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ルドルのダンジョン編

第27話 ジョブはシーフ・盗賊か?(ジョブ選択その1)

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 俺とセレーネは、ホーンラッビット狩りの功績で、Dランクの冒険者に昇格した。
 ギルドで受付のジュリさんから、Dランク冒険者の特典説明を受けている。

 1つは、口座。
 これは銀行口座みたいなものだ。
 俺とセレーネ、それぞれの口座に、今後は売上げたお金を振り込んでもらう事にした。

 そしてもう1つの特典は……。

「ジョブよ!」

 ジュリさんは、どこか誇らしげだ。

「2人は、ジョブが何だかわかってる?」

 俺とセレーネは、顔を見合わせて同時に答えた。

「最初からお願いします!」
「最初からお願いします!」

 ジュリさんは、引き続きお仕事モードでテキパキとジョブの説明を始めた。

「ジョブの効果は大きく3つあるわ。

 1 ステータスを一定割合上昇させる
 2 レベルアップの際に、ステータス上昇に+効果
 3 ジョブごとに、取得できるスキルがある

 他にもジョブ個別に何か効果があったりするけれど、大きくはこの3つね。効果が高いからブルーカード、Dランク以上でないと、ジョブにはつけない様に、ギルドで制限しているの」

 なるほどね。
 ジョブについては、前に師匠に少し話を聞いていた。
 師匠はシーフを勧めていたけれど、どうしようかな……。

「これを見て」

 ジュリさんは、1枚のチラシをカウンターに置いた。
 俺とセレーネは、そのチラシを覗き込んだ。


 -------------------


 ◇◇Dランクでは、基本職につく事が出来ます◇◇

 基本職:戦士系2職、魔法使い系2職、弓士系2職、盗賊系1職


 ◇◇大注目!◇◇

 以下の2系統は、なんと! 無料でジョブにつけます!


 ◆盗賊系(無料)

 1 シーフ(盗賊)

 ・素早さ30%アップ
 ・特別オマケスキル【宝箱探知】【隠し部屋探知】


<ギルドからの推薦コメント>

 上級職は、『暗殺者』、『斥候』、『トレジャーハンター』等です。
 人材不足のジョブで、パーティーや騎士団から常に要望のあるジョブです。


 ◆弓士系(無料)

 2 アーチャー(弓士)

 ・HP・持久力・器用10%アップ
 ・特別オマケスキル【弓術(初級)】


 3 狩人

 ・素早さ・器用15%アップ
 ・特別オマケスキル【解体】【片手斧】


<ギルドからの推薦コメント>
 上級職は、『弓兵』、『弓術士』、『レンジャー(野伏)』等です。

 適性が求められるジョブの為、常に人材不足です。
 特に騎士団から要望のあるジョブです。
 上級職弓兵になれば、騎士団への入団は間違いなし!


 ◇◇以下のジョブは有料になります◇◇

 ◆戦士系(5万ゴルド)

 4 戦士 パワー20%・持久力10%アップ

 5 剣士 パワー・持久力・素早さ10%アップ

 ◆魔法使い系(10万ゴルド)

 6 神官 魔力30%アップ 回復魔法適性

 7 魔法使い 魔力30%アップ 攻撃魔法適性


<ギルドからのコメント>

 上記4ジョブは、人気ジョブですが……、
 ご自分の適性に合わせて選択してください。


 -------------------


「盗賊系と弓士系は、無料なんですね……」

「正直、この2系統は、不人気ジョブなのよ」

 ジュリさんは、困った顔で話し続けた。

「盗賊系は、探知や探査のスキルを多く獲得できるジョブだから、ダンジョン探索や野外探索には、有利なジョブなのよ。ギルドとしても、盗賊系の冒険者を増やす方針よ」

「それで、無料でオマケでスキルも2つ付いて来ると?」

「そう! お得感を出してるのよ!」

 スキルをオマケって言うのも、どうかと思うけど……。
 でも、オマケで付いて来る【宝箱探知】【隠し部屋探知】は、欲しいスキルだな。
 魔物の素材だけでなく、お宝探しでも稼げると助かる。

 ただ盗賊系は……。

「盗賊系ジョブは、戦闘系ステータスの伸びがイマイチと聞いたんですが?」

「それは本当よ。単純な戦闘力なら、戦士系ジョブの方が上ね」

 そこなんだよな~。
 盗賊系ジョブの欠点は……。

 ジュリさんが話を続ける。

「でね~、パーティーだと盗賊系は、軽く見られがちで、荷物持ちさせられたりするのよね。新人もその事を知ってるから、不人気ジョブなのよ~」

 ちょっと愚痴っぽくなって来た。

「ああ、戦闘系のジョブの方が、カッコイイですしね」

「そうなの。ヒロト君の師匠の神速のダグは、例外よね。盗賊系で大成功した冒険者だわ。カッコいいし!」

 セレーネが目をキラキラさせながら、この話題に乗っかって来た。

「そうですよね~。ダグさんてカッコイイし、やさしいですよ~」

「そうよね~。だから弟子のヒロト君も、師匠と同じ盗賊系ジョブのシーフが良いと思うの~」

「ちょっと待って! ジュリさん、何か理屈がおかしい!」

「そんな事ないわよ~。ヒロト君は、将来イケメンになると思うわ。ゴツイ戦士とかは似合わないわよ~」

 なんか……。
 ジュリさんのその理屈って……。
 それで良いのか?
 ちょっと抵抗してみよう。

「いや、それなら、イケメン魔法使いの方が良くないですかぁ?」

 ジュリさんの顔が厳しくなった!
 空気が凍りつくようだ。

「もうね。みんな、魔法使い、魔法使いって……」

「あ……、はい……」

「だいたいねぇ。MPの低い魔法使いなんて、意味ないのよ。魔法1回使ったらMP切れ、みたいな魔法使いじゃ使い物にならないのよ。なのに、魔法使い希望者が多いのよ」

「ああ、それで有料に……」

「そうよ~。それでも、魔法使いが良いって言うのよ。訳を聞いたら、前衛は怖いから嫌だ~、だって……。なら冒険者なんかになるんじゃねーよ! この腑抜けが!」

 うわ! ジュリさん目が座ってる。

「神官も同じね! 僕は人を癒したいんですぅ。とか言っちゃて、本当は戦闘に関わりたくないだけの腰抜けよ。ヒール1回でMP切れって、ルドル以外のダンジョンじゃ使えないっつーの!」

 ジュリさんも色々溜まっているんだな……。

「あのー、ジュリさん。それで俺のジョブですが、真面目な話どうしたら良いと思いますか?」

「ああ、ごめんなさい。自分を見失っていたわ。ヒロト君の場合は、今後もパーティーのリーダーを続けるでしょ?」

「はい。その予定です」

 と言うか。
 ルドルの冒険者ギルドで、俺を入れてくれるパーティーがないんだよな。
 Fランのイメージが強すぎる。
 だから自分でパーティーを作って、新人をスカウトするしか選択肢がないんだ。

「だったら、盗賊系ジョブが良いと思うわ。前衛をやる戦士系ジョブや後衛の魔法使いや神官は希望者が多いから、ヒロト君のパーティーにスカウトするチャンスはあると思う。けれど、盗賊系で優秀な冒険者はなかなかいないの」

「だったら、自分でやれ、と?」

「そう。それに、前に見せて貰ったヒロト君のステータスでは、戦士系や魔法系のジョブには向かない……。と言う良りは、ステータス値が低すぎてジョブにつく意味がないわ。でも、盗賊系ならスキルが利用出来るから、今回ジョブにつくのを有効活用出来るでしょ?」

「確かにそうですね……。俺のステータスだと、仮に魔法使いのジョブについて魔力が30%上がっても、横棒でしょうから……。あの~、実は、俺、まだレベル1のままなんですよね……」

「え!?」
「え!?」

 ジュリさんとセレーネが同時に驚いた。
 まあ、そりゃ驚くわな。
 セレーネが遠慮がちに、申し訳なさそうに話した。

「私は、レベル3になりましたけど……」

 はい。セレーネさん、それが普通だと思います。
 正直、俺は自分のレベルの上がらなさを、気にしています。

 ジュリさんが、マジマジと俺を見ている。
 そして、しばらくしてから、ジュリさんが話し出した。

「ヒロト君、ひょっとしたら大当たりかもしれない」

「え!?」

 大当たり?
 それって、どういう意味だ?
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