山神様への嫁入り

みーか

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5 失礼な嫁

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 皿洗いや、洗濯物をして待つように言われたので大人しく待っていたら、洗濯が終わる頃帰って来た。
「確かに若い男が来てた。ゲロまみれの白無垢見て腰を抜かしてたぞ。」
「………あの場所に白無垢置いて来たんだ……。」
「いや、あんなに汚れたのを触りたくなかったから。」
「……す、すみません。」
「その後、泣きながら帰って行った。」
「そぅ……ですか。」
「あっ、洗濯したのは今日は天気が良いからな。こっちに持って来てくれ!」
 出て行ったのとは反対方向に進むと、そこにも扉があり外に繋がっていた。
 背の低い草原になっていて、木から木に紐が結ばれていた。
 そこに洗濯物を干して乾かすらしい。
 クロモは、手慣れた様子で干していく。

 少し歩いた所に畑があり、ここに野菜は取りに来たらいいと教えてくれた。
 中に戻り、機織りの仕方を教えてもらう。クロモが草木を使って染めた綺麗な色の糸を織っていく。
 
「おぉ、思ったより上手じゃないか!」
「へへへ、そうですか?」
「ここは、もう少し力を入れて詰めないと穴が開くぞ。」
「こう……ですか?」
「そうだ。もう少し糸をピンと張るといい。」
「なるほど。」
「困った事があったら、畑にいるから呼びに来い。」
「はい。」

 単純作業が好きな私は夢中で織っていたようで、外が暗くなり帰って来たクロモに晩御飯の催促をされるまで気付かなかった。
 
 今夜は猪の肉で、鍋を作ってほしいと言われ、肉を料理するなんて初めての事で、ルンルンで料理した。野菜は、クロモが取ってきてくれていた。

 こんなに沢山の肉を食べた事はなく、幸せな気分になりながら、クロモについ聞いてしまった。

「あの織ってる糸って、何の糸?」
「は?決まってるだろ、俺の」
「…うっ、、」
「ぅわ!!吐くな!!勿体ない!!」
「……んんん、………はぁはぁ、危なかった。」
「……お前なぁ、それくらいは我慢しろよ~。」
「……第一印象が最悪過ぎて……。」
「本当に失礼な奴だな!」
「……ごめんなさい。今の姿はカッコイイですよ。」
「ま、まぁな。俺はイケてるからな!!」
「はい。今は!カッコイイです。今は。」
「……なんか腹立つ。風呂入ってこい。桃の着替えは、ここにあるからな。」
「はい。」

 着替えを持って、温泉に行く。パンツという腰巻きは毎日洗うのだそうだ。そして、寝る時と起きてからは違う着物を着るのだと教えてくれた。
 寝る時用の服を持って温泉に行き、毎日温泉に入れる幸せを噛み締める。
 元の姿さえなければ最高の嫁ぎ先だ!
 温泉に浸かりながら、今日の事を振り返る。
 洗濯物を干してあるのも忘れ、機織りに集中していたが、その辺りは全部クロモがしてくれていた。
 良くしてくれてるし、もっとしっかり仕事しなきゃな!うん、明日からはもっと頑張ろう!!あっ、子作りの仕事って何だろう?それも仕事なら、しっかりやらなきゃ!!

 そんな事を考えて、ずっと温泉に浸かり、そろそろ上がるかと湯船から出た所で、視界が歪んだ。
 
 その後は全く記憶も無く、口の中に冷たい水が入ってきたのでゴクンと飲み込み、もっと飲みたくて口を開けると水が入ってきてゴクンとまた飲み込んだ。
 はぁ、美味しい。

「ぃぎぃゃーーーーーー!!」

 バチンっ!!

「いってーーーーー!!!」

 目を開けたら、クロモの顔が私の顔にくっつくくらいドアップにあり、ビックリしすぎてクロモの頬を平手打ちしてしまったらしい。

「……あ、あの……クロモ様……ご、ごめんね。ビックリして……つい。」
「………湯に浸かりすぎてぶっ倒れた桃を、ここまで運んで水を飲ませた俺を叩くって……酷すぎる!!」
「ご、ごめんなさい。目を開けたらドアップのクロモ様が……。」
「思いっきり叩く事ないじゃないか!」
「叩こうと思った訳じゃなくて……勝手に手が動いて……。」
「ほー。勝手にねぇ。」
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