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羽毛布団と盗賊討伐
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シルヴァーナ子爵家に引き取られて行った羽毛は荷馬車で10台、そんな羽毛で作られた掛け布団の初品がタリム家に届けられた。
全部で10組、これ別に私たちが使うようではなくて従業員用の布団である。
私たち用の布団はちゃんとした水鳥の羽毛布団があるので使わない。
今回は平民の意見として我が家の従業員たちに実際に使ってもらい、その感想をもらおうと言う魂胆だ。
とはいえ、すでに王都にて販売を始めた鶏羽毛布団は平民の間で飛ぶように売れているという。
いくら鶏の羽毛といえども、羽毛は羽毛。
普通の毛布などと比べて圧倒的な保温性があり、ちょっと裕福ぐらいの商家や豪農に受け入れられているとのことだ。
「というわけで、従業員用の宿舎の布団は羽毛布団になります。
ただ使用していて、くしゃみ、鼻水、体のかゆみがでたら使用はやめて毛布を使ってくださいね」
今はミシェルが従業員への説明会をしている。
なんでも体に合わない場合があるらしく、ミシェルが言う症状が出たら使用を控えないといけないらしい。
これは何も鶏の羽毛だからということではなく、どんなものでも起こる可能性があるとのことだ。
「では一人1枚ですからね。もらったら自分の部屋のベッドメイクをしてから仕事を始めてください」
住み込みの従業員たちがウィルの配る布団をもらうと部屋を出ていく。
1時間もすれば皆自分の仕事に戻るだろう。
今現在タリム男爵家には10名程度の従業員がいる。
それとは別に50人ほどの常備軍が駐屯している。
常備軍は憲兵も兼ねているので、町の警邏や犯罪の取り締まりなども行う。
宿舎は訓練場が併設されており、町の北側があり、そちらにも羽毛布団を入れた。
かなり好評なようだ。
男爵家を中心に町は南北に広がりつつあるが、兵士宿舎は訓練場も併せて北側にある。
コーラシル川を渡る手前にあり、検問所も兼ねているのだ。
そして、もし万が一また帝国が南下してきたときに即展開できるための処置で、ガリム要塞の第一障壁として機能している。
「レイノルド様、この羽毛布団なかなか良いですね」
「ウィルが喜んでくれてうれしいよ」
皆に布団を配り終わったウィルは昨日既に布団を体験していて気に入ってくれたようだ。
「毛布に比べてとても暖かく軽いので寝やすかったですね」
羽毛の輸出はミシェルの考えたタリムの目玉商品に十分なりそうだな。
ウィルはおべっかは使わないから信頼できる。
二人で執務室へ向かい、今日の仕事を始める。
今現在養鶏業は家の基幹業務なので安定するまでは私たちが面倒を見ないといけない。
ある程度軌道に乗ったら商業ギルドへ事業を売却する予定だ。
これはミシェルの発案で、男爵家としては町の維持発展をメインとして商売は商人がやるべきとの考えに私も同調したからだ。
あれもこれも手を出すのは難しい。
その代わり鶏の品種改良自体は男爵家の事業として継続する。
これは販売目的ではなくあくまでも私達が握っておくべき内容だと考えるからだ。
市場へ下ろしている卵と鶏の肉はセリで価格が決まっており、今現在その収益は全てタリム家の物となっている。
なかなか順調な滑り出しで、高級品だった”卵”が平民でも手が届くというのは大きいようだ。
なにより、ホテルタリム以外にも鶏・卵料理を提供する飲食店、宿屋が増えつつあり、隣のガリムだけでなく、他の領から来る人たちもまだ増加中だ。
さらには小麦と砂糖、卵を使った菓子類の店もわざわざ王都からやって来て出店された。
ここタリムの食材を使って作られた焼き菓子が王都へ運ばれ始めている。
それだけタリムの食材が評価されているともいえる。
「王都から来たパテシエール・デュポンの製造所が大口の顧客になりつつありますね。
おかげでケーキ屋やカフェも増えてきています」
「私は菓子類には卵を使うということを私も知らなかったからな。
菓子類の価格の高さは砂糖だと思っていたんだが、それだけではなかったという訳か」
「ミシェル様の先見の明ですかね。ですが、何故タリムなのでしょう?
