27 / 143
第26話〜明かされていく真実〜
しおりを挟む何とボクらにもう1匹、姉ちゃんがいただなんて。メルさんたちは3つ子だったのか。
さっきから、びっくりするような事実ばかりが、ムーンさんの口から飛び出してくる。
「え、ライム⁉︎ まさか。あの日、私とじゅじゅ、ライムの3匹で遊びに出かけた時、ライムが迷子になってそれっきりいなくなって……。どこに行ったのかと思ってたら……」
「まさかぁ、地底にいただなんてねえ~」
メルさんもじゅじゅさんも、驚きの表情を隠せないでいる。
「ライムが迷い込んだのは、ネコだけの国、〝地底国ニャガルタ〟でした。そこでライムが取った行動は、何とニャガルタのネコ族とともに力を合わせ、〝首都ニャンバラ〟を築き上げたのです」
「ムーンさん! 何でそんな事まで知ってんだよ⁉︎」
いても立ってもいられず、ボクは口を挟んだ。
「私が留守にしている間……、私の仲間と共に、地底国ニャガルタへと赴き調査をしていたのです。その際、ライムを連れ戻そうと思ったのですが……」
——ムーンさんがずっと帰らなかった理由が、明かされた。何と、あの地底世界に行っていただなんて。
それにしても、一体どうやって地上と地底を行き来してたんだろうか。まさか、ボクとルナが転げ落ちたあの氷の滑り台を、行ったり来たりしてた訳じゃあるまい。ムーンさん、あんた一体何者なんだ……⁉︎
ムーンさんは俯き、言葉を続けた。
「ライムは、メルやじゅじゅより体が弱く色々な事が出来るようになるのに時間がかかりました。それなのに私は、メルやじゅじゅと同じペースで色々な事を出来るようになる事を求め、ついていけないライムを叱り……、今となっては酷い事をしたと思います。なので、合わせる顔もありませんでした」
「……母さん、そうだったよね。私もライムの事笑ったりしてたし……じゅじゅ、覚えてる?」
「わたしは昔の事なんて、覚えてないなあ~」
ボクが生まれる前に、そんな事があっただなんて——。
少し間を置き、ムーンさんは言葉を続ける。
「……現在地底国ニャガルタは、深刻な資源不足に陥り、戦争状態になっています。特にニャルザルとの戦争が激化しています。ところが、地上へ行く事が出来た首都ニャンバラのネコ族の科学者が、偶然私達の住処の近くの森の中に、今私たちがいるネズミ族の国……資源豊かなネズミ族の世界の存在を確認しました。それを知ったニャンバラのネコ族は、……ネズミ族の世界への侵略を、企て始めたのです」
「ねえ母さん、ライムは今どうしてるの?」
「……ライムは、恐らく今は……」
ムーンさんが言おうとした時、ネズミの末っ子のミライが泣きそうな声で言う。
「ねえ、おかあさん、ねむたいよ……」
「ごめんねミライ。もう遅くなっちゃったわねえ……」
ミライに限らず、ネズミのガキどもはみんな眠そうにしてる。難しい話ばっかりだから無理もねえ。
「長くなり申し訳ありません。せめてご家族の代表の方だけでも、最後まで聞いていただけませんでしょうか」
「わかりました。子供たちは、もうお風呂はいって、寝るかい?」
「そうするー。お父さん、また聞かせて。センソウってなに? シンリャクってなに?」
「……ああ、またネコさんたちに聞くといいよ。じゃあお風呂の支度をしよう」
——戦争。少しだけニャンバラで目の当たりにしたが、それはもう惨いものだった。無数の爆弾の雨、一瞬で破壊される建物、炎に包まれる街、逃げ惑うネコたち——。
ネズミの父ちゃんが風呂の支度をすませて戻って来ると、ムーンさんは再び話の続きを始めた。
「私は仲間たちと共に、ニャンバラのネコ族の狙い……ネズミ族の世界への侵攻を阻止すべく、行動を始めました。なのでネズミ族の方々は、私たちを信用して頂いて大丈夫です。……ゴマ、ルナは、一度ニャンバラに迷い込みましたね」
「お、おう」
「うん」
何とムーンさんは、ボクらがニャンバラに迷い込んだ事までも知っていた。一体どこで調べられていたんだろうか。ボクは背筋が少しゾクッとした。
