44 / 99
ルドルのダンジョン編
第44話 ハゲールの約束と嘆き
しおりを挟む
俺たちは、10階層のボス、オオヒクイドリに勝利した!
だが、帰路が大変だった。
ルドルのダンジョンには、転移の魔方陣がない。
だから、1階層づつ、順番に上って行かなくてはならなかった。
地上に出て、冒険者ギルドに到着したのは、夜8時の鐘が鳴るちょっと前だった。
3人とも、クタクタに疲れていた。
受付のお姉さんに、俺が話しかける。
「すいません。ヒロトのパーティーですが、ジュリさんは?」
「今日は、早番だから、もう帰りましたよ」
「そうですか。ハゲールさんは?」
「ギルドマスターは、出かけてます。今日は戻らないです」
師匠の留守中、俺は朝晩、ジュリさんか、ギルドマスターのハゲールに、報告をする事になっている。
「じゃあ、伝言をお願いします。俺はヒロトです。俺のパーティーは10階層のボスを討伐して、無事帰還しました。以上です」
「え!? 10階層のボス!? あなた達が、ダンジョン踏破をして来たの?」
冒険者ギルドの中がざわついた。
だが、そんな事に構っていられない程、俺達は疲れていた。
「はい。オオヒクイドリとか、獲物がわんさかありますが、明日の朝又来るので、精算はその時に……。今日は疲れたので、帰って寝ます」
「ああ、はい。わかりました。お疲れ様でした」
俺達3人は、出口に向かう。
背中越しに声が聞こえた。
噂好きな冒険者たちが、早速俺たちを噂にしだした。
「おい、ウソだろ?」
「10階層のボスは、オオヒクイドリだぜ? あいつら素材は持ってたか?」
「明日の朝、持ってくるらしいぜ」
「マジか? まだ、あいつらガキじゃねえか!」
もう、すっかり辺りは、暗くなっていた。
夏だが、夜になると涼しくて、ルドルの街は過ごしやすい。
3人で家に向かって歩く。
街外れに来ると、カエルの鳴き声が聞こえて来た。
俺は、ボソリとつぶやいた。
「疲れたね」
サクラが続いた。
「疲れましたね」
セレーネも続いた。
「疲れ切ったよ」
それから、また3人で無言で家まで歩いた。
家では、チアキママが晩御飯を用意して、待っていてくれた。
俺達3人は、黙々とメシを食い、倒れるように寝てしまった。
*
――翌朝。
冒険者ギルドには、9時頃着いた。
俺たちは、ロビーの冒険者やギルド職員から、一斉に視線を向けられた。
ザワッとした空気が伝わってくる。
受付カウンターでは、ジュリさんと……。
ギルドマスターのハゲールが、お待ちかねだ。
「ヒロト! 10階層のボスを討伐したと報告を聞いたぞ!」
ハゲールは、俺と目が合うと、両腕を組み威圧して来る感じで、話し始めた。
どうも、ハゲールの口ぶりは、俺のダンジョン踏破を疑っているらしい。
「ええ。ボスのオオヒクイドリを持ってますよ。まだ、解体してないので、裏の解体場で出します」
俺は淡々とハゲールに答える。
10階層まで行って、倒して、帰って来たのは事実だ。
誇張も、抑揚も必要ない。
ハゲールは、グッ、っと眉間にシワを寄せた。
指で受付カウンターを、トントンと叩きながら話を続けた。
「それと、訓練場で随分暴れたと聞くがな?」
「相手が絡んで来たので。降りかかる火の粉は、いつ、何時《なんどき》でも、拳で払いのけますよ」
俺も、グッっと眉間にシワを寄せて、周囲を威圧するように答えた。
ロビーの冒険者たちが、小声で話しているのが聞こえてくる。
「何があった?」
「ヒロトのヤツが、訓練場で……」
「腕を斬り落としただと!?」
「間違いない。腕を再生してるところを見たぜ……」
ハゲールは、黙って俺をにらんでいる。
だが、ここでヘコヘコしてしまっては、いけない。
昨日、無理して10階層まで行って来たのは、俺たちがナメられないようにする為であり、冒険者として、パーティーとしての名を上げる為だ。
ハゲールは立場上、小言の一言でも言いたいのだろう。
俺は、それを受け入れる訳にはいかない。
俺は、からまれた。
からんで来た相手を、痛めつけた。
また、からまれれば、また、やる。