養鶏ならばべリリム侯爵領だって盛んですからあちらにも菓子店が多くてもいいと思うのですが…」
「タリムは発展中だから場所の確保が楽だったのではないか?」
「それだけでしょうかねぇ?」
「何か気になることがあるのかウィル?」
「間違いなく税金が安いというのがあると思いますよ?しかも人頭税もない」
「厳密には人頭税が無い訳じゃあないんだが…負担感は少ないだろうな」
これはミシェルが提案した住居の賃貸料の一部を税金としているためだ。
不動産商会の売り上げから一定の割合を税として徴収する形なので、他の町に比べて家賃が幾分高いはずだが、それでも人口が伸びているのは”人頭税を排した”というのが大きいと言われている。
町の平民にはタリムには税金が無いと思っている者もいるほどだ。
また一定以上の規模の商家に関しては土地代と別に売り上げによる税金をかけている。
我が家に会計報告を提出することを条件に税率を下げる制度があり、最近できている製造所などはきっちりと報告書を出しており、なかなかの税金を納めてもらっている。
農民からは現金ではなく食料で納めてもらっているので、現金での税の取り立てが無いように見えるのは間違いない。
「ウィルは今のタリムをどう思う?」
「大変活気がありますよ。王都とちがって人々は笑顔が多いです。ガリムよりも活気だけなら上じゃないでしょうかね?」
私もそう思う。
市場の活気はかなりのものだ。
養鶏場にて製造された卵や鶏肉を下ろしている商会や露店の売れ行きはかなり良いと聞く。
平民でも割と気軽に肉が食えるようになってきているため、人口は安定している。
新規にタリムに住みたいという者もまだ来ており、町は発展中だ。
求人に対して住民がまだ少ない為スラム街などは出来ていない。
治安もかなり安定している状態だ。
「レイノルド様、失礼します」
ドアをノックされ入出を許可したのは軍団長のアレックスだった。
金髪碧眼の筋骨隆々の大男だが普段は優しい顔つきなので皆から慕われている。
厳密な所属はガリム伯爵家騎士団第一軍団長となる。
「どうしたアレックス、何かあったのか?」
「このところ北の街道…コーラシル川の向こう側で盗賊の被害が出たと届け出がありました」
「なんだって?」
コーラシル川の向こう側、つまり北側は王家が管理している土地だ。
帝国との国境画定がまだなため、どの貴族が持っている土地でもない。
主要部には王国軍が現在も駐留しており、軍への物資搬入などでタリムの町は中継地として潤っているともいえる。
つまり、軍関係者と軍人に対して商売をするもの達ぐらいしか住んでない土地で盗賊被害があったということになる。
それは王国軍側が何とかすべき仕事ではないだろうか?
「アレックス、流石に川を超えて討伐に行くというのは越権行為にならないか?」
「はい、なると思われます。ガリム領でもありませんから難しい問題です」
「だよなぁ…住民たちに注意喚起をするぐらいしかないと思うが…」
しかし、こんな時期に盗賊か…今年アルミナ王国は特別収穫が悪かったわけではない。
タリムは豊作だったが、他の地もおおむね平年通りの収穫量だったと聞く。
一般的に盗賊というのは不作のときなど管理が行き届いていない村人などが食いつなぐために成ってしまうものだ。
「まずは注意喚起を致します。
タリムの住民が川を渡ることはないと思いますが、商人たちは護衛を欲しがるかもしれませんね」
私は隊長のセリフを聞いてふとと思いつく。
「そこの判断は団長に任せる。護衛ついでに討伐する分には文句も言われないだろう」
そういってニヤリと笑えば、アレックスもいい笑顔を返してくれた。
「えぇそうですね、護衛として守っている商人が攻撃を受けそうならば反撃は仕方がないでしょう」
こうして盗賊討伐計画が練られ実行された。
正規に軍人として鍛え上げられている彼らが統制の取れていない盗賊に負けるはずもなく、王国軍への商品を運ぶ商人たちと共に返送した我が軍20名が難なく盗賊を討伐したと連絡があったのは、計画立案から半月ほどたったころだった。
