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第四章 中級ダンジョン
第57話 ダンジョン内の水場
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俺たちは中級ダンジョン一階層で、パワーラビットを倒しながら水場へ向かった。
一階層のエンカウント率は高めで、水場へ着くまでの一時間の間に四回の戦闘を行った。
討伐ポイントを4ポイントと赤い魔石四個を手に入れた。
到着した水場は、とてもきれいな場所だった。
「ここが水場か!」
「きれいですね!」
「は~!」
水場は泉だった。
泉の周りには、色とりどりの小さな花が沢山咲いている。
人の背丈より少し高い木が生えていて、美味しそうな木の実をつけていた。
「水場は安全地帯だと、護衛騎士のシンシアが言っていました」
ミレットが水場の情報を伝えてくれた。
安全地帯――魔物の襲撃がない場所だ。
ここで、ゆっくり休めるぞ!
「じゃあ、休憩しよう!」
俺たちは、花を踏まないように水場に近づいた。
泉はきれいな水がコンコンと湧き出ている。
俺は水筒に水を補充し、ミレットは布を濡らして首筋を拭いている。
清潔ですぐ飲める水が手に入るのはありがたい。
俺は泉の周囲に生えている花や草を観察した。
前世日本のネモフィラやパンジーに似た小さくて可愛い花だ。
色とりどりで目を楽しませてくれる。
「ねえ、ミレット。薬草のように価値のある草は生えてないかな?」
「普通の花みたいですね。でも、水場の果物は美味しいとシンシアが言ってました」
「食べてみよう!」
俺は近くの実をもいでみた。
梨に似た果実だ。
ナイフで皮をむいて口に入れると、上品な甘さがした。
「シャクシャクして美味しい! そうだ! サオリママに持って帰ろう!」
俺は梨に似た果物をもいで、マジックバッグに入れ始めた。
「ふふ。あまり沢山はダメですよ。他の冒険者が食べる分を残しておくのがマナーですよ」
「了解! じゃあ、二ついただこう!」
なるほど、水場は冒険者の休憩場所だ。
貴重な食料を独り占めしないように、マナーがあるのだろう。
サオリママが喜んでくれるかな?
俺は梨に似た果物を笑顔で収穫した。
「ねえ! 見て! たき火の跡がある!」
泉の向こうで、アンが叫んだ。
俺とミレットは、アンに駆け寄る。
アンの側には、誰かが使ったたき火の跡があった。
地面が黒く焦げて、黒い木の燃えかすが残っている。
このたき火の跡は、アンのお父さんたちが利用したのだろうか?
何時間前に利用したたき火だろうか?
俺はたき火の跡を観察したが、さっぱりわからない。
アンに聞いてみる。
「アン。どのくらい前のたき火かわかる?」
「ううん」
「ミレットは、どう?」
「私もわかりません。けれど、燃えかすが暖かくないから、消火して一定の時間は経っていますね」
「ここ数日かな……」
俺たちは、周囲を探してみたがたき火の跡以外は見つからなかった。
さて、どうしたものだろう……。
俺としては、闇雲に探し回るよりも、たき火の跡――人がいた痕跡があるこの右上エリアを探してみたい。
だが、このたき火の跡がアンのお父さんたちの痕跡だという確証はない。
俺はミレットとアンに意見を求めた。
「この水場があるエリアを重点的に探索するか? それとも他のエリアも満遍なく探索するか? 二人はどちらが良いと思う?」
アンがすぐに答えた。
「私はこの付近をじっくり探したい。お父さんのパーティーは、新人のタナーさんが加入したばかりよ。それなら深い階層にいかないで、浅い階層で探索していると思う。このたき火の跡は、怪しいよ!」
「確かに怪しいね。ミレットは?」
「どうでしょう……。迷いますね……。そもそも、この一階層にいるかどうかもわからないですから……。でも、この水場は二階層へ続く階段の反対側です。ここにいるということは、下の階層に行く意思がない……。おかしいですよね……」
ミレットは片手を頬にあてて考え込む。
「ミレット。おかしいというのは?」
「中級ダンジョンは、深いほど稼ぎが良いそうです。ですから一階層でウロウロする冒険者は少ないと思うのです。ここは階段から遠いエリアですよね?」
「そっか。下の階層に行くつもりなら、階段に近いエリアで探索をするはずだね」
「ええ。このエリアを探索するのは、一階層の探索だけで良いと割り切っている冒険者パーティーでしょう」
「気になるね……」
アンのお父さんたちが、一階層で連携の確認など慣らし運転をしていた可能性はあるな……。
俺は決断する。
「よし! この右上のエリアを念入りに捜索しよう!」
「「了解!」」
俺たちは休憩を終えて、捜索を再開した。
一階層のエンカウント率は高めで、水場へ着くまでの一時間の間に四回の戦闘を行った。
討伐ポイントを4ポイントと赤い魔石四個を手に入れた。
到着した水場は、とてもきれいな場所だった。
「ここが水場か!」
「きれいですね!」
「は~!」
水場は泉だった。
泉の周りには、色とりどりの小さな花が沢山咲いている。
人の背丈より少し高い木が生えていて、美味しそうな木の実をつけていた。
「水場は安全地帯だと、護衛騎士のシンシアが言っていました」
ミレットが水場の情報を伝えてくれた。
安全地帯――魔物の襲撃がない場所だ。
ここで、ゆっくり休めるぞ!