それだけだ。
この件で、俺は誰にも、絶対に頭を下げない。
俺は、そんな気持ちを込めて、ハゲールをにらみ返す。
しばらくして、ハゲールの方が折れた。
「ふん! 昨日の事は、いいさ。訓練中の事だからな! ギルドマスターたる私の関知する所ではない。さて、解体場でオオヒクイドリを見せて貰おう。来い!」
ハゲール、ジュリさんと俺たち3人は、裏の解体場に移動した。
後ろから、ロビーにいた冒険者や手の空いたギルド職員が、野次馬で付いて来る。
解体場には、解体担当、ブッチャーのミルコさんが待っていた。
「いよー! ヒロト! オオヒクイドリだってな!」
「ミルコさん。他にも色々獲物があるので、今日は、よろしくお願いします」
「ほう! 腕が鳴るね!」
俺とミルコさんを中心に、人の輪が出来た。
野次馬が多い。
獲物の大きさを知っているセレーネとサクラが、みんなを下がらせる。
「もっと下がってくださーい!」
「2メートル越えだから、下がって! 出せないから! もっと下がって!」
ハゲールとジュリさんも一緒になって、場内整理をした。
「よし! ヒロト! ここに出せ!」
俺はマジックバッグから、オオヒクイドリを取り出した。
空いたスペースにオオヒクイドリの巨体が横たわる。
周りの野次馬が、騒ぎ出した。
「うおおお!」
「デカイ!」
「初めて見た!」
セレーネとサクラは、野次馬が驚く様子を見てご機嫌だ。
「みんなびっくりしてるね~」
「平伏せ! 平伏すが良いぞ!」
ミルコさんとハゲールが、座り込んでオオヒクイドリをチェックしている。
「コンディションは、良いですね」
「うーむ。少し大きな個体じゃないか?」
「ですね。久しぶりの水揚げですから、成長していたのかもしれません」
「よし! 商人ギルドに、すぐ連絡を入れよう」
ハゲールが立ち上がり、宣言した。
「ヒロト達の戦果を確認した! 10階層のボス、オオヒクイドリで間違いない。ヒロトのパーティーは、ルドルのダンジョン踏破を達成した。ギルドマスターとして、これを認める」
解体場は、ちょっとした騒ぎになった。
野次馬達が口々に囃し立てる。
「おおお!」
「ヒロトも、やるもんだな」
「あの2人の女の子も新人だろ?」
「最年少記録か?」
「お貴族様の大人連れなら、年齢一桁の記録があったと思うが……」
「あの3人のように、若手だけで踏破したのは初だな」
「実質、最年少踏破記録だな」
サクラの狙い通りになっている。
これで俺たち3人に、ちょっかいをかけて来るヤツは、減るだろう。
俺が周りの反応に満足していると、ハゲールが違う話をふってきた。
「……ところでヒロト」
「何ですか?」
「オマエ……、今、マジックバッグから、オオヒクイドリを出したよな?」
「……」
「それ、ギルドの備品……? では、ないよな? 形が違う」
「ええ、これは俺の私物ですよ」
「私物? それ、どこで手に入れたんだ?」
野次馬の話し声が、ピタリと止んだ。
儲け話になるかもしれない、と俺とハゲールの会話に耳をそばだてている。
マジックバッグは、高価なアイテムだ。
それを、俺が持っている。
年齢的にも、冒険者のランク的にも、俺が高価なマジックバッグを金を出して買うのは不自然だ。
となれば、ダンジョンで見つけた! とみんな考えている。
野次馬冒険者たちの熱い視線が、俺に注がれる。
欲まみれで、ギラギラしている。
「いや……。それは、ちょっと……」
俺は、とっさに即答を避けた。
だが、ハゲールは、じっとりとした目で俺を見ている。
「ダンジョンで……、出たんだろ?」
「いや、まあ……」
「どこの階層だ?」
「まあ、それは、ちょっと……」
野次馬からのプレッシャーが凄い。
だけど、ダンジョンの精霊から貰ったと話すのは……。
ヒロトルートや精霊ルートが、バレる事になるから避けたいな。
「教えてくれたら、オオヒクイドリの解体費用は、サービスするぞ」
「えっ!? 無料ですか?」
「そうだ。他に獲物があるなら、それも解体費用を無料にしてやるぞ。だから! 階層を教えろ!」
なんだ?
