上 下
46 / 99
ルドルのダンジョン編

第46話 見敵必倒! 4階層ボスを発見

しおりを挟む
「無いな……」

 俺は、足を止めて周囲を見回した。
 今、俺達は、ルドルのダンジョン、ヒロトルートの4階層にいる。

 セレーネが、後ろから覗き込んで来た。
 俺の肩に、顎をちょこんとのせて来る。

「何が無いの?」

「ボス部屋だよ。通常ルートなら、もうとっくにボス部屋に到達しているのだけれど……」

「そうなんだ~」

 セレーネは、グリグリと俺の肩にアゴを押し付けてくる。
 なんか最近、スキンシップが多いな。
 まあ、嬉しいけれど。

 サクラも、気が付いたみたいだ。

「そうか。通常ルートとは、ダンジョンの配置が違うのですね」

「そう言う事」

「出て来る魔物も違うし、これはボスも通常ルートと違うでしょうね」

「おそらくな」

 俺とサクラは、考え込んでしまった。

 ボス部屋がどこにあるのか?
 手掛かりは、何もない。
 未踏のダンジョン探索の難しさに、俺とサクラは黙り込んでしまう。

 だが、セレーネは、明るかった。

「じゃあさ。宝箱探しようよ。ヒロトは、【宝箱探知】があるんだからさ。そのついでにボス部屋を探せば良いよ」

 こういう時に、セレーネの明るいマイペ-スなキャラクターは、ありがたい。
 サクラが、クスリと笑った。

「そうだね。セレーネちゃんの言う通り。ブラブラ宝箱を探しながらで、良いですね」

 まったくだ。
 俺もサクラも、ちょっと焦ってしまっていた。

「アカオオトカゲは、それほど強くないし。じゃあ、ブラブラと行きますか」

「おー!」
「おー!」

 俺達は、探索を再開した。
 今までは縦に真っ直ぐ進んだので、今度は横方向に、ジグザグに進んでみる事にした。

 セレーネとサクラは、リラックスしたのかおしゃべりを始めた。
 セレーネは、サクラの女子高生スタイルが気になるらしい。

「サクラちゃんの服、かわいいよね~」

「ありがとう! これ売ってないんですよ」

「え~、じゃあ、お手製?」

「ふふ。魔道具なんですよ」

「すごーい!」

 うん。
 ガールスが、明るく華やかだな。
 何か良い雰囲気になって来たぞ!
 俺も気負い過ぎた。

 あの双子、ダンジョンの精霊との約束は、今、この階層を探索する事で果たされている。
 何も無理にボス部屋に行かなくても良いんだ。

 サクラとセレーネのおしゃべりは、続いている。
 2人とも話しながらも、出て来たアカオオトカゲは、きっちりと矢で狙撃、回収している。

「でも、アカオオトカゲは、売れるんですかねえ?」

「食用かな~?」

「え? トカゲは食べないでしょ?」

「あたし~、食べた事あるよ~」

「ええ!? セレーネちゃん! ちょっと!」

「食べられるよ~。獲物が取れない時は、お父さんと何でも食べたよ~」

「……どんな味なんですか?」

「うーん。鶏肉? に近いかな。見た目は、グロイけどね」

「きっついな~!」

 セレーネ、すごいな!

 まあ、でも、アカオオトカゲは、しばらくマジックバッグのコヤシだな。
 冒険者ギルドに持って行くと、このヒロトルートの存在がバレる。


 ……ん?
 気配があるな。

 宝箱と水の気配だ。
 近くに、宝箱と水場があるな。
 スキル【宝箱探知】のおかげで、何となくわかる。

 セレーネとサクラに声を掛ける。

「宝箱と水場が近い」

 俺は、少し歩く速度を上げた。
 しばらく歩くと、広場の様な場所に出た。

 水場だ。
 広場の壁に石で出来た筒が出ていて、水が流れ出している。

 広場の中央に、宝箱が置いてある。
 金属製で少し茶色っぽい、銅の宝箱だ。
 サイズは、今までの宝箱と同じ衣装ケース位の大きさだ。

 セレーネとサクラが喜ぶ。

「きゃ~! 宝箱だ~!」

「銅箱ですね!」

 周囲を警戒しながら、銅箱に近づく。
 安全な様だ。

「開けてみよう」

「開けよ~う!」
「何でしょうね!」

 俺も、思わず顔がニヤついてしまう。
 宝箱を開けるのは、楽しみだよ!

「オープン!」

 宝箱を開けると、黒い毛皮で出来た小ぶりなバッグが入っていた。
 バッグを手に取ると、宝箱は煙の様に消えた。

 バッグは、ベルトを通す穴がついている。
 道具袋みたいに、ベルトから下げるヒップバッグだ。
 サクラとセレーネが、首をかしげた。

「バッグ?」
「マジックバッグ?」

「ちょっと待って、【鑑定】してみる」

 俺は、黒い毛皮のヒップバッグを【鑑定】してみた。


 -------------------

 ワーウルフのバッグ(耐熱、耐火、耐水、耐火魔法、耐水魔法)

