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52話:ニホニ解放戦3
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前回の王国攻勢は事前の偵察などもありこちらが有利にことを進められた。
だがニホニ防衛線は思うようにならない。
王国は長射程の大砲まで持ち出してニホニを更地に変えようとしている。
あの砲撃を見れば歩兵はどうしたたって怖気づく。
さらに、“狙撃”だ。
ニホニから3km北に居た我々の本隊が増援のために前進を開始したが、この狙撃によってニホニに近づけないでいる。
別動隊にて裏取りをさせているが、そちらは既に王国軍と正面戦闘が始まっている。
そちらも動きは芳しくない。
今までの3倍以上の射撃を食らい、崩壊寸前だという。
どういう訳か王国側は装填の間が無いという。
絶え間ない射撃に瞬く間に死傷者数が増えている。
「報告します!分派した第1騎兵部隊は全滅、後退する歩兵は王国軍に追撃されています」
「報告します。本隊正面の銃兵の損耗率は5%に満たない状態ですが、士官の死傷率は既に6割を超えています。もうまともに進軍することも出来ません」
次々に司令部テントに伝令の兵たちが駆け込んでくるが良い情報は何一つない。
王国軍第三騎士団は初戦こそ互角かと警戒したが、奴らの攻勢に合わせて反撃を行い難なく撃退出来た。
だが、今度は完全に立場が逆転している。
我が軍の大砲では相手の射程に踏み込めない。
何度か試したが、狙撃でやられるか、どのようにして狙っているのかわからないが的確な砲撃で撃破されてしまう。
大砲など巨大な目標に向かって放つものでありピンポイントで砲撃できるものではなかったはずだ。
狙撃と言い、王国側の重砲の精度は異常だった。
「殿下には申し訳ないが撤退しかあるまい…」
「しかし!殿下の機嫌を損ねれば我々が!」
副官が思わずといったように叫ぶ。
だが何もわざわざ第二皇子のもとに撤退する必要はない。
「この所業をもって第一皇子殿下に私は着くつもりだ。敗残兵とはいえ無策で無謀な総司令官のもとで戦い続けるなど不可能だ」
金に物を言わせた支援もしてもらっているし犯罪奴隷だけでなく農民まで無理やり徴兵して今の戦線を維持しているが、もう崩壊は目前だ。
指揮官が圧倒的に足りない。
もはや統率の取れた行軍は不可能。
それを進言しても全く聞き入れてもらえないなら、そのような愚か者に仕える必要もない。
第二皇子の婚約者になっている娘には悪いが、切り捨てるまでだ。
「白旗を上げよ。停戦交渉だ!」
*****
「白旗ですね」
本部へ報告して戻ってきたルーナに索敵を任せて射撃を繰り返しているなか、次弾を装填するというタイミングでルーナが声を上げた。
「白旗?停戦したいってこと?」
「そのようです」
「帝国兵が撤退を開始するまでは撃ってもいいわよね?」
「いいんじゃないでしょうか?剣をしまうとか銃を下ろすまでは誰も文句を言えないでしょう」
弾倉に残っている1発を放ち、念のため再装填する。
「まさか400発近く使うとは思わなかったわ」
「補給用の弾を持ってきてようございました」
既に薬莢を埋める穴は5個目だ。
場所を移動しながら狙撃を続けた結果、225人は死傷させたはずだ。
「兵が引いていきます」
「王国軍側から勝ちどきが上がったわね」
私はふっと息を吐いて銃を下ろす。
周辺の警戒は怠らないが、少しは気を抜いてもよい状態だろう。
ルーナが水筒を渡してくれたので水を飲む。
随分喉が渇いていたみたいだ。
「これで、戦争が終わればいいわね」
「まったくです」
私とルーナは撤退する帝国軍を丘の上から眺めていた。
だがニホニ防衛線は思うようにならない。
王国は長射程の大砲まで持ち出してニホニを更地に変えようとしている。
あの砲撃を見れば歩兵はどうしたたって怖気づく。
さらに、“狙撃”だ。
ニホニから3km北に居た我々の本隊が増援のために前進を開始したが、この狙撃によってニホニに近づけないでいる。
別動隊にて裏取りをさせているが、そちらは既に王国軍と正面戦闘が始まっている。
そちらも動きは芳しくない。
今までの3倍以上の射撃を食らい、崩壊寸前だという。
どういう訳か王国側は装填の間が無いという。
絶え間ない射撃に瞬く間に死傷者数が増えている。
「報告します!分派した第1騎兵部隊は全滅、後退する歩兵は王国軍に追撃されています」
「報告します。本隊正面の銃兵の損耗率は5%に満たない状態ですが、士官の死傷率は既に6割を超えています。もうまともに進軍することも出来ません」
次々に司令部テントに伝令の兵たちが駆け込んでくるが良い情報は何一つない。
王国軍第三騎士団は初戦こそ互角かと警戒したが、奴らの攻勢に合わせて反撃を行い難なく撃退出来た。
だが、今度は完全に立場が逆転している。
我が軍の大砲では相手の射程に踏み込めない。
何度か試したが、狙撃でやられるか、どのようにして狙っているのかわからないが的確な砲撃で撃破されてしまう。
大砲など巨大な目標に向かって放つものでありピンポイントで砲撃できるものではなかったはずだ。
狙撃と言い、王国側の重砲の精度は異常だった。
「殿下には申し訳ないが撤退しかあるまい…」
「しかし!殿下の機嫌を損ねれば我々が!」
副官が思わずといったように叫ぶ。
だが何もわざわざ第二皇子のもとに撤退する必要はない。
「この所業をもって第一皇子殿下に私は着くつもりだ。敗残兵とはいえ無策で無謀な総司令官のもとで戦い続けるなど不可能だ」
金に物を言わせた支援もしてもらっているし犯罪奴隷だけでなく農民まで無理やり徴兵して今の戦線を維持しているが、もう崩壊は目前だ。
指揮官が圧倒的に足りない。
もはや統率の取れた行軍は不可能。
それを進言しても全く聞き入れてもらえないなら、そのような愚か者に仕える必要もない。
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「白旗を上げよ。停戦交渉だ!」
*****
「白旗ですね」
本部へ報告して戻ってきたルーナに索敵を任せて射撃を繰り返しているなか、次弾を装填するというタイミングでルーナが声を上げた。
「白旗?停戦したいってこと?」
「そのようです」
「帝国兵が撤退を開始するまでは撃ってもいいわよね?」
「いいんじゃないでしょうか?剣をしまうとか銃を下ろすまでは誰も文句を言えないでしょう」
弾倉に残っている1発を放ち、念のため再装填する。
「まさか400発近く使うとは思わなかったわ」
「補給用の弾を持ってきてようございました」
既に薬莢を埋める穴は5個目だ。
場所を移動しながら狙撃を続けた結果、225人は死傷させたはずだ。
「兵が引いていきます」
「王国軍側から勝ちどきが上がったわね」
私はふっと息を吐いて銃を下ろす。
周辺の警戒は怠らないが、少しは気を抜いてもよい状態だろう。
ルーナが水筒を渡してくれたので水を飲む。
随分喉が渇いていたみたいだ。
「これで、戦争が終わればいいわね」
「まったくです」
私とルーナは撤退する帝国軍を丘の上から眺めていた。
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