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第十一章 文明開化

第357話 鉄道敷設現場

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 鉄道! 鉄道! 鉄道!
 グンマー連合王国にレールウェイ・レボリューション到来!

 そして、グンマー連合王国総長である俺は、鉄道敷設現場で頑張っている。

 王都キャランフィールドから南へ! 南へ!
 工事部隊は、魔の森を切り開き鉄道路線を急ピッチで敷設している。

 二十四時間三交代制。
 つまり一日八時間勤務を三チームでグルグル回す。

 木を切り倒し、切り倒した木の枝を打ち払い、機関車が牽引する貨物列車に丸太を運ぶ。
 地ならしを行い、砕石を敷き、鉄製のレールを敷設する。

 鉄道敷設現場は、活気に溢れていた。

 俺の仕事は、鉄道路線の周りに魔法で壁を作ることだ。
 今回の計画は、魔物が徘徊し危険な魔の森の中に鉄道を通す。

 となれば、魔物が列車の運行を妨げないように、列車が魔物に襲われないように安全対策を施さなければならない。

 それでも、この工事手法は、過去に実施しているので手慣れている。
 北部縦貫道路――王都キャランフィールドから商業都市ザムザを結ぶ道路を開通させる時に使った手法なのだ。

 俺は護衛に黒丸師匠とルーナ先生を連れて工事現場に来ている。

「これだけ現場に出て働く王様も珍しいのである」

 俺を護衛する黒丸師匠が好意的な声で意見を述べた。
 王様だの総長だのといっても、結局は国が豊かになり安定しなければ、俺の存在は意味がないのだ。

 それに、エリザ女王国とのイザコザもある。

「海賊が大人しくしている間に、経済力を上げておきたいのです」

「ふむ。冬の間が勝負であるな」

 冬になり北の海が荒れだしてから、海賊は活動を控えたらしい。
 海が荒れているので、商船の運航が減っているのもあるだろう。
 海賊の被害報告はピタリと収まった。

 じいが、エリザ女王国へ行き、何やら謀略を仕掛けるようだが、すぐに結果は出ない。

 今は、急がば回れの精神で、『経済力を上げ、エリザ女王国が経済面でグンマー連合王国に太刀打ちできない』と、エリザ女王国に思わせたいのだ。

 俺が工事現場の前方で石壁を魔法で生成していると、後ろの方で悲鳴が上がった。

「うわー! オークだ!」

 人族の作業員がワラワラと逃げてくる。

 どうやら俺がミスしたらしい。
 オークがいたのに気付かず壁を生成してしまったようだ。

 工事現場が騒がしくなった。

 だが、心配無用。
 現れたオークの首がズルリと地面に落ちた。
 ルーナ先生が風魔法で、不可視の刃を放ったのだ。

 ルーナ先生は、倒れたオークに近づくとオークの腹の肉をつまんだ。

「油ののった良いオーク肉。晩のおかずが一品増えた。みんなラッキー」

 ルーナ先生の言葉に、工事現場がドッと笑いに包まれた。
 ルーナ先生とって、オークごときは食肉でしかない。

 倒されたオークには、冒険者ギルドから派遣された警備の冒険者が群がり、あっという間に解体され、炊事役で雇われたおばちゃんにオーク肉が渡された。

「アンジェロ少年。そろそろ時間であるな」

 黒丸師匠が太陽の位置を見て移動を告げた。
 午前十時頃だろう。

 俺はキリの良いところまで壁を生成すると、転移魔法マドロス王国へ移動した。


 *


 アンジェロが鉄道工事を行っている頃、じいことコーゼン伯爵は、エリザ女王国で活動をしていた。
 表向きは、友好的な外交を装いながら、エリザ女王国女王エリザ・グロリアーナの代わりになりそうな王家の血を引く人物を探していた。

「ふう。なかなか、おらなんだな」

 しかし、コーゼン伯爵の努力は実らない。
 コーゼン伯爵は部下のグンマー連合王国貴族がエリザ女王国内の王族貴族事情を探り、市井の噂話を商人に扮したエルキュール族が探る。

 だが、女王エリザ・グロリアーナは、自分の政敵になりそうな人物を念入りに始末していたのだ。
 コーゼン伯爵は、大使館の自室でため息をついた。

 するとドアがノックされ、部下であるランデル子爵が顔を出した。

「コーゼン伯爵。よろしいか?」

 ランデル子爵は、顔が赤く少々酒臭い。
 貴族主催のパーティーで情報収集をしてきたのだ。

 コーゼン伯爵は、ランデル子爵に応接ソファーをすすめ、自分はランデル子爵の対面のソファーに座った。

「こんな物を渡されました」

 ランデル子爵は懐から小さな羊皮紙の切れ端を取り出した。
 コーゼン伯爵は、羊皮紙の切れ端に目を通す。

『リージェント広場 明日 正午』

「むう……」

 思わずコーゼン伯爵はうなる。

 場所と時間だけが指定された手紙。
 誰からなのか?
 目的が何なのか?
 これではわからない。

 ランデル子爵は、手をこすり合わせながら、コーゼン伯爵に告げた。

「明日、リージェント広場に行きます」

 ランデル子爵の声は微かに震えていたが、断固とした意思を感じさせた。
 コーゼン伯爵は、ランデル子爵の気持ちを確かめる。

「危険ではないかな? これは罠かもしれんのじゃぞ?」

「罠の可能性もあります。ですが……、我らの活動で今のところ成果が出ていません。で、あれば、この手紙……、この誘いに乗ることで変化を起こすのも一興ではありませんか?」

 ランデル子爵は、ニッと笑って見せたが、笑いが引きつっていた。

 ランデル子爵は外交畑の人間で、荒事は得意ではないのだ。
 貴族のたしなみとして剣を使えるが、平民よりは強いが、貴族の中では下の方の腕前である。
 罠の可能性を考えると怖い。

 だが、それでも行くというランデル子爵の強い気持ちに、コーゼン伯爵は内心喜びながらも、いかめしい表情を崩さなかった。

「わかった。ならば、ワシも貴殿をバックアップしよう。明日、正午、リージェント広場じゃ!」
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