左遷されたオッサン、移動販売車と異世界転生でスローライフ!?~貧乏孤児院の救世主!

武蔵野純平

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第五章 冒険者パーティーひるがお

第68話 一番 サード 岩鬼君

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 次の獲物を探して、ダンジョン二階層を探索する。
 俺はスマートフォンを出して画面を確認してみた。
 すると二階層の地図が表示され、現在地が赤丸で点滅している。

(これなら迷うことはないな!)

 ガイウスは三階層へ続く転移陣――つまり、この階層のゴールへ向かっているようだ。
 地図は地形と歩いてきたルートを表示してくれるが、魔物の位置は表示されないようだ。

 魔物の位置が表示されれば最高だが、それでも破格の性能だろう。

「おとーさん! おとーさん!」

 後ろを歩くソフィーが、楽しそうな声で俺を呼ぶ。
 何か楽しいことを思いついたのかなと、俺は笑顔で振り向く。

「うん? なんだい?」

 ――カシャ!

 ソフィーは、自分のスマホで記念写真を撮っていた。
 緊張感ゼロである。

 ガイウスが怖い顔をする。

「おい……リョージ……」

「スマン! ちゃんとやる!」

 だが、ソフィーの楽しそうな声が……。

「ガイウスのおじちゃんも一緒!」

「「イエーイ!」」

 ――カシャ!

 俺とガイウスは、仲良く肩を組んで写真に収まる。
 ガイウスよ!
 緊張感はどうした!

「ソフィーちゃん。探索中だから写真は後にしましょうね」

「はーい!」

 シスターエレナが、穏やかに注意をしてくれて探索再開である。

「リョージ。こうなったら早いとこ次の階層へ行こう」

「えっ? 三階層へ?」

「ああ。ここはソフィーちゃんお気に入りのホーンラビットが出るだろう? 訓練にならん。三階層はゴブリンが二匹出るからな。三階層で訓練しよう」

「わかった。じゃあ、俺がホーンラビットを倒す方針でやろう」

「うむ。棍棒を横に振れよ。リョージの力なら、棍棒が当たれば間違いなく倒せる!」

「よし!」

 俺とガイウスは歩きながら打ち合わせ、とっとと三階層へ進む方針に変更した。

「あっ! うさぎさん!」

 再びホーンラビットと遭遇!
 ソフィーが嬉しそうな声を上げるが……。
 すまんな、ガイウスから早く倒せと指示が出ているのだ。

「よし! リョージ! 行け!」

 ガイウスの気合いの入った声に押されて、俺は棍棒を握り直し、大きく素振りする。

「一番、サード、岩鬼君」

「なに?」

「気にするな。おまじないだ」

 これを言うと気分が出るのだ。
 自分がホームランバッターになった気がする。
 いや、岩鬼なら悪球打ちか?

 俺が前に出ると、ホーンラビットと目が合った。
 つぶらな瞳をクリクリさせ、鼻をヒクヒクさせている。

 うっ……罪悪感……。

 これはダメだ。
 さっさと倒して次の階層へ向かおう。

 俺は気合いを入れ直す。

 ホーンラビットがダッシュ!
 額の角を俺に向けて突っ込んで来る。
 俺は棍棒を構え、グッと腰を落とす。
 ホーンラビットが額の角で俺を串刺しにしようとジャンプした!
 絶好球!

「グワラゴラガッキン!」

 俺は謎の擬音を口にしながら、棍棒を横に振り抜く。
 ジャストミートだ!

「きゅーぅぅぅぅ……」

 真っ白なホーンラビットが遠くへ飛んでいった。
 見事なホームラン! 場外弾だ!

「あー! おとーさん!」

 あれ? ソフィーは、俺を非難する声色だ……。
 かわいいホーンラビットを倒すのは、やはり不味かったか?

 俺は恐る恐る振り返る。

「ソフィー、なに?」

「ホーンラビットは、毛皮、お肉、角が売れるんだよ。見えなくなっちゃったから回収出来ないよ!」

「あー! ごめん! 気をつけるよ!」

 娘に叱られてしまった。
 次からはダウンスイングでゴロを打とう!
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