なぜハゲールは、この情報にこんなに固執するんだ。
俺が困惑していると、受付のジュリさんが耳打ちしてきた。
「ヒロト君。そのマジックバックがダンジョンの宝箱から出たのなら、ルドルのダンジョンの良い宣伝になるのよ。だから、教えてあげて」
そうか。
良いアイテムが出たとなれば、ルドルのダンジョンの良い宣伝になる訳か。
なら、細かな事情は省いて教えちゃうか。
解体費もタダになるみたいだし。
「4階層の隠し部屋です。金色の宝箱から出ました」
俺が、マジックバッグの出所を教えると、一斉に冒険者達が動いた。
「4階層で金箱だと!?」
「隠し部屋だ!」
「マッピングのスキル持ちを探せ!」
「紙とペンだ! 急げ!」
解体場は、大騒ぎになり、冒険者達は次々にダンジョンへ向かった。
5分もすると、冒険者達はいなくなった。
俺とセレーネとサクラは、お互い目配せをして苦笑した。
確かに、4階層でマジックバッグを手に入れた。
だけど、あれはダンジョンの精霊が、特別にプレゼントしてくれたものだ。
あいつらは、空振りになるだろうが……。
まあ、それはそれで……。
「じゃあ、ギルドマスター。本当に、解体費用は無料にして貰えるんですね?」
「ああ。約束だからな。他の獲物も出して行けよ」
「わかりました! セレーネ、サクラ、獲物を出そう!」
俺達三人は、次々に獲物をマジックバックから取り出した。
ダンジョンボア、ダンジョンバット、ジャイアントバットなどなど。
すぐに場所がなくなり、俺達は訓練場の方に獲物を出し始めた。
ハゲールが焦った様な声を出した。
「お、おい! まだあるのか!」
「はい。それは、行きの分です。これから帰りの分も出します」
「な! なに~!」
「いや~、無料なんて大助かりですよ~! ハゲールさん、ありがとうございます!」
セレーネとサクラも笑顔で、ハゲールにお礼を述べた。
「ありがとうございまーす」
「感謝です! ギルドマスター!」
ハゲールの嘆き声が、解体場に響き渡った。
「そんなのありかー!」
だが、帰路が大変だった。
ルドルのダンジョンには、転移の魔方陣がない。
だから、1階層づつ、順番に上って行かなくてはならなかった。
地上に出て、冒険者ギルドに到着したのは、夜8時の鐘が鳴るちょっと前だった。
3人とも、クタクタに疲れていた。
受付のお姉さんに、俺が話しかける。
「すいません。ヒロトのパーティーですが、ジュリさんは?」
「今日は、早番だから、もう帰りましたよ」
「そうですか。ハゲールさんは?」
「ギルドマスターは、出かけてます。今日は戻らないです」
師匠の留守中、俺は朝晩、ジュリさんか、ギルドマスターのハゲールに、報告をする事になっている。
「じゃあ、伝言をお願いします。俺はヒロトです。俺のパーティーは10階層のボスを討伐して、無事帰還しました。以上です」
「え!? 10階層のボス!? あなた達が、ダンジョン踏破をして来たの?」
冒険者ギルドの中がざわついた。
だが、そんな事に構っていられない程、俺達は疲れていた。
「はい。オオヒクイドリとか、獲物がわんさかありますが、明日の朝又来るので、精算はその時に……。今日は疲れたので、帰って寝ます」
「ああ、はい。わかりました。お疲れ様でした」
俺達3人は、出口に向かう。
背中越しに声が聞こえた。
噂好きな冒険者たちが、早速俺たちを噂にしだした。
「おい、ウソだろ?」
「10階層のボスは、オオヒクイドリだぜ? あいつら素材は持ってたか?」
「明日の朝、持ってくるらしいぜ」
「マジか? まだ、あいつらガキじゃねえか!」
もう、すっかり辺りは、暗くなっていた。
夏だが、夜になると涼しくて、ルドルの街は過ごしやすい。
3人で家に向かって歩く。
街外れに来ると、カエルの鳴き声が聞こえて来た。
俺は、ボソリとつぶやいた。
「疲れたね」
サクラが続いた。
「疲れましたね」
セレーネも続いた。
「疲れ切ったよ」
それから、また3人で無言で家まで歩いた。
家では、チアキママが晩御飯を用意して、待っていてくれた。
俺達3人は、黙々とメシを食い、倒れるように寝てしまった。
*
――翌朝。
冒険者ギルドには、9時頃着いた。
俺たちは、ロビーの冒険者やギルド職員から、一斉に視線を向けられた。
ザワッとした空気が伝わってくる。
受付カウンターでは、ジュリさんと……。
ギルドマスターのハゲールが、お待ちかねだ。
「ヒロト! 10階層のボスを討伐したと報告を聞いたぞ!」
ハゲールは、俺と目が合うと、両腕を組み威圧して来る感じで、話し始めた。
どうも、ハゲールの口ぶりは、俺のダンジョン踏破を疑っているらしい。
「ええ。ボスのオオヒクイドリを持ってますよ。まだ、解体してないので、裏の解体場で出します」
俺は淡々とハゲールに答える。
10階層まで行って、倒して、帰って来たのは事実だ。
誇張も、抑揚も必要ない。
ハゲールは、グッ、っと眉間にシワを寄せた。
指で受付カウンターを、トントンと叩きながら話を続けた。
