はなんで砲塔が1つなんですの?」
前回の打ち合わせから数日、シュルマン少佐以外にも兵器開発局の人たちが出入りするようになった私たちの戦車研究所にて、戦車のイメージラフを描いていたところ、ニーナ様から問われました。
そういえば、私は本で事前に”砲塔は1つで十分である”と認識していましたけれど、皆様に説明しておりませんでしたわね。
王立国家も共産国家も多砲塔戦車というものを開発していると聞きます。
大砲屋のニーナ様からすれば戦車に一杯大砲を乗せたほうが利益は上がるわけですから当然の疑問ですわね。
私も本を読むまで戦車は”陸上戦艦”だと思っておりましたので、複数の砲を積んだほうが強いと思っておりましたの。
ですが重量のかさむ砲を複数積むと、車体重量の関係から分装甲が割を食い防御力が確保できません。
それに、各砲の配置によっては互いに死角ができるため、最大火力を常に発揮できないという問題もあります。
また、すべて同じ口径の砲が詰めればいいですが、戦艦の様に複数の口径を搭載すると、車内で数種類の砲弾を保管しておく必要があり運用も面倒ですし、兵站の問題も出ます。
1種類の砲に絞れば、榴弾はないけれど徹甲弾はあるなどの状況程度で、主砲弾がありませんなんて状況は回避しやすくなるはずです。
ですから、360度旋回可能な砲等が1つあればいいのです。
「そういうことですのね。
ニーナとしてはいろんな種類の砲を買ってほしいですけれど、
一つに絞れば砲弾がたくさん必要になりますわね」
「陸海軍で共通の砲弾が使えれば、より数が増えるんじゃないかしら?」
「ナイスですわユーディ様。さっそくお父様と相談いたしますわ~」
ニーナ様には納得していただけたようです。
現在ニーナ様のご実家では、海軍向けの高射砲である8.8cm砲の後端をなるべく簡略化して短くなるように依頼中です。
あとは砲撃時の反動軽減ですわね。
駐退機だけでは抑制しきれないので、最近研究されているマズルブレーキというモノの開発促進をお願いしております。
それがないと、戦車が幾ら真横を向いて打つ機会が少ないとはいえ、砲撃でひっくり返っては意味がありません。
野砲でも反動制御は重要とのことで、是非とも進めてほしい研究です。
ただ、砲の重さが気になるところなんですよね…軽くなりませんかねあれ?
さて、主砲とは別に問題となっているものがあります。
砲塔本体です。
「ローザ様いかがでしょう?」
曲面を多用することで、少しでも板厚を抑えられないかを検討してもらっているのです。
「うーん、球面を使うことで板厚を下げられないか、ですわよね?
私も計算しておりますし、会社からも確かに力の分散から考えて効果はあるだろうと言われましたけど、製造できませんわよ?」
「製造できない?ですの?」
「鉄板を丸めるのは大変ですのよ?
端から何回もプレスしてなんとなく円形にするんですの。
1mm程度の薄板ならまだしも、80mmなんて曲がりませんわよ?」
「計算上何ミリの厚さが欲しいのです?」
「70~80mmですわね」
確かに、そんな厚さの鉄板を曲げられるとは思えませんわ…
でも、本には確か鋳造と書かれていました。
ということは、鋳物かすれば形状は自由ではないでしょうか?
「鋳造では、今度品質を維持するのが大変ですのよ?
鋳造ならある程度複雑な形状も再現できますが、
装甲にするのに巣や内部クラックなんか発生しては、そこから破損しますわよ?
それに鋳造材は溶接に向きませんの。天板とかどうやって取り付けますの?」
「そうでしたわ…鋳造に溶接すると衝撃で簡単に割れてしまうんでしたっけ?」
「最悪はボルトかリベット止めしかないわですわね」
どうにもいろいろな問題が有るようです。
未来知識の本があるからと言って、すべてが書いてあるわけではありません。
もしかすると今後、鋳造に向く溶接方法が発見されるかもしれませんが、無いものをねだっても仕方がありません。
他の方法でなんとか再現をしていきましょう。
王立国家は豆戦車を売り込みたくて我が国以外にも平野国家や共和国にも売り出しているようです。
「ユーディ様~今検討中の試作2号戦車はなんで砲塔が1つなんですの?」
前回の打ち合わせから数日、シュルマン少佐以外にも兵器開発局の人たちが出入りするようになった私たちの戦車研究所にて、戦車のイメージラフを描いていたところ、ニーナ様から問われました。
そういえば、私は本で事前に”砲塔は1つで十分である”と認識していましたけれど、皆様に説明しておりませんでしたわね。
王立国家も共産国家も多砲塔戦車というものを開発していると聞きます。
大砲屋のニーナ様からすれば戦車に一杯大砲を乗せたほうが利益は上がるわけですから当然の疑問ですわね。
私も本を読むまで戦車は”陸上戦艦”だと思っておりましたので、複数の砲を積んだほうが強いと思っておりましたの。
ですが重量のかさむ砲を複数積むと、車体重量の関係から分装甲が割を食い防御力が確保できません。
それに、各砲の配置によっては互いに死角ができるため、最大火力を常に発揮できないという問題もあります。
また、すべて同じ口径の砲が詰めればいいですが、戦艦の様に複数の口径を搭載すると、車内で数種類の砲弾を保管しておく必要があり運用も面倒ですし、兵站の問題も出ます。
1種類の砲に絞れば、榴弾はないけれど徹甲弾はあるなどの状況程度で、主砲弾がありませんなんて状況は回避しやすくなるはずです。
ですから、360度旋回可能な砲等が1つあればいいのです。
「そういうことですのね。
ニーナとしてはいろんな種類の砲を買ってほしいですけれど、
一つに絞れば砲弾がたくさん必要になりますわね」
「陸海軍で共通の砲弾が使えれば、より数が増えるんじゃないかしら?」
「ナイスですわユーディ様。さっそくお父様と相談いたしますわ~」
ニーナ様には納得していただけたようです。
現在ニーナ様のご実家では、海軍向けの高射砲である8.8cm砲の後端をなるべく簡略化して短くなるように依頼中です。
あとは砲撃時の反動軽減ですわね。
駐退機だけでは抑制しきれないので、最近研究されているマズルブレーキというモノの開発促進をお願いしております。
それがないと、戦車が幾ら真横を向いて打つ機会が少ないとはいえ、砲撃でひっくり返っては意味がありません。
野砲でも反動制御は重要とのことで、是非とも進めてほしい研究です。
ただ、砲の重さが気になるところなんですよね…軽くなりませんかねあれ?