 -------------------


「ワーウルフのバッグだって。機能は、耐熱、耐火、耐水。火魔法と水魔法にも、耐性があるらしい」

 マジックバッグじゃないけれど、なかなか高機能だ。
 ワーウルフは、まだ対戦していない魔物だけれど、手強そうだな。

 ワーウルフに、火魔法や水魔法は効かない。
 覚えておこう。

 セレーネが、毛皮を触りながら提案した。

「それ、ヒロトが持ったら? 男物っぽいし、似合いそう~」

 サクラも同意見だ。

「わたしも、ヒロトさんが持つと良いと思います。ヒロトさんのショルダーバッグじゃ、動きずらいでしょう」

「ありがとう。じゃあ、これは俺のにするよ」

 ワーウルフのヒップバッグは、俺の物になった。
 ちょっと、欲しかったから嬉しい。

 俺はヒップバッグを、ベルトに通し、後ろ側に吊るした。
 ショルダーバッグはやめて、マジックバッグやポーションは、ヒップバッグに入れる。
 マジックバッグは、高価な品だから外に出さずにヒッピバッグの中に入れて使おう。

「うん。これ動きやすいよ! 2人ともありがとう!」

「ヒロト、良かったね~。似合ってるよ~」
「ヒロトさん、カッコ良いですよ!」

 女の子に褒められると、嬉しいね。

 俺たちは、この水場で休憩する事にして水の補給も行った。

 セレーネは、【解体】スキルを使って、ここまでに仕留めたホーンラビットを手早く解体し始めた。
 俺達が手伝おうかと聞いたが、かえって遅くなるからと断られた。

 セレーネは、本当に解体が早くなった。
 自分たちで解体すれば、解体費用の一匹1000ゴルドが浮く。
 ジョブ選択を、狩人にして大正解だ。


 30分程休んで、水場を出発する。
 またジグザグに横方向に進む。

 途中宝箱を2つ見つけたが、普通の宝箱で、中身はポーションだった。
 セレーネとサクラは、相変わらずおしゃべりをしながら、出て来るアカオオトカゲを倒して行く。

 もう、今日だけでアカオオトカゲを、30匹近く狩っていると思う。
 早いとこ、アカオオトカゲを売りさばきたいな。


 俺の足が止まる。
 近くに気配を感じる。
 
「近くにいるな……」

俺のつぶやきに、サクラが反応する。

「アカオオトカゲですか?」

「いや、違う気配だ」

 俺は、コルセアの剣を抜き、後ろの2人に注意を促す。

「ボスかもしれない。近いから油断しないで」

 セレーネとサクラが、コクリとうなずく。
 俺は慎重に、気配がする方へ進む。

 いた!

 通路を曲がった先に、ボス部屋があった。
 部屋の入り口は大きく開いている。

 中には、アカオオトカゲとは、違う魔物がいる。
 ぱっと見で言うと、人間サイズの小型ティラノサウルスと言う印象だ。

 前かがみで、2足歩行している。
 大きさは大人の人間位だ。

 尻尾が長く、牙が鋭い。
 全体的に濃い赤色で、狂暴そうな目付きをしている。

 俺は、すぐに【鑑定】をかけた。

「【鑑定】!」


 -------------------

 レッドリザート

 HP: 50/50
 MP: 10/10
 パワー:60
 持久力:20
 素早さ:30
 魔力: 10
 知力: 5
 器用: 5

 -------------------


 俺は、鑑定結果をすぐに2人に伝えた。
 まず、サクラが発言した。

「MPがあるのが気になりますね。魔法は【鑑定】出来なかったですか?」

 俺の【鑑定】結果には、出ていない。

「【鑑定】には、出なかったな。いや、俺のスキルだと、魔法までは【鑑定】出来ないのかもしれない」

「魔法はあると思った方が良いですね。……おそらく、火系統の魔法でしょう」

 サクラは、言いながらレッドリザートを指さした。
 なるほど、全身真っ赤だ。
 確かに、火系の魔法が得意そうだ。

 レッドリザートをじっと見ていたセレーネが、次に口を開いた。
 口調は、狩りモード、の厳しい口調になっている。

「牙を使った噛みつきと、あの尻尾が要注意かな。パワーがあるから、尻尾で叩かれると、かなりダメージを受けると思う」

 確かに、ミニ恐竜みたいなアイツに噛みつかれたくはない。

 セレーネは、狩りの経験が豊富だから観察眼がある。
 初見の魔物だけれど、冷静に分析してくれている。

 俺はセレーネに質問した。

「弱点は、ありそう?」

「うーん。なさそうだね。ただ、皮はそれほど厚くなさそうだから、矢も剣も攻撃は通ると思う」

「なら、いつも通りか」

「そうだね」

 昨日、散々やった戦い方だ。

 初手で、サクラが魔法【スリープ】をかける。
 敵が【スリープ】にかかったら儲けモノだ。

 サクラは、【飛行】して、敵を牽制する。
 セレーネは、遠くから矢で攻撃する。
 俺はセレーネをカバーしながら、【神速】で接近して剣で攻撃する。

「じゃあ、いつも通りで行こうか!」

「了解!」
「見敵必倒! やりましょ~!」

 俺達は、ヒロトルート4階層のボス部屋に突入した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件

月風レイ
ファンタジー
 普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。    そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。  そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。  そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。  そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。  食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。  不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。  大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい

616號
ファンタジー
 不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜

月風レイ
ファンタジー
 グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。  それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。  と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。  洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。  カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。

星の国のマジシャン
ファンタジー
 引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。  そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。  本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。  この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!

処理中です...