山神様への嫁入り

みーか

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10 観察日記

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 クロモは今日町に行き、桃の為にヘアブラシやヘアゴム、可愛いワンピース、だいたいのサイズでブラまで購入してきた。

 桃と町に行って買い物出来ればいいが、町までは桃の足だと夜通し歩いて5日はかかる。
 クロモ1人だと、蜘蛛の姿で糸を出して木から木へとビュンビュン移動できるから直線で進む事ができ1時間半ほどあれば、町へ行くことが出来る。

 ただ蜘蛛の姿まま桃と出かける事ができないので、仕方なく1人で行った。いつかは桃と2人で町に行きたいな……とクロモは思いブラまで購入したのだ。
 
 ただ、桃には服や可愛いヘアゴムより饅頭の方が嬉しかったようだが……。
 はぁー、まだまだお子ちゃまだな。

 バタン!

 また風呂場から音がして、大急ぎで行ってみると、なんとか自力で起き上がった桃が全裸で立っていた。

「クロモ様、また入り過ぎてしまいました……。」
 壁にもたれてなんとか立っている状態の桃を、今日買ってきたバスタオルで包み、抱き上げてベットまで運んだ。

「へへへ、饅頭の事考えてたら風呂から出るの忘れてた……。」
「はぁーーー。本当に、心配ばっかりかけやがって!!」
「ごめんなさい。」
「水飲めるか?」
「はい。」

 クロモは、ドキドキを隠しながら水を取りに台所まで行く。

 全く、毎日毎日……俺の自制心が崩壊しそうだ。
 
 水をコップに入れて持って行くと、ゴクゴク飲み干して寝巻きを置いてきたからと起き上がって、またふらついて倒れそうになるのをクロモが支えた。
 支えた場所が胸辺りだったので、クロモの頭の中がピンク色になりかけたが、なんとか踏みとどまった。

「俺が取ってくるから、待ってろ!」
「は、はい。」

 深呼吸をしながら、パジャマを持って戻る。

「ほら、早く着替えないと風邪引くぞ!」

 着替え終わった桃の髪の毛を土産のブラシで梳かしてやる。

「クロモ様、その櫛変わった形ですね。」
「これは、ブラシと言って櫛より髪が梳かしやすいだろ?」
「本当だ。」
「それと、これも土産だ。こうやって髪を束ねるのに使う。髪紐より束ねやすいだろ?」
「あっ、本当!それにズレてこない。可愛い飾りもついてるし、すごいです!!町って本当にすごい所なんですねぇ。饅頭もあんなに甘くて美味しかったし!」
 
 桃の髪を梳かしながら、ふと気付く。あれ?桃はシャンプー使ってないのか?まだ来て数日だが、バシバシになっている。

「なぁ、桃。髪はどうやって洗っているんだ?」
「え?髪はここに来てから初めて洗いました。石鹸があったのでそれで洗ったけど……ダメだったんですか?」
「いや、ダメじゃない。俺が説明してなかったから……。明日の風呂は髪の洗い方を教えてやる。」
「はい。お願いします?」

 よく分からないって顔の桃を見て、クスッと笑ってしまった。おでこにおやすみのキスをして自分の部屋に戻った。

 あっぶなかったぁー!!毎日全裸を見せられるこっちの身にもなれよ~!!
 はぁ~。

 さて、ここからはクロモの時間だ。村のあちこちに住む同族の蜘蛛達と視界を共有して、村に変化がないか確かめる。畑仕事の時など少しの休憩時間にも見守っている。
 他にもここら一帯の山の様子もしっかりチェックしている。

 これが山神の仕事だ。
 
 罠にかかった猪や鹿を捌きに行くのも、この時間にする。

 桃がしっかりと寝てしまったのを確認してから、クロモは本来の姿に戻り、風呂に入って蜘蛛の体を覆う細かいふさふさの毛をシャンプーを使って丁寧に洗う。
 それから温泉にゆっくり浸かってから、お風呂掃除をする。

 掃除が終われば、もう一度桃の顔を見に行き、桃との生活で何が必要かなどを書き出したり、その日の桃の観察日記をこっそりと書いたりもしている。

 実は桃の部屋にも蜘蛛の巣がありとても小さな蜘蛛が桃を見守ってくれている。家中に蜘蛛の巣があり、留守にしてても、何かあればすぐにクロモに伝わるようになっている。

 桃が来る前は、村での出来事や立派な大根が出来たなどの日記をつけていたのだが、それプラス桃の観察日記が加わり恐ろしいスピードでページが埋められていく。

 今度町に行ったら多めにノートを買おう……。
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