「それと、訓練場で随分暴れたと聞くがな?」
「相手が絡んで来たので。降りかかる火の粉は、いつ、何時《なんどき》でも、拳で払いのけますよ」
俺も、グッっと眉間にシワを寄せて、周囲を威圧するように答えた。
ロビーの冒険者たちが、小声で話しているのが聞こえてくる。
「何があった?」
「ヒロトのヤツが、訓練場で……」
「腕を斬り落としただと!?」
「間違いない。腕を再生してるところを見たぜ……」
ハゲールは、黙って俺をにらんでいる。
だが、ここでヘコヘコしてしまっては、いけない。
昨日、無理して10階層まで行って来たのは、俺たちがナメられないようにする為であり、冒険者として、パーティーとしての名を上げる為だ。
ハゲールは立場上、小言の一言でも言いたいのだろう。
俺は、それを受け入れる訳にはいかない。
俺は、からまれた。
からんで来た相手を、痛めつけた。
また、からまれれば、また、やる。
それだけだ。
この件で、俺は誰にも、絶対に頭を下げない。
俺は、そんな気持ちを込めて、ハゲールをにらみ返す。
しばらくして、ハゲールの方が折れた。
「ふん! 昨日の事は、いいさ。訓練中の事だからな! ギルドマスターたる私の関知する所ではない。さて、解体場でオオヒクイドリを見せて貰おう。来い!」
ハゲール、ジュリさんと俺たち3人は、裏の解体場に移動した。
後ろから、ロビーにいた冒険者や手の空いたギルド職員が、野次馬で付いて来る。
解体場には、解体担当、ブッチャーのミルコさんが待っていた。
「いよー! ヒロト! オオヒクイドリだってな!」
「ミルコさん。他にも色々獲物があるので、今日は、よろしくお願いします」
「ほう! 腕が鳴るね!」
俺とミルコさんを中心に、人の輪が出来た。
野次馬が多い。
獲物の大きさを知っているセレーネとサクラが、みんなを下がらせる。
「もっと下がってくださーい!」
「2メートル越えだから、下がって! 出せないから! もっと下がって!」
ハゲールとジュリさんも一緒になって、場内整理をした。
「よし! ヒロト! ここに出せ!」
俺はマジックバッグから、オオヒクイドリを取り出した。
空いたスペースにオオヒクイドリの巨体が横たわる。
周りの野次馬が、騒ぎ出した。
「うおおお!」
「デカイ!」
「初めて見た!」
セレーネとサクラは、野次馬が驚く様子を見てご機嫌だ。
「みんなびっくりしてるね~」
「平伏せ! 平伏すが良いぞ!」
ミルコさんとハゲールが、座り込んでオオヒクイドリをチェックしている。
「コンディションは、良いですね」
「うーむ。少し大きな個体じゃないか?」
「ですね。久しぶりの水揚げですから、成長していたのかもしれません」
「よし! 商人ギルドに、すぐ連絡を入れよう」
ハゲールが立ち上がり、宣言した。
「ヒロト達の戦果を確認した! 10階層のボス、オオヒクイドリで間違いない。ヒロトのパーティーは、ルドルのダンジョン踏破を達成した。ギルドマスターとして、これを認める」
解体場は、ちょっとした騒ぎになった。
野次馬達が口々に囃し立てる。
「おおお!」
「ヒロトも、やるもんだな」
「あの2人の女の子も新人だろ?」
「最年少記録か?」
「お貴族様の大人連れなら、年齢一桁の記録があったと思うが……」
「あの3人のように、若手だけで踏破したのは初だな」
「実質、最年少踏破記録だな」
サクラの狙い通りになっている。
これで俺たち3人に、ちょっかいをかけて来るヤツは、減るだろう。
俺が周りの反応に満足していると、ハゲールが違う話をふってきた。
「……ところでヒロト」
「何ですか?」
「オマエ……、今、マジックバッグから、オオヒクイドリを出したよな?」
「……」
「それ、ギルドの備品……? では、ないよな? 形が違う」
「ええ、これは俺の私物ですよ」
「私物? それ、どこで手に入れたんだ?」
野次馬の話し声が、ピタリと止んだ。
儲け話になるかもしれない、と俺とハゲールの会話に耳をそばだてている。
マジックバッグは、高価なアイテムだ。
それを、俺が持っている。
年齢的にも、冒険者のランク的にも、俺が高価なマジックバッグを金を出して買うのは不自然だ。
となれば、ダンジョンで見つけた! とみんな考えている。
野次馬冒険者たちの熱い視線が、俺に注がれる。
欲まみれで、ギラギラしている。
「いや……。それは、ちょっと……」
俺は、とっさに即答を避けた。
だが、ハゲールは、じっとりとした目で俺を見ている。
「ダンジョンで……、出たんだろ?」
「いや、まあ……」
「どこの階層だ?」
「まあ、それは、ちょっと……」
野次馬からのプレッシャーが凄い。
だけど、ダンジョンの精霊から貰ったと話すのは……。
ヒロトルートや精霊ルートが、バレる事になるから避けたいな。
「教えてくれたら、オオヒクイドリの解体費用は、サービスするぞ」
「えっ!? 無料ですか?」
「そうだ。他に獲物があるなら、それも解体費用を無料にしてやるぞ。だから! 階層を教えろ!」
なんだ?
