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第70話〜星光団、敗北〜
しおりを挟むデネブの変な光線を浴びて——、ボクは転身出来なくなってしまった。
じりじりと迫る、デネブ、リゲル。
後ろでルナが震えながら、しがみついている。
「クソッタレ! それでもやるしかねえ!」
ボクは覚悟を決め、デネブの懐に飛び込もうとした。その時——‼︎
「聖なる星の光よ、我に愛の力を!」
「天光の騎士……ソール!」
「望月の魔導士……ムーン!」
「六華の忍び……マーキュリー!」
鉄の扉が開き、そこにはソールさん、ムーンさん、マーキュリーさん、フォボスさん、そしてポコの姿があった。
「ムーンさん! みんな!」
「ゴマくん! 急いでこっちに来るんだ!」
フォボスさんは、頑丈そうな大きな岩のある足場のしっかりした場所で、手招きして叫ぶ。
ボクはルナを引っ張って、すぐにフォボスさんのところへ走っていった。間一髪、ピンチ脱出だ。
——そうだ! あの事を伝えなければ!
「ムーンさん、気をつけてくれ。デネブの奴め、転身を封じる魔法を使ってきやがったんだ。情けねえが、ボクはもう戦えねえ……」
「分かりました。ゴマとルナにポコは、この岩陰から動かないで下さいね」
ボクとルナとポコが大岩の陰に身を隠したのをムーンさんが確かめると、ソールさん、ムーンさん、マーキュリーさん、フォボスさんは武器を構え、デネブ、リゲルの方へ向かっていった。
「デネブ、リゲル! そこまでだ。覚悟しろ!」
激しい戦いが始まった。
ポコは宙吊りにされているユキを見ると、涙を浮かべながら叫ぶ。
「ユキ! ユキィィィーーーー!」
ユキはポコの声に気づき、応えた。
「ポコ! 来てくれたのね! でももう、私はダメかも……」
「何言ってんだユキ! 諦めるな! 僕だって、……怖かったけど、ここまで来れたんだ!」
ポコは体を震わせながら叫んだ。
ポコ、成長したな……ボクはそう思ってルナの顔を見て少し笑ってみせると、ルナも何かを確信したような顔をして、首を縦に振った。
デネブが発する転身封印光線を素早い身のこなしでかわしながら、デネブとリゲルに詰め寄っていくソールさん、ムーンさん、マーキュリーさん、フォボスさん。
「チィィ! 魔力切れか!」
デネブはそう言い放ち、剣を構えた。どうやら、転身封印光線は出せなくなったようだ。
ソールさんとムーンさん、フォボスさんは、デネブとリゲルと対峙し、マーキュリーさんは、捕まっているメルさんたちを何とか助けようと模索している。
デネブの激しい炎の攻撃を何度もまともに喰らいながらも、みんな何とか反撃をするのに精一杯みてえだ。
「ポコくんっ!」
そんな戦況を見たマーキュリーさんは、何やら小さな銃を、ポコに向けて投げつけてきた。
「ポコくんっ! いざという時は、そのレーザー銃で援護をお願い‼︎」
ポコはすかさずそれを拾い、まじまじと見つめながらつぶやく。
「……ま、まさか僕も戦うの……?」
ポコがガクガクと足を震わせているのが、目に見えて分かる。ユキの方を見ると、ポコのその様子を心配そうな目で見ていた。
ポコはまた、弱々しくつぶやいた。
「怖いよ。自分が死ぬのが……そして仲間が死ぬのも……」
そんなポコを見たマーキュリーさんは、水の忍術でソールさんたちを援護しながら、必死にポコを励ました。
「……や、やっぱりダメなの……? うんん! そんな事ない! 大丈夫っ‼︎ ポコくんは強い! 自分を、信じて‼︎ ……きゃあああああああっ‼︎」
直後、マーキュリーさんはデネブが放った炎の壁に飲み込まれてしまう。
ポコは涙を流しながら、銃を手にした。やっぱり、足が震えている。
ボクはポコの手を、グッと握ってやった。
「ゴマ……?」
「ポコ、お前は強えんだ。ずっとネガティブ発言で怒られてばっかだったマーキュリーさんが、大丈夫だって言ってくれたんだよ。自分を信じろ!」
そう言った時、再び鉄の扉が開く音がした。
「せやで。ウチらは1匹やない。みんなで、力合わせるんや!」
そこには、スピカの姿。
相当な数の敵と戦って来たのだろう、防具が傷だらけだ。
「スピカお前! ヴィーナスさんはどうした? マーズさんを追ってたんじゃなかったのか?」
「あかんねん、見失ってもうた。んで、騒がしい音聞こえたから、もしかしてと思って来てみたら、ここに着いたというわけや。まあ、マーズさんたちも、そのうち来るやろ」
「なるほどな。ボクはいま転身出来なくなっちまって、戦えねえんだ。情けねえザマだ……」
「ならウチが行ったる! 聖なる星の光よ、我に愛の力を! ……暁光の勇者、スピカ‼︎」
スピカは転身、回復して、苦戦しているソールさんたちのもとへと駆けつける。
スピカの姿を確認したデネブは、両腕でソールさん、ムーンさん、フォボスさんを跳ね飛ばした。
「うわあっ!」
「あああーっ!」
「グハッ‼︎」
デネブはスピカの方に歩み寄りながら、ゆっくりと口を開く。
「……ようスピカ。お前、完全に俺たちを裏切ったようだな」
——そう、スピカにとって、元〝ギャラクシー〟の仲間だった、デネブ、リゲル。
しかしスピカは、迷いのない眼でデネブ、リゲルを睨み、言い放った。
「あんたらのやってる事は間違ってるっちゅう事に気づいたんや! デネブ、リゲル! 勝負や‼︎」
スピカは勇者の剣・ニャリバーを構え、デネブ、リゲルに向かっていく。
スピカが2匹を斬りつけようとした時、リゲルは気持ち悪い笑い声を上げた。
「ホーッホッホッホッ。私たちに手を出せば、君たちの仲間の命は無いデスよォー?」
「何やて!」
リゲルは笑いながら、メルさんたちを吊り下げている柱と繋がっている機械を指差した。
「あのボタンを、ポチッと押すだけで、君の仲間たちは、火の海へと真っ逆さまデース‼︎」
リゲルは、ゆっくりと機械の方へ向かっていく。メルさん、ユキは悲痛な声を上げた。
「いやああああ! やめて!」
「助けて、助けてポコ!」
——クソ! どうすればいいんだ……!
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