上 下
24 / 69

24話:敵補給部隊強襲

しおりを挟む
帝国側から来る馬車の台数は12台にもなった。
服装から御者は平民、その周りを2つの部隊が護衛していた。
特徴的な羽飾りとマントをつけた騎士が2名。部隊の隊長格…つまりは将校だろう。
「荷は食料と…弾薬類でしょうね」
「王国側と変わりはないわね…奥の将校から狙いましょう」
ルーナは双眼鏡と手持ちの小さな風車を取り出して風向きなどを調べる。
「2時方向、距離1000、風速3、風向3時方向」
「了解」
私は完全に寝そべり銃を構える。
スコープを覗けば目標の騎士を確認できた。
息を止めてトリガーに指をかける。

パスッ!

頭部に命中して馬に乗っている騎士がぐらりとバランスを崩して落馬する。
カチャリと音を立てて排莢し、次弾を装填する。
「ルーナ、次」
「1時方向、距離800、その他同じ」
敵兵たちが騒ぎ出す中もう一人の将校に狙いをつける。
くそ!落馬した騎士の様子を見るために横移動してる。
私はお母様から言われた偏差射撃を思い出す。
未来に来る位置を予測して撃つやり方。

パスッ!!

再装填。
「見事当たりましたね」
「薬莢を回収して移動しましょう」
お母様からも排莢した薬莢は必ず回収するように言われている。
敵には絶対わたってほしくないモノの一つだから。
まだ熱いはずの薬莢をルーナは手袋一つで袋にいれる。
「回収しました。行きましょう」
「えぇ!」
敵輸送隊は混乱状態だった。
急に指揮官が二人も倒れたわけだから、誰が指揮をするのか、何があったのかと声が聞こえる。
「こちらに気が付く様子はないわね」
「そのようですねミリア様」
ギリースーツをしっかりと着込んだ私たちは腰を低くしてその場を離れた。

*****
帝国軍陣地が見えるあたりにて、ルーナは双眼鏡で、私はスコープで物資置き場と思われる場所を見ている。
「何言ってるかわかる?」
「補給部隊が遅いということに対して、伝令と思われる兵が隊長が倒れたと報告しているようです」
「…なんでわかるのよ」
「口の動きを読むのですよミリア様」
なるほど、読唇術か。
私は出来ないもんな流石に。
「少なくとも一時的な後方かく乱は出来たかと」
「一度本陣に戻りましょう」
私の提案にルーナが頷く。
往路は地形の確認なども含めたため時間がかかったが、帰りは余計なことをせず移動しているので敵本陣まではかなり迅速に戻ってこれた。
後は王国軍まで戻って、今回の斥候の結果を報告ね。

*****
「というわけで、敵補給部隊を守っていた隊長2名を討ち取りました」
「やはり敵もこちらと同じ程度の補給は行っているか」
ベアロン伯爵に今回の斥候の報告を行った。
戦線の膠着状態を考えても妥当だろうし、常にこの補給が続くのであれば戦争はいつまでもにらみ合いになる。
「タリム嬢、君には引き続き後方の物資輸送の妨害をして頂きたい。そして、可能であれば敵本陣への攻撃もしてほしい」
わーお…敵本陣を直接ですか?
横にある林から狙える範囲には限りがあるんだけどなぁ
「物資輸送の妨害については積極的に従事します。ですが敵本陣については…」
「わかっている。無駄に攻撃をしろというつもりはない。“可能であれば”だ。見つかるなよ、君の仕事は見つからないことが最優先だ」
「わかりました」
一礼して報告を終え宿舎に戻る。
今後は敵補給線を叩くとなると、敵将校だけでなく、輸送そのものをとん挫させるようなこともしないといけないだろうから…何か考えないといけないわね。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】いせてつ 〜TS転生令嬢レティシアの異世界鉄道開拓記〜

O.T.I
ファンタジー
レティシア=モーリスは転生者である。 しかし、前世の鉄道オタク(乗り鉄)の記憶を持っているのに、この世界には鉄道が無いと絶望していた。 …無いんだったら私が作る! そう決意する彼女は如何にして異世界に鉄道を普及させるのか、その半生を綴る。