なぜハゲールは、この情報にこんなに固執するんだ。
俺が困惑していると、受付のジュリさんが耳打ちしてきた。
「ヒロト君。そのマジックバックがダンジョンの宝箱から出たのなら、ルドルのダンジョンの良い宣伝になるのよ。だから、教えてあげて」
そうか。
良いアイテムが出たとなれば、ルドルのダンジョンの良い宣伝になる訳か。
なら、細かな事情は省いて教えちゃうか。
解体費もタダになるみたいだし。
「4階層の隠し部屋です。金色の宝箱から出ました」
俺が、マジックバッグの出所を教えると、一斉に冒険者達が動いた。
「4階層で金箱だと!?」
「隠し部屋だ!」
「マッピングのスキル持ちを探せ!」
「紙とペンだ! 急げ!」
解体場は、大騒ぎになり、冒険者達は次々にダンジョンへ向かった。
5分もすると、冒険者達はいなくなった。
俺とセレーネとサクラは、お互い目配せをして苦笑した。
確かに、4階層でマジックバッグを手に入れた。
だけど、あれはダンジョンの精霊が、特別にプレゼントしてくれたものだ。
あいつらは、空振りになるだろうが……。
まあ、それはそれで……。
「じゃあ、ギルドマスター。本当に、解体費用は無料にして貰えるんですね?」
「ああ。約束だからな。他の獲物も出して行けよ」
「わかりました! セレーネ、サクラ、獲物を出そう!」
俺達三人は、次々に獲物をマジックバックから取り出した。
ダンジョンボア、ダンジョンバット、ジャイアントバットなどなど。
すぐに場所がなくなり、俺達は訓練場の方に獲物を出し始めた。
ハゲールが焦った様な声を出した。
「お、おい! まだあるのか!」
「はい。それは、行きの分です。これから帰りの分も出します」
「な! なに~!」
「いや~、無料なんて大助かりですよ~! ハゲールさん、ありがとうございます!」
セレーネとサクラも笑顔で、ハゲールにお礼を述べた。
「ありがとうございまーす」
「感謝です! ギルドマスター!」
ハゲールの嘆き声が、解体場に響き渡った。
「そんなのありかー!」
24
お気に入りに追加
2,847
あなたにおすすめの小説
転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
ダンマス(異端者)
AN@RCHY
ファンタジー
幼女女神に召喚で呼び出されたシュウ。
元の世界に戻れないことを知って自由気ままに過ごすことを決めた。
人の作ったレールなんかのってやらねえぞ!
地球での痕跡をすべて消されて、幼女女神に召喚された風間修。そこで突然、ダンジョンマスターになって他のダンジョンマスターたちと競えと言われた。
戻りたくても戻る事の出来ない現実を受け入れ、異世界へ旅立つ。
始めこそ異世界だとワクワクしていたが、すぐに碇石からズレおかしなことを始めた。
小説になろうで『AN@CHY』名義で投稿している、同タイトルをアルファポリスにも投稿させていただきます。
向こうの小説を多少修正して投稿しています。
修正をかけながらなので更新ペースは不明です。
異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。
星の国のマジシャン
ファンタジー
引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。
そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。
本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。
この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる