上 下
98 / 185

出発

しおりを挟む
 出発する時が来た。今回はオーガの里のトンネル村とは反対側の山から越えてみる事になっている。
 ハルー村から出発して順番に合流して行く事になった。
 私、ワーガ、ナナガで車に乗る。自衛隊の車にして、荷物も山の様に積んである。
 ルイ君とダンドンさんでもう一台に乗る。

 私は荷台に乗せてもらい、ひたすら物資を出し続けていた。
 病院村で降ろし、レッド村で降ろしを繰り返していく。運ぶのはその村の人達に任せてある。
 次にいつ来れるか分からないから、腐る物以外は沢山出しておいた。
 1日かけてオーガの里まで行く。

 それぞれ車に荷物が山積みだ。8台の車が連なって走る。

 山裾に到着。今夜はここで休む事にした。
 3階建てのシェアハウスを出して、必要な物を出していく。
 その間に、ハゼドンがご飯を作ってくれている。それぞれ部屋を決めて布団を運んだり、明日の着替えなどを準備したりする。
 初日から疲れるわけにはいかないから、早めに休む事になった。

 朝起きると、ハゼドンが朝ごはんの準備をしてくれていた。
 やっぱりハゼドンは良い男だ!こんなに気がきくのに、なぜモテないのだろうか……。

 ルイ君に頼んでドローンで山の少ない場所を探してもらったが、この近くは山を越えても海になっているようだ。
 山裾に沿って進んで行く事にした。

 グリーン村辺りであろう場所で、ドローンで確認すると山を越えると砂浜が見えた。
 一応トンネルで繋いでみる事にして、ワーガに背負ってもらい山を2つ越えてトンネルを出した。
 もちろん道路も出してある。

 今度は砂浜の方の山に沿って進む事にした。

 ブルー村辺りまで走ると、砂浜は見えなくなり、それなりに広い土地になった。
 今日はここに一泊する事に決めて、シェアハウスや必要な物を出して後を任せて、ルイ君とワーガと一緒に外でドローンを使って確認する。
 まずは海の方を見てみると、海の近くに家の様な物が見える。
 山の方の確認は後にして、海まで行ってみる事にした。

 道路を出しながらルイ君の言う方向に進む。
 2時間ほどかかって家の様な物が見えてきた。
 
 近づくと急いで家の中に入って隠れている。
 
「あの、すみません!!食べ物を持って来たのですが要りませんか?」
 声をかけてみた。
「…………………ほ、本当?」
「はい。本当です。私は人間です。安心してください。」
「……え、人間?」
「はい。人間です。」
 そーっと戸の隙間から覗いてから、戸を開けてくれた。
 獣人族だった。猫の獣人族のようで耳が可愛い。

「こんにちは。私は陽菜です。こっちがルイ君で、こっちがオーガのワーガ。」
「お、オーガ……!!食べられるーーー!!!」
「オーガは獣人族も人間も食べない!」
 ワーガがムッとして言った。
「オーガって、優しいですよ。力は強いけど乱暴な事はしないから大丈夫。」
「本当??」
「あぁ本当だ!!」
「そっ、そっかぁ。」
「一緒にご飯食べない?」
 弁当箱に詰めてあったおにぎりを出して見せると、小さな小屋のような家から5人の小さな子ども達が出てきた。
「ごはん??」
「おいちぃ??」
「食べる~!」
「お腹すいた。」
「ちょーだい!」
 皆んな5歳くらいだろうか。最初に出てきてくれたのも中学生くらいの女の子だった。
 ピクニックシートを敷いて、取り皿におにぎりと卵焼きとウインナーを乗せて渡す。
 ルイ君やワーガも食べてみせてくれる。
 ハゼドン特製の小ぶりのおにぎりと、卵焼きだ。味は最高!!朝沢山作ってくれていた。ナナガはウインナーを焼いてくれていた。
 誰か居た時の為に弁当箱へ詰めて持たせてくれたものだ。

 コップにお茶を入れて配ったり、上手く食べられない子を食べさせたりしながら、私もお昼にした。

 ひたすら夢中で食べている。かなりお腹が減っていたようだ。
 
 食べていると他の家からも、獣人族の子ども達が出てきた。
 テーブルを出して、お茶やおにぎりを渡すと、ガツガツと食べ始める。
 10軒ほどの家から子どもだけが出てきた。
 足りない分は、果物を切って出した。皆んな夢中で食べている。
 最初に出てきた子に話しを聞いてみる。
「子どもだけで住んでるの?」
「うん。大人はいない。お父さんやお母さん達は皆んな連れて行かれた。」
「誰に連れて行かれたの?」
「うーん、よくわからないけどドワーフ?だと思う。子どもは邪魔だからって置いていった。」
「そーなんだ。ねぇ、一緒に私達と暮らさない?食べ物も沢山あるよ。」
「え!いいの!!…あっ、でもお母さん達帰ってくるかもしれないから……。」
「お姉ちゃん、もぅ帰って来ないよ。だって、お母さんが早く遠くに逃げなさいって言ってたもん。また、捕まえに来るって!」
「そーだよ。僕も父さんがここにいちゃダメだって言ってた。」
「で、でも……。もしかしたら……。」
「もぅ諦めよう。俺達だけじゃ限界だ!この人達と一緒に行こう。こいつらにも毎日、腹一杯食わしてやりたい。」
「………でも……。そーだね………この子達の事考えたら………もぅ私達だけじゃ無理だよね……。」
「おぅ!だから信じて一緒に行ってみようぜ!」
「……うん。お姉さん、一緒に連れて行ってください。お願いします!!」
「分かった。一緒に行こう!」

 バスを出してルイ君に運転してもらった。座席にはカバーをかける事にした。カバーを外して洗うだけで掃除が終わる事に気づいた。
 たまたま検索して見つけたんだけど、毎回毎回なぜ早く思いつかないんだろう……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ドン引きするくらいエッチなわたしに年下の彼ができました

中七七三
恋愛
わたしっておかしいの? 小さいころからエッチなことが大好きだった。 そして、小学校のときに起こしてしまった事件。 「アナタ! 女の子なのになにしてるの!」 その母親の言葉が大人になっても頭から離れない。 エッチじゃいけないの? でも、エッチは大好きなのに。 それでも…… わたしは、男の人と付き合えない―― だって、男の人がドン引きするぐらい エッチだったから。 嫌われるのが怖いから。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

【完結】存在を消された『名無し』の私は、姫である双子の姉の代わりに隣国の狼王に嫁ぐことになりました。

蜜柑
恋愛
ルピア王国では双子は不吉な存在とされていた。姫リーゼロッテの双子の妹として生まれた少女は、名前を与えられず、存在を消され城の片隅で”口無し”と呼ばれながら下働きをしていた。一方、隣国テネス王国では、奴隷として扱われていた獣人族が反乱を起こし、王国を乗っ取った。その反乱王の狼族の王は、友好の証としてリーゼロッテを妻とするようにルピア王国に求めた。野蛮と噂される彼に嫁がせたくない国王は、「いない存在」である双子の妹を代わりに差し出すことにした。代わりに嫁いだ彼女は「リズ」と呼ばれ、隣国で生活するうちに本来の自分を取り戻していく。

【R18】幼馴染の魔王と勇者が、当然のようにいちゃいちゃして幸せになる話

みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。 ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで

二人静

幻夜
BL
    せつなめ三角関係 “ 死がふたりを分かつまで ” 互いを唯一無二に必要とする焔のような愛を垣間みたい方いらっしゃいませ・・・ あわせて歴史(曲解)創作の長編BLですが 事前知識なしで もちろんだいじょぶです 必要なときはその時々で補足をいれてまいります そして武闘集団『新選組』の面々なだけに 受けも攻めも男前です 江戸時代の(現代ではまだまだ足りない)男色にたいする積極的な価値観、 こと武家社会においては男色こそ自由恋愛の場であったことに触発された、 新選組の男前達をこよなく愛する作者による、偏愛に満ちあふれた“創作” ですので、 彼らの関係性は史実とは一切無関係でございます。その点を何卒お留め置きくださいませ。 同僚 × 同僚 (メインCP 沖田×斎藤) ☆親友未満はじまり  食えない男の代名詞みたいな攻めに、   はじめはひたすら振り回される受け(でも強気・・) &  年下 × 兄貴分/上司 (沖田×土方) ☆恋仲はじまり   弟分にベタ惚れでちょっとむくわれない健気な受け 戯れてることも多いですが、いちおう、きほん切なめシリアスベースです ※いずれR18展開になるため、はじめから指定してあります        ********************** 本小説での紹介事項 新選組・・・江戸時代幕末期の京都で活躍した、幕府側最強の剣客集団。       例外はあるものの、『局を脱するを許さず』が法度。       『士道に背きまじきこと』『違反した者は切腹』が大前提の、鉄の掟をもつ。 沖田総司・・・新選組一番隊組長(23) 当時は火の見櫓状態な五尺九寸(約一七八) 色黒で眼光鋭く肩の張り上がった筋骨型 斎藤一・・・新選組三番隊組長(21) 整って映える長身の五尺七寸(約一七三) やや色白ですらりとした肉体美の涼やかな美丈夫 土方歳三・・・新選組副長(30) 美しく均等のとれた背丈の五尺五寸(約一六七) 色白で役者のように優美な美男子 ※斎藤一に関しては実際には五番隊組長とされますが  ここでは通説となっている西村兼文の始末記に沿っています。 **********************

今更愛を告げられましても契約結婚は終わりでしょう?

SKYTRICK
BL
冷酷無慈悲な戦争狂α×虐げられてきたΩ令息 ユリアン・マルトリッツ(18)は男爵の父に命じられ、国で最も恐れられる冷酷無慈悲な軍人、ロドリック・エデル公爵(27)と結婚することになる。若く偉大な軍人のロドリック公爵にこれまで貴族たちが結婚を申し入れなかったのは、彼に関する噂にあった。ロドリックの顔は醜悪で性癖も異常、逆らえばすぐに殺されてしまう…。 そんなロドリックが結婚を申し入れたのがユリアン・マルトリッツだった。 しかしユリアンもまた、魔性の遊び人として名高い。 それは弟のアルノーの影響で、よなよな男達を誑かす弟の汚名を着せられた兄のユリアンは、父の命令により着の身着のままで公爵邸にやってくる。 そこでロドリックに突きつけられたのは、《契約結婚》の条件だった。 一、契約期間は二年。 二、互いの生活には干渉しない——…… 『俺たちの間に愛は必要ない』 ロドリックの冷たい言葉にも、ユリアンは歓喜せざるを得なかった。 なぜなら結婚の条件は、ユリアンの夢を叶えるものだったからだ。 ☆感想、ブクマなどとても励みになります!

もしも○○だったら~らぶえっちシリーズ

中村 心響
恋愛
もしもシリーズと題しまして、オリジナル作品の二次創作。ファンサービスで書いた"もしも、あのキャラとこのキャラがこうだったら~"など、本編では有り得ない夢の妄想短編ストーリーの総集編となっております。 ※ 作品 「男装バレてイケメンに~」 「灼熱の砂丘」 「イケメンはずんどうぽっちゃり…」 こちらの作品を先にお読みください。 各、作品のファン様へ。 こちらの作品は、ノリと悪ふざけで作者が書き散らした、らぶえっちだらけの物語りとなっております。 故に、本作品のイメージが崩れた!とか。 あのキャラにこんなことさせないで!とか。 その他諸々の苦情は一切受け付けておりません。(。ᵕᴗᵕ。)

妖しさんたちは無駄に美形揃いでした。

来栖もよもよ&来栖もよりーぬ
恋愛
料理のセンスは0だが美味しいモノを食べるのが大好きなOL、神崎菜乃葉(かんざきなのは)(27)。 恋人に振られた原因が「感情のドライさ」というほど無表情なタイプだが、表情筋が死にかけているだけで人並みな感情はある。だが、確かに物事に余り動じないタイプではあった。 菜乃葉はランチで麻婆豆腐を食べようと中華料理屋に入った途端に躓いて異世界へ。 その国の王である十尾狐の常盤(ときわ)が、「もう扉が閉まったため来年の異界開きまで待て」と言うので諦めてひとまずお世話になる事になるが、いつの間にか隣の国との揉め事に巻き込まれていく。 長生きし過ぎて恋愛感情を忘れかけてる王と、真面目で無表情なクールビューティーがくっつくまでのお話。

処理中です...