「その後ゴマ、ルナは、ニャンバラ軍のスパイとしてネズミ族の世界の調査のために利用され、このネズミ族の世界へと遣わされたのです。失敗に終わりましたがね」
——やはり、そうだったのか。プレアデスに、プルートのジジイ。ボクらを騙して利用するつもりでいやがったんだ。ボクはムーンさんの調査能力に恐れをなしつつも、心の内にメラメラとニャンバラの奴らへの怒りの炎が燃え上がり始めた。
「……ニャンバラのアホども、絶対に許さねえ。プレアデスの奴もプルートのジジイも、怪しいと思ってたんだ。ルナ、お前ももっと怒れ!」
「怒れって言われても……。ニャンバラのネコさんたち、ネズミの理想郷に移住するとか言ってたけど、まさか軍隊を連れて占領しようとしてたなんてね。僕、怖いよ」
「そういう事です。私はニャンバラ軍に利用されたゴマ、ルナを止めるために急行しました。優しき風の精霊の導きにより、私はメルたち我が家族と共に、こうしてゴマ、ルナと会う事ができました。……ネズミ族の皆さん、ゴマとルナの行いを、どうかお許しいただけますよう……」
ボクもルナも、ムーンさんと一緒に頭をさげた。
「そういう事だったのか……。物騒なマネして悪かった」
「ネズミのみんな、ごめんなさい」
「……顔をあげとくれ。事情はわかりましたよ。それで、ニャンバラのネコ族は、……ここを狙ってやって来るのかの? ずっと続いてた平和が、終わってしまうのかのう……?」
ネズミのじいちゃんは悲しそうな顔で、ムーンさんに尋ねた。ムーンさんは再び頭を上げ、真剣な表情で答える。
「ニャンバラは、軍隊を率いてネズミ族の世界へとやって来ます。結界を通過するトンネル〝ワームホール〟を通って……。そして、我が子のライムが……」
「ライムが……? そうだ母さん、ライムは今どうしてるの?」
ムーンさんは、声のトーンを低めて言った。
「我が子のライムが、そのネズミ族の世界の侵攻計画を動かしている可能性があります」
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
実験施設から抜け出した俺が伝説を超えるまでの革命記! 〜Light Fallen Angels〜
朝日 翔龍
ファンタジー
それはある世界の、今よりずっと未来のこと。いくつもの分岐点が存在し、それによって分岐された世界線、いわゆるパラレルワールド。これは、そ無限と存在するパラレルワールドの中のひとつの物語。
その宇宙に危機を及ぼす脅威や魔族と呼ばれる存在が、何度も世界を消滅させようと襲撃した。そのたびに、最強無血と謳われるレジェンド世代と称されたデ・ロアーの8人集が全てを解決していった。やがては脅威や魔族を封印し、これ以上は世界の危機もないだろうと誰もが信じていた。
しかし、そんな彼らの伝説の幕を閉ざす事件が起き、封印されていたはずの脅威が蘇った。瞬く間に不安が見え隠れする世界。そこは、異世界線へと繋がるゲートが一般的に存在し、異世界人を流れ込ませたり、例の脅威をも出してしまう。
そんな世界の日本で、実験体としてとある施設にいた主人公ドンボ。ある日、施設から神の力を人工的に得られる薬を盗んだ上で脱走に成功し、外の世界へと飛び出した。
そして街中に出た彼は恐怖と寂しさを覆い隠すために不良となり、その日凌ぎの生き方をしていた。
そんな日々を過ごしていたら、世界から脅威を封印したファイター企業、“デ・ロアー”に属すると自称する男、フラットの強引な手段で険しい旅をすることに。
狭い視野となんの知識もないドンボは、道中でフラットに教えられた生きる意味を活かし、この世界から再び脅威を取り除くことができるのであろうか。
ファンタジーは知らないけれど、何やら規格外みたいです 神から貰ったお詫びギフトは、無限に進化するチートスキルでした
渡琉兎
ファンタジー
『第3回次世代ファンタジーカップ』にて【優秀賞】を受賞!