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

欠陥品なんです、あなた達は・・・ネズミ捕りから始める異世界生活。

切粉立方体
ファンタジー
 真っ暗闇の中を落ち続け、背中に衝撃を感じた。  暫く息が詰まっていたが直ぐに息が出来る様になり、特に怪我も無いようだった。   「兄ちゃん、大丈夫」 「ああ大丈夫だ、明美は」 「兄ちゃんがクッションになってくれたから大丈夫」  墨を流した様な漆黒の暗闇の中、腕の中の明美の感触だけが唯一確かな存在だ。  妹の明美をベットの上に押し倒したら、そのままベットの中へ身体が沈み込んで闇の中へ落ちたのだ。  パニックになりかけたが、落下する感触が有ったので、そのまま無意識に明美を護ろうと抱き締めていた。  なにも妹に#疚__やま__#しい事をしようとした訳じゃない。  僕がコンビニで買ってきたコミックを、明美が無断で先に読んでいたので取り返そうとしただけだ。  第一、明美はまだ小学六年生の餓鬼だ。  髪の毛を短く刈り揃えたサッカー少女で、良く男子に間違われている。 「兄ちゃんが僕にエッチな事しようとしたから罰が当たったのかな」 「こら、人聞きの悪い事言うんじゃない」

訳あり女装夫は契約結婚した副業男装妻の推し

恋愛
戦争で英雄となった公爵ウェズブラネイことウェズは伯爵令嬢ウツィアと契約結婚をすることになった。彼女の両親とウェズの間で交わされたものだ。ウツィアに結婚の申し出をした幼馴染みの子爵令息が別の令嬢と結婚したら、離縁し彼女を自由にするというもの。 ウェズは結婚前からウツィアに心寄せていたが、釣り合わないとウェズが自ら契約を持ち出した。ウツィアはこの契約を知らない。仲を深めて良い家庭を築こうとするも、結婚してからウェズはウツィアと一線を引く。 ウツィアは落ち込む間もなく、夫から離縁されても自立できるように領地内で秘かに店を開いた。 正体がバレないように男装していると、それを知った夫のウェズが同じく正体がバレないように女装してやってきた。女装したウェズは男装したウツィアの店の常連になり仲を深める。その後、変装していない状態、ただの夫婦としても徐々に仲を深め始めた。 女装男装したまま剣の稽古をしたり、変装をしていない夫婦として乗馬の訓練をしたり、外野から見たらちぐはぐなことをしつつ夫婦仲を改善していく。 しかし女装したウェズの正体がウツィアにバレる日がきてしまう。同時に契約を満たす日も訪れた。夫婦は選択をしなければならない局面に立たされ向き合うこととなる。 これは女装夫と男装妻の距離を縮めるだけのラブコメ。 珍しく三人称視点で書いています。 好きをカンストしている夫が妻の一挙一動に嬉しいだの好きだの心の中で叫んでいる話。 夫→→→→→→妻を念頭に入れていれば、出会い編をすっ飛ばして本編から読んでも問題はありません。当然、出会い編を読んだ上で本編入るとにやにや度があがります。 読んでなくても全く問題ありませんが、今作は過去作「辺境伯に嫁いだけど、自宅裸族なのを隠したい」及び「旦那様を救えるのは私だけ!」を踏襲しています。ノリとか雰囲気とか細かいとことか。私の作品を過去から読み続けてくださっている方は上記二作品を念頭にいれて読むと楽しいかと思います。 全66話、出会い編(7話まで)は一話あたり概ね2000~3500字程度、本編は概ね1500~3000字程度で公開。 ※小説家になろう、ノベルアップ+にも投稿しています。※R15は保険です。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

ズボラ通販生活

ice
ファンタジー
西野桃(にしのもも)35歳の独身、オタクが神様のミスで異世界へ!貪欲に通販スキル、時間停止アイテムボックス容量無限、結界魔法…さらには、お金まで貰う。商人無双や!とか言いつつ、楽に、ゆるーく、商売をしていく。淋しい独身者、旦那という名の奴隷まで?!ズボラなオバサンが異世界に転移して好き勝手生活する!

処理中です...