山神様への嫁入り

みーか

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52 風香

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 つゆ子からも蜘蛛を通して妊娠したと報告があった。
 その頃には、桃は男の子の双子を産んでいて、クロモは名前を付けるのに苦労した。

「うーーん、とりあえず男の子の双子だから……そうだ!九太と十太でどうだ?9番目と10番目だからな!」
「えー、九太はまだいいけど、十太って!せめて読み方を、とうたにしようよ。」
「そうだな。よし、『九太』と『十太』だ!」
 
 小梅達も、小春が普通より早く育ち1人でお座りができるようになって村に帰って行った。その頃には小梅も2人目妊娠。

 村では源の家の事が噂となり、村に移した祠に毎日村人達はお参りに行き、家の神棚には木彫りの蜘蛛が祀られ、クロモの神力がどんどん増えて行く。
 その力は、少しづつだが村人やクロモの子ども達にも影響を与えていた。

 桃は5月の爽やかな風が吹く頃、今度は女の子の3つ子を産み、ゆきは男の子を出産。
 3つ子の女の子は『さつき』『みつき』『はづき』と名付けられた。
 ゆきの子は、『太郎』と源が名付けた。
 源の弟も産まれ『仁』と名付けられた。
 村のお姉さんも無事に男の子を出産。村が子ども達でとても賑やかになった。

 つゆ子も、太一の両親も、もぅ1組の夫婦も1週間毎に無事に出産した。
 子が出来なかった夫婦は双子の男の子を産み、太一の母は、男の子と女の子の双子、つゆ子は女の子を出産した。

 つゆ子の出産にサクラを連れて駆けつけたクロモが、大熊に村で神棚に蜘蛛の置物を置いて毎日村人が手を合わせてくれたら神力が増えたと言う話しをしたら、それを聞いた太一が両親と隣の夫婦にそれを伝えて、何故かシャケを咥えた木彫りの熊が神棚に祀られるようになった。

 大熊の神力が増えたおかげで、子ども達もすくすくと早く成長し、初夏には、また出産ラッシュとなった。

 村の子ども達は、早く成長するが15~18歳くらいで成長が止まり、そのまま少しづつしか歳をとらないらしい。
 寿命も少し延びるので百歳くらいまで生きる事ができるが百歳でも見た目は30代にしか見えないとクロモが言っていた。
 爺様や婆様は、クロモの事を忘れていたし、山神の嫁もおらず神力も少なくなっていたから、普通に歳をとってしまった。
 今では、少しだけ若返り、曲がった腰がシャキッと伸びて、白髪も黒くなってきている。さすがに、子が産めるほど若返る事は出来ず、寿命も後30年ほどだそうだ。

 村はクロモが少しづつ広げていて、春には牛を10頭ほど買って村で飼う事になった。
 山羊に羊、豚も10頭づつオスとメスのペアで購入。
 一組づつクロモの家でも飼う事になり、クロモの家もますます賑やかになってきた。
 もちろん、桃の子ども達が動物達に林檎の皮や芯を食べさせてしまい、話すようになってしまった。
 そこに桃が歌い、また一緒になって大合唱が始まり、ますます動物達も増えて、どんどん成長していった。

 暑い夏が来る頃、つゆ子が約束通りに帰ってきた。
 
「父様、母様ただいまー!!」
「お帰りなさい。つゆ子。元気そうで良かった!」
「うん、元気。それでこの子が『風香』。」
「風香ちゃん、いらっしゃい!!さつき達~、風香ちゃんが来たよー!!3人がすごく楽しみにしててね、早く一緒に遊びたいってずっと言ってたんだ。」
「わぁーー!ねぇねぇふうちゃん、牛さん見せてあげるよ。」
「えっ?牛さんがいるの?」
「うん、こっちこっち!昨日ね、子牛が産まれてね、とっても可愛いんだ。」
「あっ豚さんもいるよー!」
 きゃあきゃあと楽しそうに手を繋いで走っていった。

「つゆ子、2人目はそろそろか?」
「うん、こっちにいる間に産まれるかな?」
「そうか。ゆっくりしていけ。」
「それでね、父様。お願いがあります。大熊様は遠慮して言えないだろうから、私がお願いします。風香を大熊様の嫁に出してもいいですか?」


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