全部で10組、これ別に私たちが使うようではなくて従業員用の布団である。
私たち用の布団はちゃんとした水鳥の羽毛布団があるので使わない。
今回は平民の意見として我が家の従業員たちに実際に使ってもらい、その感想をもらおうと言う魂胆だ。
とはいえ、すでに王都にて販売を始めた鶏羽毛布団は平民の間で飛ぶように売れているという。
いくら鶏の羽毛といえども、羽毛は羽毛。
普通の毛布などと比べて圧倒的な保温性があり、ちょっと裕福ぐらいの商家や豪農に受け入れられているとのことだ。
「というわけで、従業員用の宿舎の布団は羽毛布団になります。
ただ使用していて、くしゃみ、鼻水、体のかゆみがでたら使用はやめて毛布を使ってくださいね」
今はミシェルが従業員への説明会をしている。
なんでも体に合わない場合があるらしく、ミシェルが言う症状が出たら使用を控えないといけないらしい。
これは何も鶏の羽毛だからということではなく、どんなものでも起こる可能性があるとのことだ。
「では一人1枚ですからね。もらったら自分の部屋のベッドメイクをしてから仕事を始めてください」
住み込みの従業員たちがウィルの配る布団をもらうと部屋を出ていく。
1時間もすれば皆自分の仕事に戻るだろう。
今現在タリム男爵家には10名程度の従業員がいる。
それとは別に50人ほどの常備軍が駐屯している。
常備軍は憲兵も兼ねているので、町の警邏や犯罪の取り締まりなども行う。
宿舎は訓練場が併設されており、町の北側があり、そちらにも羽毛布団を入れた。
かなり好評なようだ。
男爵家を中心に町は南北に広がりつつあるが、兵士宿舎は訓練場も併せて北側にある。
コーラシル川を渡る手前にあり、検問所も兼ねているのだ。
そして、もし万が一また帝国が南下してきたときに即展開できるための処置で、ガリム要塞の第一障壁として機能している。
「レイノルド様、この羽毛布団なかなか良いですね」
「ウィルが喜んでくれてうれしいよ」
皆に布団を配り終わったウィルは昨日既に布団を体験していて気に入ってくれたようだ。
「毛布に比べてとても暖かく軽いので寝やすかったですね」
羽毛の輸出はミシェルの考えたタリムの目玉商品に十分なりそうだな。
ウィルはおべっかは使わないから信頼できる。
二人で執務室へ向かい、今日の仕事を始める。
今現在養鶏業は家の基幹業務なので安定するまでは私たちが面倒を見ないといけない。
ある程度軌道に乗ったら商業ギルドへ事業を売却する予定だ。
これはミシェルの発案で、男爵家としては町の維持発展をメインとして商売は商人がやるべきとの考えに私も同調したからだ。
あれもこれも手を出すのは難しい。
その代わり鶏の品種改良自体は男爵家の事業として継続する。
これは販売目的ではなくあくまでも私達が握っておくべき内容だと考えるからだ。
市場へ下ろしている卵と鶏の肉はセリで価格が決まっており、今現在その収益は全てタリム家の物となっている。
なかなか順調な滑り出しで、高級品だった”卵”が平民でも手が届くというのは大きいようだ。
なにより、ホテルタリム以外にも鶏・卵料理を提供する飲食店、宿屋が増えつつあり、隣のガリムだけでなく、他の領から来る人たちもまだ増加中だ。
さらには小麦と砂糖、卵を使った菓子類の店もわざわざ王都からやって来て出店された。
ここタリムの食材を使って作られた焼き菓子が王都へ運ばれ始めている。
それだけタリムの食材が評価されているともいえる。
「王都から来たパテシエール・デュポンの製造所が大口の顧客になりつつありますね。
おかげでケーキ屋やカフェも増えてきています」
「私は菓子類には卵を使うということを私も知らなかったからな。
菓子類の価格の高さは砂糖だと思っていたんだが、それだけではなかったという訳か」
「ミシェル様の先見の明ですかね。ですが、何故タリムなのでしょう?
