外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!

武蔵野純平

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第二章 冒険の始まり(二日目)

第28話 お仕置きタイム

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 ジャイルが剣を構える。

 仕方なく俺も腰の剣を右手で抜き、剣と盾を構えグッと腰を落とす。
 防御重視の姿勢を取る。

 ここまで来たら仕方がない。
 ジャイルと剣で一戦交えるしかない。

 だが、俺とジャイルの剣は、リーチ差がある。

 体格の良いジャイルが持つ剣は、俺の剣よりも長い。
 両手で扱う長目の剣だ。

 俺の剣は、ギルド受付のドナさんが選んでくれた剣で、小柄な俺が片手で扱える短めで軽い剣だ。
 魔物との戦闘では小回りが効いて良いのだが、こうして一対一の対人戦になると武器の違いを意識してしまう。

(防御重視でジャイルの隙を見て攻撃を加える……)

 俺は戦い方を決めて、フウッと息を吐き出し呼吸を整える。
 よし! 落ち着いている!

 ジャイルが、無邪気に残酷な顔をする。
 いじめっ子特有の表情だな。

「どうした? 怖いか? ぐふふふふ!」

 自分が優位に立ち、好きに嬲れることに愉悦を感じていやがる。
 俺は強い嫌悪感を覚える。

(下衆だな……)

 ジャイルがミレットと仲良くなることはないだろう。

 ん? そうだ! 少し挑発して冷静さを失わせてやろう。


「ジャイル。オマエさ。ミレットのことが好きだろう?」

「なっ!? ななな!? 何を――!」

「ナナナナ~♪ ナナナナ~♪ ジャイルはミレットが好き! バレバレだぞ!」

 俺は前世テレビで見た芸人さんの動きでジャイルをからかう。
 ジャイルは顔が真っ赤だ。

「うううううう! うるさい!」

「でも、気の毒だけどさ。ジャイルがミレットと結ばれることはないから」

「なんだとぅ!」

「ミレットは心が優しい。誰とでも分け隔てなく接する。ジャイルは、自分が偉い、自分が中心って考えだからな。ミレットのタイプじゃないよ」

「オ、オ、オ、オマエに何が分かる!」

「分かるさ! パーティーメンバーだからな! ミレットはジャイルが嫌いだよ」

 ジャイルは怒りながら涙目になるという器用なことをしている。
 先ほどまで、ジャイルは剣を抜き自分が優位だと余裕をぶっこいていた。

 だが、今は頭に血が上り心が揺れている。
 冷静とは一万マイル離れた状態だ。

 ジャイルは剣を俺に向け。

「黙れー!」

「いや、動揺してるじゃん! ホレホレ! 掛かってこいよ! 先手は譲ってやるよ!」

「ふんがー!」

 ジャイルが剣を大きく振りかぶった。
 テレフォンパンチならぬテレフォンソードだ。
 正面から真っ直ぐ切り下ろすことが丸わかり。

 俺は余裕を持って斜め後ろにステップし、ジャイルの剣を交す。

「ふん! ふん! ふんがー!」

「ほっ! ほっ! ほいっ!」

 ジャイルの剣は、スキル【剣術】の補正が入っているだけあって振りが鋭い。
 だが、大ぶりの斬撃なので、俺は冷静に回避を続けられている。

 俺の動きはノースキルだ。
 剣術スキルがあっても、使いこなせなければノースキルでも対処出来るのだなと、俺は一つ学びを得た。

「ふんがー! うんがー!」

「よっ! よっ!」

 ジャイルはムキになって攻撃をしてくるが、俺は淡々と訓練のように剣を交す。
 そろそろ終わりにしますか……。

 俺は一歩踏み込み、ジャイルが振り下ろした剣を盾でいなした。
 ジャイルは、俺に剣をいなされたことでバランスを崩し、とっさに踏ん張ろうとする。

(隙だらけだよ!)

 俺は剣の平らな部分で、ジャイルの腕を叩いた。

「あっ! 痛い! うううっ!」

 ジャイルが剣を落とす。
 俺はジャイルが取り落とした剣を蹴り飛ばし、ジャイルが拾えなくした。

 俺はジャイルに冷たく言い放つ。

「剣を抜いて襲いかかってきたんだ。覚悟は出来てるよな? 殺そうとしたら……、殺されても文句は言えない……。わかるな?」

「ひっ……!」

 ジャイルの顔が引きつる。
 俺は剣の平でジャイルの横っ面を叩いた。
 ジャイルが倒れる。

 殺すつもりはない。
 そんなことをしたら大問題になる。

 だが、お仕置きは必要だ。
 何せ剣を抜いて俺を殺そうとしたのだ。

 俺は続けてジャイルの足、腕を剣の平で叩く。
 ジャイルが何とか起き上がろうとするので、またジャイルの横っ面を剣の平で叩いた。

「ひいい! 止めてくれー!」

「止めない。始めたのはオマエだ!」

 ジャイルは、惨めに這って逃げようとした。
 俺は容赦なく尻や背中を剣の平で叩く。

 ジャイルは、四つん這いの姿勢をとれなくなり地面に倒れる。
 俺は追撃し、剣の平で顔を叩く。
 ベチベチと音が響き。
 やがてジャイルは失神した。

「ふう……。お仕置き終了……」

 これだけやっておけば、少しは大人しくなるだろう。

 俺は失神したジャイルを背負って冒険者ギルドへ向かった。
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