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第三章 行方不明

第45話 ボス部屋の前(五階層)

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 連戦が続いた。

 初心者ダンジョンの五階層は、渦巻き型のルートでショートカットはない。
 これまでの階層よりも移動距離が多い。
 その上、魔物とのエンカウント率も高く、俺たちは連戦を強いられた。

 行き止まりになっている脇道で、背後の安全を確保しながら小休止を取り、また進む。
 休み、戦い、走り、戦い……。

 ついに五階層のゴール地点、ボス部屋に俺たちはたどり着いた。

 俺は息を吐きながら、ミレットとアンに声をかける。

「ふう、来たね!」

「はい! 目標地点です!」

「ふああ! 本当に来ちゃった!」

 ミレットは真面目にキリッと気合いの入った声で、アンはぼやき気味にちょっと疲れた声で返事をした。

 ボス部屋の入り口は大きなアーチになっていて、部屋の中を見ることが出来る。
 俺たちは、そっとボス部屋の中をのぞいてみた。

「いるな」

「いますね」

「いるいる!」

 ボス部屋は広い。
 前世日本の学校にあった体育館ほどの広さだ。

 部屋の中央に、ゴブリンが二匹。
 そして、ゴブリンの間にゴーストがフワフワと浮いている。

「あれが氷の守護者か……。装備はないんだな……」

 氷の守護者は、いかにも幽霊といった雰囲気の女型のゴーストだ。
 長い髪にスラッとした姿をして、ドレスを身にまとっている。

「でも、剣や矢の攻撃は効きません」

 俺の下から顔をのぞかせるミレットだ。

 なるほど、ミレットの言う通りかもしれない。
 氷の守護者は半透明で、物理攻撃を受け付けそうにない。

「ねえ。あのゴブリン……。装備が違うよね?」

 一番下からのぞきこんでいるアンだ。
 俺はゴブリン二匹に目を向ける。

 向かって右側にいるゴブリンは、木製の棍棒を持っている。
 左側のゴブリンは、ショートソードに盾の装備だ。

 これまでのゴブリンはナイフを持っていただけなので、装備が格段に良くなっている。

「確かにアンの言う通りだね。ボス部屋だからかな」

「どうせなら、腰蓑一丁でサービスしてくれれば良いのに!」

「「ぶっ!」」

 アンの言い方に、俺とミレットは吹き出した。

「アン! 腰蓑だけでサービスって何だよ! どんなサービスだよ!」

「アンさん! 面白いです!」

 俺とミレットは、ボス部屋から顔を引っ込めて、腹を抱えて笑った。
 連戦で緊張を強いられていたので、フッと気が緩んだのだ。

 二人ともツボに入ってしまった。

「でもさ! 最後なんだからサービスしてくれても良いと思う! あのゴブ二匹強そうだもん!」

 アンはプリプリしている。
 その様子がおかしくて、俺とミレットは再び笑い転げた。

 一通り笑ったあとは、休憩と戦闘の準備だ。

 ボス部屋入り口の脇で水を飲み、ミレットがくれたビスケットをかじる。

「ここでレベルアップしよう!」

「はい!」

「そうだね!」

 連戦はきつかったけれど、その分討伐ポイントは貯まった。
 結局、五階層で魔物を二十七匹倒し、四階層の五匹と合わせて討伐ポイントは33ポイントだ。

 ちなみにドロップアイテムは二つ手に入った。
 レッサーツナからマグロの切り身が一つ。
 レッサートレントから木の実が一つ。

 ミレットによると、レッサートレントからドロップした木の実は香辛料になるそうだ。
 ぴりりとした辛い味で、砕いてコショウのようにふりかけて使うらしい。

 さて、レベルアップだ!


 ◆―― ステータス ――◆


【名前】 ユウト

【レベル】4

【スキル】レベル1 剣術 盾術 気配察知

【討伐ポイント】3


 ◆―――――――――――◆


 俺はショートソードを素振りしてみる。
 わずかながらショートソードを振るスピードや力が強くなっている気がする。

 レベル4にレベルアップした効果だ。
 わずか――このわずかな違いが戦闘では生死を分けるかもしれないのだ。

 ボス戦前にレベルアップ出来たのは大きい。

 ここのボス部屋は、入り口に扉がないので、出入り出来るタイプだ。
 ダンジョンによっては、一度入るとボスを倒すまで出られないボス部屋もあるそうなので、撤退出来るボス部屋は初心者にありがたい。

 俺たちは長めに休憩を取り、ボス戦の打ち合わせを行った。
 準備万端!
 さあ! ボス戦だ!
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