山神様への嫁入り

みーか

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 クロモの頭の上からギャンギャン言われ、クロは仕方なく人間の姿になり、桃の手伝いに行った。

「あっ、クロちゃんおはよう~。畑から大根とほうれん草取って来て!」
「はいはい。」

「あっ、クロモ様、サクラちゃんにも林檎を食べさせる?」
「サクラ、どうする?今のままでもいいが、林檎を食べるとサクラもクロのように人間の姿になれるかもしれんぞ。」
「サクラは、あるじ様と桃様のお役にたちとうございます!人間の姿になれるのなら、是非に!!」
「そーか、分かった。サクラは本当に良くできた妹だな。」

 クロモは、サクラの小さな頭を指で撫でる。
 サクラはとっても嬉しそうに目を閉じている。

 桃は、ちょっと変な気持ちになり、モヤモヤする。それが嫌で林檎を取りに行った。


 ご飯の前に、サクラに林檎をすりおろして食べさせると、人間の姿になった。クロより一回り小さな可愛い女の子だ。
 
「サクラは、あるじ様の眷族として、精一杯務めさせていただきます。桃様のお手伝いもさせてくださいませ。」 
「もちろん!!サクラちゃん、一緒にお料理したり機織りしたりしようね!!」
「はい!!」

 なんだかんだで4人分のご飯を用意して、4人揃っての朝食になった。

 賑やかな朝食に、桃は小梅を思い出して泣きそうになってしまった。
 まだ両親が生きていた頃、こうやって4人で楽しく朝ご飯を食べた。こんな夢を見た、とか、今日の予定なんかも話し合い、こんなご馳走じゃなかったけど、すごく幸せな時間だった。

 後片付けをクロとサクラに任せて、桃はクロモに呼ばれ、外に出た。

「桃、俺は村の様子を蜘蛛を通して見る事ができる。それは、前に話したな?毎晩、村の様子をみている。」
「はい。知ってる。」
「それでな、さっき桃は泣きそうな顔をしていた。違うか?」
「えへへへ、バレました?」
「小梅の事を思い出したんじゃないか?」
「……はい。」
「実はな、小梅は爺様の所でとても大切に育てられている。だが、桃と一緒だ。夜になると寂しくて泣いているんだ。」
「……っ!!」
「俺は、それを見るのが辛い。桃は村に帰る事はできないし、小梅をここに呼ぶ事もできない。昨夜、小梅に蜘蛛を使って話しかけた。桃、ひらがなを覚えただろう?だから手紙を書け。俺が運んで、爺様の所の蜘蛛に渡してやる。小梅にも、手紙を書けるように紙や鉛筆を渡す。どうだ?」
「クロモ様、あっ、ありがとう!!ぅえっ、うっうっ。」
「泣くな。寂しい思いをさせて悪いな。」
「そ、そんな、こっ事ない。私にはクロモ様がいるし、寂しくない。でも、小梅は……。」
「そうだな。だが心配するな。俺がしっかりと見守っているし、爺様の家族にも可愛がられているぞ。」
「うん!!私、手紙を書くよ。あっ、そーだ、あいうえお表も作って一緒に持って行ってもらったら小梅も覚えやすいよね!それも作る!!」
「今日は、機織りはいいから小梅に手紙を書くといい。これは、手紙を書く紙だ。桃の花の絵が透かしに入ってて桃にピッタリだ。」
「ありがとうクロモ様!!」

 桃は部屋に走って行った。

 ご飯の用意は、まだまだ桃が教えなければ無理だが、洗濯や洗い物などはクロとサクラがしてくれる。それに畑の世話や掃除なども2人が頑張ってくれるそうだ。
 背が低い2人なので、洗濯物を干したり高い所の物を取ったりは出来ず、クロモは2人の為に木を組み合わせ、クロモの糸でしっかりと縛り踏み台を作った。

 桃が手紙に夢中なので、クロモが鶏の世話をしようとオスとメスだけの囲いの中に入って卵を回収しようとすると、オスとメスの二羽が片言を話している。

 ん?こいつらには神力を注いだりしてないぞ?

 良く見ると、林檎の芯の欠片が餌箱に入っている。

「桃、林檎、皮くれた。」
「林檎、芯、食べた。」
「話せる。」
「話せる。」

 どんだけだよ!!林檎凄すぎるだろ!!

「卵、どぞ!」
「力、ある。2つ、産む。」

 うわーー。鶏に占領される日が来るかもしれない。
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