養鶏ならばべリリム侯爵領だって盛んですからあちらにも菓子店が多くてもいいと思うのですが…」
「タリムは発展中だから場所の確保が楽だったのではないか?」
「それだけでしょうかねぇ?」
「何か気になることがあるのかウィル?」
「間違いなく税金が安いというのがあると思いますよ?しかも人頭税もない」
「厳密には人頭税が無い訳じゃあないんだが…負担感は少ないだろうな」
これはミシェルが提案した住居の賃貸料の一部を税金としているためだ。
不動産商会の売り上げから一定の割合を税として徴収する形なので、他の町に比べて家賃が幾分高いはずだが、それでも人口が伸びているのは”人頭税を排した”というのが大きいと言われている。
町の平民にはタリムには税金が無いと思っている者もいるほどだ。
また一定以上の規模の商家に関しては土地代と別に売り上げによる税金をかけている。
我が家に会計報告を提出することを条件に税率を下げる制度があり、最近できている製造所などはきっちりと報告書を出しており、なかなかの税金を納めてもらっている。
農民からは現金ではなく食料で納めてもらっているので、現金での税の取り立てが無いように見えるのは間違いない。
「ウィルは今のタリムをどう思う?」
「大変活気がありますよ。王都とちがって人々は笑顔が多いです。ガリムよりも活気だけなら上じゃないでしょうかね?」
私もそう思う。
市場の活気はかなりのものだ。
養鶏場にて製造された卵や鶏肉を下ろしている商会や露店の売れ行きはかなり良いと聞く。
平民でも割と気軽に肉が食えるようになってきているため、人口は安定している。
新規にタリムに住みたいという者もまだ来ており、町は発展中だ。
求人に対して住民がまだ少ない為スラム街などは出来ていない。
治安もかなり安定している状態だ。
「レイノルド様、失礼します」
ドアをノックされ入出を許可したのは軍団長のアレックスだった。
金髪碧眼の筋骨隆々の大男だが普段は優しい顔つきなので皆から慕われている。
厳密な所属はガリム伯爵家騎士団第一軍団長となる。
「どうしたアレックス、何かあったのか?」
「このところ北の街道…コーラシル川の向こう側で盗賊の被害が出たと届け出がありました」
「なんだって?」
コーラシル川の向こう側、つまり北側は王家が管理している土地だ。
帝国との国境画定がまだなため、どの貴族が持っている土地でもない。
主要部には王国軍が現在も駐留しており、軍への物資搬入などでタリムの町は中継地として潤っているともいえる。
つまり、軍関係者と軍人に対して商売をするもの達ぐらいしか住んでない土地で盗賊被害があったということになる。
それは王国軍側が何とかすべき仕事ではないだろうか?
「アレックス、流石に川を超えて討伐に行くというのは越権行為にならないか?」
「はい、なると思われます。ガリム領でもありませんから難しい問題です」
「だよなぁ…住民たちに注意喚起をするぐらいしかないと思うが…」
しかし、こんな時期に盗賊か…今年アルミナ王国は特別収穫が悪かったわけではない。
タリムは豊作だったが、他の地もおおむね平年通りの収穫量だったと聞く。
一般的に盗賊というのは不作のときなど管理が行き届いていない村人などが食いつなぐために成ってしまうものだ。
「まずは注意喚起を致します。
タリムの住民が川を渡ることはないと思いますが、商人たちは護衛を欲しがるかもしれませんね」
私は隊長のセリフを聞いてふとと思いつく。
「そこの判断は団長に任せる。護衛ついでに討伐する分には文句も言われないだろう」
そういってニヤリと笑えば、アレックスもいい笑顔を返してくれた。
「えぇそうですね、護衛として守っている商人が攻撃を受けそうならば反撃は仕方がないでしょう」
こうして盗賊討伐計画が練られ実行された。
正規に軍人として鍛え上げられている彼らが統制の取れていない盗賊に負けるはずもなく、王国軍への商品を運ぶ商人たちと共に返送した我が軍20名が難なく盗賊を討伐したと連絡があったのは、計画立案から半月ほどたったころだった。
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