山神様への嫁入り

みーか

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43 源と春太

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 かなり元気になったクロモは、やっと風呂まで行けるようになり温泉に浸かり、傷もほとんど塞がった。
 桃が離れないのでクロモの部屋で一緒に寝る事にして、桃が寝たのを確認してから、もう一度温泉に浸かった。

 日記を書きながら林檎を食べて朝までゆっくりと過ごす。

 人間の姿になり、桃を起こすと大泣きしながら抱きつかれた。
 背中にもお腹にも傷があるから痛かったが、桃が心配して蜘蛛の姿の自分にずっと付き添ってくれた事が嬉しくて我慢した。

 今日はクロモと一緒にゆきと春太の事を見守りたいと言うので桃の部屋に行き、ベットに寝ながら様子見ることにした。まだ動くのは辛いのでちょうどいい。


 春太は、桃と小梅が住んでいた家をリフォームして住むらしく、せっせと木を切りに行ったりと走り回っていた。
 小梅は、鶏達の世話や畑仕事などを頑張っていて、放し飼いの鶏達が小梅の周りに集まって、桃の歌っていた歌を歌え!!とヤイヤイ言っている。
 小梅が歌うと、喜んで一緒に歌い出す。

 ほのぼのとしている春太と小梅に比べ、真冬のような冷たい空気のゆきと源。

 
 春太が家をリフォームしていると、源がやってきた。

「あの……、今ちょっといいか?」
「いいよ。何?」
「ぉ、俺!!ゆきさんと、そのっ、仲良くしたいと思うんだけど……ど、どうしたらいいか分からなくて…。ほら、俺、山神様に酷い事してしまっただろ。許される事じゃない。でも、本当に悪かったと思ってるんだ。ゆきさんの父親だし、俺の事許せないだろうし……。もぅどうしたらいいのか分からなくて……。」
「ふーん。僕は小梅ちゃんととっても仲良しだよ。もぅプロポーズ……結婚の申し込みもしたからね!」
「……そ、そうか……。」
「はぁ~、今のは、ちょっと意地悪。僕だって父様に大怪我させた君の事を、そんなにすんなり許せないよ。」
「そうだよな………本当に、本当にすまなかった!!謝る事しかできない!!」
「……うん、だからさ、そうやって素直に謝ればいいんじゃないかな?ちゃんと姉さんに謝ってないでしょ?姉さんだって頭では分かってるよ。君の結婚相手なんだし、僕達山神の子は他の人と結婚できないんだから。」
「男が簡単に女に頭を下げるのは……。」
「だーかーらー!!それだよ!何それ?悪い事したのなら謝るのは当たり前だろ!謝りもせずに許されると思ってる?男とか女とか関係ない。もう少しで君は殺人犯だったんだ!その事分かってる?」
「………ぅ……。」
「僕が姉さんの立場でも許せないと思うよ!僕達がここに来るまで、どれだけ努力したと思う?村人の為に何が必要か調べて、荷物をまとめて、勉強も沢山した。読み書き、計算、畑仕事に、炊事洗濯。全て出来るように毎日毎日努力したんだ。それも全て、結婚相手の為、村の人達の為。……それなのに、村の事1番考えてる父様が殺されかけたんだ。男だからとか女に頭下げたら格好悪いとか………ふざけるな!!!」 
「……っ。………ごめんなさい……。」
「それは僕にじゃないでしょ!あの時の爺様は、自分の命をかけて村を守った。それが格好悪く見えた?僕は、爺様すごいなと思ったけどね!!それに、君だけが母様が居なくなって寂しかったと思ってる?1番寂しかったのは小梅ちゃんだよ!小梅ちゃんは、たった1人の家族が居なくなって毎晩泣いていたそうだよ。それでも、爺様達の前では元気に明るく振る舞ってた……。自分1人が辛いって被害者ぶって、そんな奴の嫁になる姉さんがかわいそうだ!!」
「………ぐっ………ごめ……なざい……、お、俺……。」
「僕は言いたいこと言えてスッキリしたぁ~。君も姉さん幸せにするって父様と約束したんだ。しっかり守って!!」
「………分かった。ありがとう。」

 ぅわ~、春太はかなり溜まってたんだろうな。確かにゆきにとって辛い事になってしまった。
 俺は何もしてやれない……。ゆき……許してやってくれ。

 隣を見ると、桃も悔しそうな顔のまま泣いていた。


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