「じゃあ、休憩しよう!」
俺たちは、花を踏まないように水場に近づいた。
泉はきれいな水がコンコンと湧き出ている。
俺は水筒に水を補充し、ミレットは布を濡らして首筋を拭いている。
清潔ですぐ飲める水が手に入るのはありがたい。
俺は泉の周囲に生えている花や草を観察した。
前世日本のネモフィラやパンジーに似た小さくて可愛い花だ。
色とりどりで目を楽しませてくれる。
「ねえ、ミレット。薬草のように価値のある草は生えてないかな?」
「普通の花みたいですね。でも、水場の果物は美味しいとシンシアが言ってました」
「食べてみよう!」
俺は近くの実をもいでみた。
梨に似た果実だ。
ナイフで皮をむいて口に入れると、上品な甘さがした。
「シャクシャクして美味しい! そうだ! サオリママに持って帰ろう!」
俺は梨に似た果物をもいで、マジックバッグに入れ始めた。
「ふふ。あまり沢山はダメですよ。他の冒険者が食べる分を残しておくのがマナーですよ」
「了解! じゃあ、二ついただこう!」
なるほど、水場は冒険者の休憩場所だ。
貴重な食料を独り占めしないように、マナーがあるのだろう。
サオリママが喜んでくれるかな?
俺は梨に似た果物を笑顔で収穫した。
「ねえ! 見て! たき火の跡がある!」
泉の向こうで、アンが叫んだ。
俺とミレットは、アンに駆け寄る。
アンの側には、誰かが使ったたき火の跡があった。
地面が黒く焦げて、黒い木の燃えかすが残っている。
このたき火の跡は、アンのお父さんたちが利用したのだろうか?
何時間前に利用したたき火だろうか?
俺はたき火の跡を観察したが、さっぱりわからない。
アンに聞いてみる。
「アン。どのくらい前のたき火かわかる?」
「ううん」
「ミレットは、どう?」
「私もわかりません。けれど、燃えかすが暖かくないから、消火して一定の時間は経っていますね」
「ここ数日かな……」
俺たちは、周囲を探してみたがたき火の跡以外は見つからなかった。
さて、どうしたものだろう……。
俺としては、闇雲に探し回るよりも、たき火の跡――人がいた痕跡があるこの右上エリアを探してみたい。
だが、このたき火の跡がアンのお父さんたちの痕跡だという確証はない。
俺はミレットとアンに意見を求めた。
「この水場があるエリアを重点的に探索するか? それとも他のエリアも満遍なく探索するか? 二人はどちらが良いと思う?」
アンがすぐに答えた。
「私はこの付近をじっくり探したい。お父さんのパーティーは、新人のタナーさんが加入したばかりよ。それなら深い階層にいかないで、浅い階層で探索していると思う。このたき火の跡は、怪しいよ!」
「確かに怪しいね。ミレットは?」
「どうでしょう……。迷いますね……。そもそも、この一階層にいるかどうかもわからないですから……。でも、この水場は二階層へ続く階段の反対側です。ここにいるということは、下の階層に行く意思がない……。おかしいですよね……」
ミレットは片手を頬にあてて考え込む。
「ミレット。おかしいというのは?」
「中級ダンジョンは、深いほど稼ぎが良いそうです。ですから一階層でウロウロする冒険者は少ないと思うのです。ここは階段から遠いエリアですよね?」
「そっか。下の階層に行くつもりなら、階段に近いエリアで探索をするはずだね」
「ええ。このエリアを探索するのは、一階層の探索だけで良いと割り切っている冒険者パーティーでしょう」
「気になるね……」
アンのお父さんたちが、一階層で連携の確認など慣らし運転をしていた可能性はあるな……。
俺は決断する。
「よし! この右上のエリアを念入りに捜索しよう!」
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