さて、主砲とは別に問題となっているものがあります。
砲塔本体です。
「ローザ様いかがでしょう?」
曲面を多用することで、少しでも板厚を抑えられないかを検討してもらっているのです。
「うーん、球面を使うことで板厚を下げられないか、ですわよね?
私も計算しておりますし、会社からも確かに力の分散から考えて効果はあるだろうと言われましたけど、製造できませんわよ?」
「製造できない?ですの?」
「鉄板を丸めるのは大変ですのよ?
端から何回もプレスしてなんとなく円形にするんですの。
1mm程度の薄板ならまだしも、80mmなんて曲がりませんわよ?」
「計算上何ミリの厚さが欲しいのです?」
「70~80mmですわね」
確かに、そんな厚さの鉄板を曲げられるとは思えませんわ…
でも、本には確か鋳造と書かれていました。
ということは、鋳物かすれば形状は自由ではないでしょうか?
「鋳造では、今度品質を維持するのが大変ですのよ?
鋳造ならある程度複雑な形状も再現できますが、
装甲にするのに巣や内部クラックなんか発生しては、そこから破損しますわよ?
それに鋳造材は溶接に向きませんの。天板とかどうやって取り付けますの?」
「そうでしたわ…鋳造に溶接すると衝撃で簡単に割れてしまうんでしたっけ?」
「最悪はボルトかリベット止めしかないわですわね」
どうにもいろいろな問題が有るようです。
未来知識の本があるからと言って、すべてが書いてあるわけではありません。
もしかすると今後、鋳造に向く溶接方法が発見されるかもしれませんが、無いものをねだっても仕方がありません。
他の方法でなんとか再現をしていきましょう。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
武蔵要塞1945 ~ 戦艦武蔵あらため第34特別根拠地隊、沖縄の地で斯く戦えり
もろこし
歴史・時代
史実ではレイテ湾に向かう途上で沈んだ戦艦武蔵ですが、本作ではからくも生き残り、最終的に沖縄の海岸に座礁します。
海軍からは見捨てられた武蔵でしたが、戦力不足に悩む現地陸軍と手を握り沖縄防衛の中核となります。
無敵の要塞と化した武蔵は沖縄に来襲する連合軍を次々と撃破。その活躍は連合国の戦争計画を徐々に狂わせていきます。
悠久の機甲歩兵
竹氏
ファンタジー
文明が崩壊してから800年。文化や技術がリセットされた世界に、その理由を知っている人間は居なくなっていた。 彼はその世界で目覚めた。綻びだらけの太古の文明の記憶と機甲歩兵マキナを操る技術を持って。 文明が崩壊し変わり果てた世界で彼は生きる。今は放浪者として。
※現在毎日更新中
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
札束艦隊
蒼 飛雲
歴史・時代
生まれついての勝負師。
あるいは、根っからのギャンブラー。
札田場敏太(さつたば・びんた)はそんな自身の本能に引きずられるようにして魑魅魍魎が跋扈する、世界のマーケットにその身を投じる。
時は流れ、世界はその混沌の度を増していく。
そのような中、敏太は将来の日米関係に危惧を抱くようになる。
亡国を回避すべく、彼は金の力で帝国海軍の強化に乗り出す。
戦艦の高速化、ついでに出来の悪い四姉妹は四一センチ砲搭載戦艦に改装。
マル三計画で「翔鶴」型空母三番艦それに四番艦の追加建造。
マル四計画では戦時急造型空母を三隻新造。
高オクタン価ガソリン製造プラントもまるごと買い取り。
科学技術の低さもそれに工業力の貧弱さも、金さえあればどうにか出来る!
勇者の如く倒れよ ~ ドイツZ計画 巨大戦艦たちの宴
もろこし
歴史・時代
とある豪華客船の氷山事故をきっかけにして、第一次世界大戦前にレーダーとソナーが開発された世界のお話です。
潜水艦や航空機の脅威が激減したため、列強各国は超弩級戦艦の建造に走ります。史実では実現しなかったドイツのZ計画で生み出された巨艦たちの戦いと行く末をご覧ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる