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嘘吐き

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 甘い匂いに、唾を飲み込む音が聞こえてくる。
「いりませんか??美味しいのにね!」
「こんなに甘いのに!」
 アルと2人で試食用のフルーツをパクパク食べる。

「あーぁ、最後の一個だ~。要らないのかなぁ?」

「ま、待て!!さっきの鬼はどーした?」
「こんにちは。さっきのオーガは私の仲間です。怖がられたので離れた所で待ってもらってます。」
「い、いないんだな?」
「はい。」

 ドアの隙間から手を伸ばして最後の試食用の桃を取ってパタンと戸を閉めてしまった。

 でも、すぐに家の中から大絶叫が聞こえてくる。
「ぅ、うまーーーーーーーーーい!!!!」

 バタンと戸を開け放ってエルフの男の人が飛び出してきた。
「もぅ一口!もぅ一口食べさせてくれ!」
「いいですけど、話しを聞いてくれますか?」
「聞く!必ず聞く!!」
「では、ここの代表の方は?」
「俺だ!」
「そうですか。では、話しを…」
「それより早くくれ!!」
 話しを遮って桃を要求してきた。

 仕方なくアルと2人で桃の皮を剥いて、渡す。
 家の中から奥さんと娘さんらしき2人の女のエルフも出てきて、奪い合うように食べる。

 その様子を羨ましそうにあちこちの家から顔を出して見ている。
 アルも気付いて、蜜柑の皮を剥いて渡そうとすると代表だと言ったエルフが怒鳴る。
「おい!何をしている!!そいつらには必要ない!全て俺に渡せ!!」
「嫌だ。」
「はっ?俺に逆らうのか?」
「はっ?なぜ従わなければならない?」
「くっ!!こいつ!!俺を怒らせるとどうなるか理解できるように教えてやる!いいかよく聞け!ここに水が湧くのは俺の力だ!俺が水を出しているんだ!この水を止めてしまうぞ!!」
「へぇー、止められるならしてみるがいい!」
「なっ!!水がないと生きていけない事も知らんのか!!」
「知っている。だが、この陽菜の方が沢山の水を出せるぞ!しかも何処にでもだ!」
「そ、そんな事が出来るはずないだろう!!」
「出来ますよ。」

「ほら!」
 自分の立ってる場所に水道を出して、ホースを繋いで水を撒く。

「…………えっ?」
「ほら、できるだろう!お前もここに水を出してみろ!」
「………わかった、見てろ!」
 指先からバケツ半分くらいの水が出たが、こっちのホースからはまだまだ水が沢山出ている。
「それだけか?」
「おおおお俺は、この水を出しているから今は出ないだけだ!」
「なら、その水を止めて出したらいいだろう!」
「そっ、そんな事をしたら、ここの人達が困る事になる。」
「大丈夫ですよ。私が水を増やしますから、どうぞ止めて見せてください。」
「そそそそそそんな簡単な事ではない!!」
「ほぅ、ならどれだけ待てばいい?」
「うううるさい!何故お前に見せなきゃならない!!」
「いや、先に見せると言ったのはそっちだろう。」
「うるさいうるさい!!」
 
 家から出てエルフ達が集まってくる。ざわざわしている。

「おい、もしかしてチール、私達を騙していたのか?」
「水を止められたくなかったら従えと言ってたが、止められないんじゃないか?」
「そーよ、私達皆んな騙されてたんだわ!」
「なんて卑怯な奴だ!!」
 皆んなが怒り始めた。
「ちっ、違う!本当だ!!俺に逆らうと水が無くなるぞ!俺の力で畑の物も増えただろう!!それも俺の魔力で増やしたんだ!!全て俺の力だ!!」
「じゃあ、今もう一度増やして見せてくれ!!あの一回だけしか作物が増えたのを見ていない!」
「そ、それは…………そーだ!今魔力を使ったから、しばらくは無理だ!」
「なら、ここに水を出し続けるのも無理なんじゃないのか?」
「……………くっ!余計な事を!!」

「私が出して見せますよ。ほら、どーぞ。」
 トマトの実がついている苗を出した。
 皆んな、おぉーー!と拍手してくれる。

「皆さん、私と一緒に来ませんか?家も水もありますよ。」

「行く!!」
「頼む、連れていってくれ!!」

 バスを出してワーガに運転してもらう。怖がっていたが、ワーガと私が仲間だと知って、信じてくれるようだ。

 湧き水の川沿いに20分ほど進んだ所に家を出していく。もちろん果物は皆んなバスに積んで持ってきている。
 アルもバスを運転してくれているが、ワーガにもう一度戻って迎えに行ってもらった。
 
 ナナガに連絡して、ルイ君もゆきちゃんも一緒にここに来てもらい、手伝ってもらう。
 温泉も出したし、着替えや布団などどんどん出して行く。
 ナナガやルイ君、ワーガが使い方やお風呂の入り方などを教えてくれている。
 一通り出せたので、公民館を出して、私とアルとでチールと呼ばれていたエルフの所に戻った。

「おや、まだ水を止めていなかったのか?」
「くっ!!お前らのせいで!!!」
 奥さんや娘さんも出て行ったようだ。

「さぁ、チールさんでしたっけ?あなたはどうしますか?」
「おおおお俺は、1人でも快適に暮らせる。後から戻りたいと言って来ても許さないからな!!」
「わかりました。アル、行こう!」
「そーだな。美味しい晩御飯を作って皆んなで食おう!」
「そーだね。何が良いかなぁ??」

 何か言いたそうにしていたが、何も言えないようだ。

 皆んなの所に戻ると、ナナガがフルーツの切り方などを教えてくれていて、私も沢山ご馳走を出してお酒も出して、大宴会をする事にした。


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