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第101話〜経済最優先の社会〜

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 ボクらは、それぞれの守護神マシンを呼び出し、ニャガルタ国会会議場へと向かう事になった。

 ふふふ、ついにこの時がやってきたんだ。
 そう、ボクもソールさんたちと同じように、守護神マシンを呼び、自在に大空を飛んでみせるんだ。


「守護神、アストライオス!」

「ウチも! 守護神、イーリス!」


 スピカも、この時を楽しみにしていたようだ。

 ——オレンジ色のV字形のウイングを持った戦闘機アストライオスと、白色のM字形のウイングを持った戦闘機イーリスが、雨風の吹き荒ぶ黒い空から飛来した。


「よっし! みんなに続くぞ。プレアデス、お前も乗れ」

「うん、分かった。頼むよ、ゴマくん!」

「スピカ、しっかりついて来いよ!」

「これ、操作難しそうやなあ……」


 アストライオスのコクピットに飛び乗ると、何と勝手に動き出し、離陸した。アストライオスはすぐ前を飛ぶムーンさんの後ろを自動的についていく。——何だ、自力で操作する必要ねえのか。
 嵐をものともしない守護神マシンたちは、ニャンバラの街の上空を飛んでいく。時折、ニャルザル軍と思われる小型飛行機を見かけた。


 ♢


 古めかしいお城のような、ニャガルタ国会会議場。
 みんな着陸し、エントランスに向かう。
 ニャルザル軍の乗り物も駐留されている。


「ぐわあああ! 何とかならねえのかほんと、この嵐‼︎」

「急いで入口に向かいましょう」


 風に煽られながら、ボクらは国会会議場のエントランスに辿り着いた。
 ウィーンと音を立て、ガラス張りの自動ドアが開く。高い天井、いくつも立ち並ぶ白い円柱形の柱。シンとした空間。


「何者だ!」


 左横の壁から、声が聞こえてきた。
 見ると、警備兵のネコがガラス越しに顔を覗かせ、こっちを睨んでいる。
 咄嗟に、ソールさんが答えた。


「星光団だ。国会の様子を、見せて頂きたい」

「……本当はニャガルタ国会の内容は外部には秘密なのだが……。まあ、傍聴するぐらいは認めてやる。但し、内容は外に漏らすな。ヤジを飛ばしたりもするな。後は、国会で決定した事を知って、変な事を企んだりしない事だ。……入れ」


 無愛想に答える警備兵のネコ。
 ——なんだ、ボクらは意見言えねえのかよ。面白くねえな。

 警備兵のネコに案内され、ボクらは赤い絨毯が敷かれた薄暗く長い長い廊下を進み、突き当たりにある重く大きな扉を開いた。
 既に国会は始まっていた。


「経済が1番大事であります。我々は何よりも経済政策を優先させるべきであります。経済再生のためには、消費税を8%から10%にする方針は、変わる事はありません」

「プロキオン総理大臣、ありがとうございます。何か質問や意見のある者?」


 総理大臣とやらと、議員の質問タイムのようだ。
 議席に、ライムさんとグレの姿を発見した。ライムさんは立ち上がり、手を挙げる。


「首都ニャンバラ代表、ライムさん」

「私の政策は、間違っておりました。今後は、ネズミ族の協力を仰ぎ、経済ばかりではなく、心や環境に配慮した新しい政策を実施すべきです。その政策は……」


 ライムさんがそう言った途端、ヤジが飛んでくる。


「帰れ! 帰れ!」

「お前の政策は失敗だったんだ。辞職しろ! ニャガルタから去れ!」


 激しいヤジと同時に、投げ付けられた何かの食べ物がライムさん顔面を直撃し、ライムさんは言葉を止めた。
 ……何て事しやがんだ!


「ライムさん、もう結構です。次はN・ニャルザル・ヘッドHQクォーターズのオレオ様」


 ライムさんは、黙って顔についたクリームを取っている。
 代わって、正面に星形のマークのついた戦闘帽をかぶり、軍服を着こなした背の高いトラネコ、オレオは、ピシッとセットされた何本もの髭をいじりながら発言した。


「ニャンバラとネズミ族に、新時代に相応しい新しい政策を提案する」

「その政策とは?」

「自由、、平等。この3つを、国民全員に最大限に保証する政策だ」


 総理大臣とやらが、手を挙げる。


「……プロキオン総理大臣」

「自由、ニャン権、平等の保証。素晴らしい施策でございます」

「……  N・ニャルザルHQヘッドクォーターズオレオ様」

「同時に、勤労、教育、納税の義務を国民全員に課す事だ。我々ニャルザルでも、この政策を行っている」


 なるほど。国会では、こんなふうに交代で質疑応答が行われるのか。
 また別のネコが立ち上がり、手を挙げた。


「野党ビッグクランチ党、ガーナさん」

「総理、今の災害による国民の命の保証はどうするんですか。それに、経済格差も以前より拡がり、不満の声も日に日に増えてるじゃないですか。まずは、国民の命と安心、安全を最優先し、その上で先に経済格差から是正すべきではないのですか?」


 ガーナは少し声を荒げながら、そう言った。


「プロキオン総理大臣」

「えー……、格差についてですが……。まず富裕層が何故優遇されて然るべきかといいますと……。富裕層はそれだけ世の中に貢献したという事であります。貢献した分の報いを得ている。何も悪い事ではありません。貧困層はもっと、世の中に貢献する努力すれば良い。我々が努力すべきは、そのための機会を平等であるようにする事です。それが社会を活性化し進歩させる原動力となるのであります。経済格差は、決して悪い事ではありません」

「何を言うか!」


 ガーナが席を立ち上がろうとしたが、議事進行係のネコがすぐに止めに入った。


「経済あっての、命と安全であります。我々は経済最優先の政策を進めるべきなのであります」


 総理大臣は冷静に、そう言い切った。一部で拍手が起こっている。
 また別のネコが手を挙げた。


「与党ビッグバン党、ガルボさん」

「総理の仰る通りです。しかし今までは、がむしゃらに働く者が多過ぎました。健康問題も多く、医療費も年々増えております。そこで、 N・ニャルザルHQヘッドクォーターズの提言である週休2日制の導入と働き方の多様化を、是非ご検討願いたい」

「プロキオン総理大臣」

「えー、働き詰めをやめ、国民1匹1匹よりゆとりを、より自由な時間を持つようにするのは良い事であります。貧しい者たちや働く意欲の無い者たちを、挑戦させ努力させるハードルも低くなります。先程も申し上げた通り、チャレンジする機会は、平等であるべきであります。その上で多様な自由な労働機会を提供する。私は N・ニャルザルHQヘッドクォーターズの提言を受け入れる考えであります」


 総理大臣がそう言うと、会議場全体が騒がしくなった。


「自由万歳! 平等万歳!  N・ニャルザルHQヘッドクォーターズ万歳!」


 ライムさんとガーナは、不満そうにその様子を見ていた。
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