2024/02/21(水)1巻発売!
2024/07/22(月)2巻発売!
応援してくださった皆様、誠にありがとうございます!!
刊行情報が出たことに合わせて02/01にて改題しました!
旧題『ファンタジーを知らないおじさんの異世界スローライフ ~見た目は子供で中身は三十路のギルド専属鑑定士は、何やら規格外みたいです~』
=====
車に轢かれて死んでしまった佐鳥冬夜は、自分の死が女神の手違いだと知り涙する。
そんな女神からの提案で異世界へ転生することになったのだが、冬夜はファンタジー世界について全く知識を持たないおじさんだった。
女神から与えられるスキルも遠慮して鑑定スキルの上位ではなく、下位の鑑定眼を選択してしまう始末。
それでも冬夜は与えられた二度目の人生を、自分なりに生きていこうと転生先の世界――スフィアイズで自由を謳歌する。
※05/12(金)21:00更新時にHOTランキング1位達成!ありがとうございます!
田舎町のモルモット召喚士になる前に
モルモット
ファンタジー
農民には二つのスキルがある。父と母の家系のどちらのスキルを継承したのかで夫婦喧嘩を始めた両親は俺をギルドへ連れて行った。
でも 鑑定結果はなんと「召喚士」
田舎の街で 初めての「召喚士」
15歳(大人)になるまでに恋もしますし色々な事が起こります。
滅びる異世界に転生したけど、幼女は楽しく旅をする!
白夢
ファンタジー
何もしないでいいから、世界の終わりを見届けてほしい。
そう言われて、異世界に転生することになった。
でも、どうせ転生したなら、この異世界が滅びる前に観光しよう。
どうせ滅びる世界なら、思いっきり楽しもう。
だからわたしは旅に出た。
これは一人の幼女と小さな幻獣の、
世界なんて救わないつもりの放浪記。
〜〜〜
ご訪問ありがとうございます。
可愛い女の子が頼れる相棒と美しい世界で旅をする、幸せなファンタジーを目指しました。
ファンタジー小説大賞エントリー作品です。気に入っていただけましたら、ぜひご投票をお願いします。
お気に入り、ご感想、応援などいただければ、とても喜びます。よろしくお願いします!
23/01/08 表紙画像を変更しました
女神の代わりに異世界漫遊 ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~
大福にゃここ
ファンタジー
目の前に、女神を名乗る女性が立っていた。
麗しい彼女の願いは「自分の代わりに世界を見て欲しい」それだけ。
使命も何もなく、ただ、その世界で楽しく生きていくだけでいいらしい。
厳しい異世界で生き抜く為のスキルも色々と貰い、食いしん坊だけど優しくて可愛い従魔も一緒!
忙しくて自由のない女神の代わりに、異世界を楽しんでこよう♪
13話目くらいから話が動きますので、気長にお付き合いください!
最初はとっつきにくいかもしれませんが、どうか続きを読んでみてくださいね^^
※お気に入り登録や感想がとても励みになっています。 ありがとうございます!
(なかなかお返事書けなくてごめんなさい)
※小説家になろう様にも投稿しています
乙女ゲームの悪役令嬢に転生したけど何もしなかったらヒロインがイジメを自演し始めたのでお望み通りにしてあげました。魔法で(°∀°)
ラララキヲ
ファンタジー
乙女ゲームのラスボスになって死ぬ悪役令嬢に転生したけれど、中身が転生者な時点で既に乙女ゲームは破綻していると思うの。だからわたくしはわたくしのままに生きるわ。
……それなのにヒロインさんがイジメを自演し始めた。ゲームのストーリーを展開したいと言う事はヒロインさんはわたくしが死ぬ事をお望みね?なら、わたくしも戦いますわ。
でも、わたくしも暇じゃないので魔法でね。
ヒロイン「私はホラー映画の主人公か?!」
『見えない何か』に襲われるヒロインは────
※作中『イジメ』という表現が出てきますがこの作品はイジメを肯定するものではありません※
※作中、『イジメ』は、していません。生死をかけた戦いです※
◇テンプレ乙女ゲーム舞台転生。
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げてます。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる