上 下
59 / 185

襲撃

しおりを挟む
 次の日、私は帰る事にする。ワーガが一緒に帰ると言いだし、断ると大泣きして大変だった。
 仕方なく連れて帰る事にする。連れて帰るけど、約束を守ってもらう。私の夜の護衛はいらないし、指定された家で寝る事、仕事を頑張る事。この二つが守れないなら置いていくと言うと、必ず守ると泣きながら縋り付くので仕方ない。

 ルイ君も一緒に帰る。お父さんを毎回1人にしたままだ。ルイ君のお父さんは、野菜作りの名人と言っていいほど上手に作ってくれる。同じ苗なのに他の人とは一回りも大きな野菜が採れる。緑の手の持ち主なんだろうなぁ。植物に愛されているから村の畑から離れられない。
 ワンボックスカーを出してルイ君運転で帰る。
 途中、お昼ご飯を食べたりして、午後1時頃にはハルー村が見えてきた。

 いつもなら村に入ったら仕事中の人が手を振ってくれたりするのだが誰もいない。

 ワーガが、走って見てくるからここで待つように言ってくれる。何かあったのならエンジン音で気付かれたりして不利になったら困る。
 止まってルイ君と待っていたら15分ほどで帰ってきた。

「大変だ!村の人達が食堂に集められていて、沢山のオーガが食堂を取り囲んでいた。」
「えっ?オーガが?ワーガ達の仲間じゃないの?」
「違う。オーガはあまり大きな集団を作らないからあちこちに里があるんだ。それにしても、すごい数のオーガだった。」
「どうしよう……。ワーガ、話し合いが出来そうだった?」
「多分、無理だろう。」
 
 とりあえず、食堂まで行ってみる事にする。
 近くに車を止めて、様子を見る。特に武器を持ったりはしてないけど、オーガの力はすごいから素手でも勝ち目はない。
 ワーガが、話してみると出て行く。

「おい、この村は陽菜様の物だぞ!何をしている?」
「なんだ、お前は?俺達がここを見つけたんだ。」
「俺は、ワーガ。海の近くの里だ。お前達のリーダーと話しがしたい!」
「お前は、この村のリーダーか?」
「違う!この村のリーダーは陽菜様だ!人間だが素晴らしい方だ。この村の人達を大切にしている。今すぐここから出て行ってほしい!」
「ふざけた事を!人間がドワーフやエルフやオーガのリーダーになれるはずないだろう!」
「本当だ!俺達も最近陽菜様によくしてもらって新しい住処を手に入れた。だから、お前達のリーダーと話しをさせてくれ!話せば理解できるはずだ!」
 大声でギャーギャー言い合っていると、大きなオーガが出てくる。
「うるさい!何を騒いでいる!!」
「こいつが、リーダーと話しをさせろと言うんです。」
「俺は海の近くの里のワーガだ。ここは陽菜様の大切な村だ。何をしているんだ?」
「ほー、お前も陽菜と言う人間を知っているんだな?ここに集めた奴らが言っていた名前だ。」
「そうだ。この村を作ったのも、ドワーフやエルフと一緒に暮らす事を決めたのも全て陽菜様だ!」
「そうか。俺達は腹が減っている。だが、ここの奴らは陽菜とか言う人間が帰って来ないと食料を渡せないと言い張る。こんなに沢山の畑があるのに分けられないと言うんだ。」

 なるほど~。持ち出せる分は皆んなオーガの里に持って行ったから、あまり余裕がない。仕方なく出ていく事にした。

「こんにちは。私が陽菜です。あなたのお名前は?」
「おぉ、本当に人間の女じゃないか!俺はここから見える山の中にある5つの里を束ねるリーダーをしているドーガだ。」
「ドーガさんですね。食べ物を渡せば帰ってもらえますか?」
「ふははは、食い物は欲しかったが、ここには畑がある。家もある。俺達の奴隷になるならここに置いてやってもいいが……。嫌なら全て置いて出て行け!!」
 ……ふぅー。またか!!なんで人間を馬鹿にして偉そうにするんだろう。
 私のキレそうな気配を察知して、ワーガが目を輝かせている。

「私の大切な村を奪う気ですか?本当に後悔しませんか?」
「ふははははは!!お前みたいな非力な人間1人に何が出来る??お前のような奴は大人しく従っていればいいんだ!」
 こっちに向かって手を振り上げ、殴ろうとする。ワーガが助けようと足を踏み出したのが見えた。

 プチン!どうやらオーガという生き物は、私を怒らせる天才のようだ。
 まずは催涙スプレーを噴射!そのままスタンガンを出してドーガの首に当てた。
 バタンっと土煙りをあげてドーガが倒れた。
 その上に、馬乗りになって結束バンドで手足を縛る!
 仲間達が助けようとするが、それより早く爆竹に火をつけて放り投げる。
 バンバンとすごい音が響いている。
 その音で目を覚ましたドーガが
暴れようとするので、チューブのワサビを口の中に突っ込んでギューーーと口いっぱいに絞る。
「んんんーーーぁんーわーーー!」
 声にならない悲鳴をあげて涙を流するドーガを見て、仲間も動けなくなる。
「さぁ、あなた達のリーダーを助けたかったら、今すぐ村の人達を外に出して!!」
「うっ、でも……。リーダー!!」
「ぅーーーんーー、ゲホッゴホッ!か、開放……し、してやれ!」
「わ、わかりました!おいっ!早く!!」

 しばらくして、村の皆んなが外に出てきた。皆んな元気そうだ。良かったぁ~。
 最後に出てきたダイルさんの顔が腫れあがっている。ダイルさんを連れているオーガが気まずそうな顔をしている。
「すまない!陽菜!どうする事も出来なくて……。せめてもと思って抵抗したら殴られた。」

 プッツン…………。

「私の、私の、私の、大切な仲間に何してくれてんのよ!!!絶対許さない!!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ドン引きするくらいエッチなわたしに年下の彼ができました

中七七三
恋愛
わたしっておかしいの? 小さいころからエッチなことが大好きだった。 そして、小学校のときに起こしてしまった事件。 「アナタ! 女の子なのになにしてるの!」 その母親の言葉が大人になっても頭から離れない。 エッチじゃいけないの? でも、エッチは大好きなのに。 それでも…… わたしは、男の人と付き合えない―― だって、男の人がドン引きするぐらい エッチだったから。 嫌われるのが怖いから。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

【完結】存在を消された『名無し』の私は、姫である双子の姉の代わりに隣国の狼王に嫁ぐことになりました。

蜜柑
恋愛
ルピア王国では双子は不吉な存在とされていた。姫リーゼロッテの双子の妹として生まれた少女は、名前を与えられず、存在を消され城の片隅で”口無し”と呼ばれながら下働きをしていた。一方、隣国テネス王国では、奴隷として扱われていた獣人族が反乱を起こし、王国を乗っ取った。その反乱王の狼族の王は、友好の証としてリーゼロッテを妻とするようにルピア王国に求めた。野蛮と噂される彼に嫁がせたくない国王は、「いない存在」である双子の妹を代わりに差し出すことにした。代わりに嫁いだ彼女は「リズ」と呼ばれ、隣国で生活するうちに本来の自分を取り戻していく。

【R18】幼馴染の魔王と勇者が、当然のようにいちゃいちゃして幸せになる話

みやび
恋愛
タイトル通りのエロ小説です。 ほかのエロ小説は「タイトル通りのエロ小説シリーズ」まで

二人静

幻夜
BL
    せつなめ三角関係 “ 死がふたりを分かつまで ” 互いを唯一無二に必要とする焔のような愛を垣間みたい方いらっしゃいませ・・・ あわせて歴史(曲解)創作の長編BLですが 事前知識なしで もちろんだいじょぶです 必要なときはその時々で補足をいれてまいります そして武闘集団『新選組』の面々なだけに 受けも攻めも男前です 江戸時代の(現代ではまだまだ足りない)男色にたいする積極的な価値観、 こと武家社会においては男色こそ自由恋愛の場であったことに触発された、 新選組の男前達をこよなく愛する作者による、偏愛に満ちあふれた“創作” ですので、 彼らの関係性は史実とは一切無関係でございます。その点を何卒お留め置きくださいませ。 同僚 × 同僚 (メインCP 沖田×斎藤) ☆親友未満はじまり  食えない男の代名詞みたいな攻めに、   はじめはひたすら振り回される受け(でも強気・・) &  年下 × 兄貴分/上司 (沖田×土方) ☆恋仲はじまり   弟分にベタ惚れでちょっとむくわれない健気な受け 戯れてることも多いですが、いちおう、きほん切なめシリアスベースです ※いずれR18展開になるため、はじめから指定してあります        ********************** 本小説での紹介事項 新選組・・・江戸時代幕末期の京都で活躍した、幕府側最強の剣客集団。       例外はあるものの、『局を脱するを許さず』が法度。       『士道に背きまじきこと』『違反した者は切腹』が大前提の、鉄の掟をもつ。 沖田総司・・・新選組一番隊組長(23) 当時は火の見櫓状態な五尺九寸(約一七八) 色黒で眼光鋭く肩の張り上がった筋骨型 斎藤一・・・新選組三番隊組長(21) 整って映える長身の五尺七寸(約一七三) やや色白ですらりとした肉体美の涼やかな美丈夫 土方歳三・・・新選組副長(30) 美しく均等のとれた背丈の五尺五寸(約一六七) 色白で役者のように優美な美男子 ※斎藤一に関しては実際には五番隊組長とされますが  ここでは通説となっている西村兼文の始末記に沿っています。 **********************

今更愛を告げられましても契約結婚は終わりでしょう?

SKYTRICK
BL
冷酷無慈悲な戦争狂α×虐げられてきたΩ令息 ユリアン・マルトリッツ(18)は男爵の父に命じられ、国で最も恐れられる冷酷無慈悲な軍人、ロドリック・エデル公爵(27)と結婚することになる。若く偉大な軍人のロドリック公爵にこれまで貴族たちが結婚を申し入れなかったのは、彼に関する噂にあった。ロドリックの顔は醜悪で性癖も異常、逆らえばすぐに殺されてしまう…。 そんなロドリックが結婚を申し入れたのがユリアン・マルトリッツだった。 しかしユリアンもまた、魔性の遊び人として名高い。 それは弟のアルノーの影響で、よなよな男達を誑かす弟の汚名を着せられた兄のユリアンは、父の命令により着の身着のままで公爵邸にやってくる。 そこでロドリックに突きつけられたのは、《契約結婚》の条件だった。 一、契約期間は二年。 二、互いの生活には干渉しない——…… 『俺たちの間に愛は必要ない』 ロドリックの冷たい言葉にも、ユリアンは歓喜せざるを得なかった。 なぜなら結婚の条件は、ユリアンの夢を叶えるものだったからだ。 ☆感想、ブクマなどとても励みになります!

もしも○○だったら~らぶえっちシリーズ

中村 心響
恋愛
もしもシリーズと題しまして、オリジナル作品の二次創作。ファンサービスで書いた"もしも、あのキャラとこのキャラがこうだったら~"など、本編では有り得ない夢の妄想短編ストーリーの総集編となっております。 ※ 作品 「男装バレてイケメンに~」 「灼熱の砂丘」 「イケメンはずんどうぽっちゃり…」 こちらの作品を先にお読みください。 各、作品のファン様へ。 こちらの作品は、ノリと悪ふざけで作者が書き散らした、らぶえっちだらけの物語りとなっております。 故に、本作品のイメージが崩れた!とか。 あのキャラにこんなことさせないで!とか。 その他諸々の苦情は一切受け付けておりません。(。ᵕᴗᵕ。)

妖しさんたちは無駄に美形揃いでした。

来栖もよもよ&来栖もよりーぬ
恋愛
料理のセンスは0だが美味しいモノを食べるのが大好きなOL、神崎菜乃葉(かんざきなのは)(27)。 恋人に振られた原因が「感情のドライさ」というほど無表情なタイプだが、表情筋が死にかけているだけで人並みな感情はある。だが、確かに物事に余り動じないタイプではあった。 菜乃葉はランチで麻婆豆腐を食べようと中華料理屋に入った途端に躓いて異世界へ。 その国の王である十尾狐の常盤(ときわ)が、「もう扉が閉まったため来年の異界開きまで待て」と言うので諦めてひとまずお世話になる事になるが、いつの間にか隣の国との揉め事に巻き込まれていく。 長生きし過ぎて恋愛感情を忘れかけてる王と、真面目で無表情なクールビューティーがくっつくまでのお話。

処理中です...