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第十一章 文明開化
第355話 じい殿大忙し
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俺と黒丸師匠は、港の軍事区画を後にした。
ふと空を見上げると、グースが一機飛んでいる。
「じい殿である!」
目の良い黒丸師匠が、じいが乗った機体だと気が付いた。
俺と黒丸師匠がグースに向かって手を振ると、後部座席でじいが手を振り返すのが見えた。
「エリザ女王国から帰ってきたのであるか?」
「ええ。多分、またとんぼ返りすると思います。じいから報告を聞きましょう」
俺と黒丸師匠は、転移魔法を使って急いで執務室へ戻った。
しばらくすると、俺の執務室にじいがやって来た。
「ふう。ただいま、戻りました」
「お疲れ様。ありがとう。どう?」
「ダメですじゃ。ノラリクラリですじゃ」
エリザ女王国との交渉はあまり上手くいっていない。
じいは、エリザ女王国の女王エリザ・グロリアーナと面会し、黄金航路の海賊について抗議をした。
だが、女王エリザ・グロリアーナは、すっとぼけて言質を取らせないそうだ。
『海賊? それは物騒だ。商人たちに注意を促そう』
『女王陛下。海賊はエリザ女王国の手の者であるそうですじゃ!』
『知らぬぞ』
『女王陛下が、お命じになったのでは?』
『そんなことをするわけがなかろう。我が国と貴国は、貿易を通じて密に交流しているではないか』
『では、海賊のことは知らぬと?』
『うむ。知らん。我が国の軍船にパトロールをさせよう。貴国とは、協力をせねばな』
というような会話が、じいと女王エリザ・グロリアーナの間で交されたそうだ。
じいは、商務大臣、海軍大臣とも会談しているが、似たような会話が続くばかりで、まったく進展がない。
俺は、応接ソファーに腰掛けるじいと話しながら、ため息をついた。
「海賊は証拠を残さないしね」
「はい。そして冬になり海が荒れたら、海賊が出没しなくなりましたのじゃ」
「喜ばしいことだけれど、尻尾はつかめなかったね」
「アンジェロ様の言う通りですじゃ。面目ない」
「いや、気にしないで! あちらも慎重にやっているのだろう」
海賊は、アルドギスル兄上の国に所属する商船だけを狙い撃ちにしていた。
そして、俺とアルドギスル兄上が不仲だと噂を流し、俺とアルドギスル兄上の仲を裂こうと画策したことが、じいのスパイ活動で判明している。
俺とアルドギスル兄上の兄弟仲は、非常に良い。
だが、他人が悪い噂を聞いたら『ひょっとして……』、『本当は仲が悪いのでは……』などと、要らぬ誤解をするかもしれない。
何よりもアルドギスル兄上の部下がアルドギスル兄上を担ぎ上げるとか、俺の部下がアルドギスル兄上を抹殺しようと考えるとか、そういった不測の事態を起こさないようにしなくてはならない。
お家騒動は、どこの王家にも付き物なのだ。
じいは、お茶を一口飲むと姿勢を正した。
「アンジェロ様。確認しますが、エリザ女王国との武力衝突や占領は、お望みではないのですね?」
「出来れば避けたい。貿易への影響が心配だし、これ以上支配領域を広げる必要はない」
俺はじいに答えた。
じいは、無言でうなずく。
「だが、海賊は別だ。エリザ女王国の息がかかっていようと、海軍で叩く!」
「それは問題ないでしょう。海賊はエリザ女王国の仕込みですが、エリザ女王国は海賊のことを知らぬと公式に回答しております。さて、それでですな……」
じいが、首をかしげアゴに手をあてる。
何か考えているな……。
「じい。何か仕掛けるの?」
「はい。守ってばかりは性に合いませんな。そろそろ、攻めに転じる頃合いかと」
じいが、ニマリと笑った。
何をする気なのだろう?
「俺は海軍の整備で忙しいから、じいに任せるよ。好きにやって」
「ありがとうございます」
ふと空を見上げると、グースが一機飛んでいる。
「じい殿である!」
目の良い黒丸師匠が、じいが乗った機体だと気が付いた。
俺と黒丸師匠がグースに向かって手を振ると、後部座席でじいが手を振り返すのが見えた。
「エリザ女王国から帰ってきたのであるか?」
「ええ。多分、またとんぼ返りすると思います。じいから報告を聞きましょう」
俺と黒丸師匠は、転移魔法を使って急いで執務室へ戻った。
しばらくすると、俺の執務室にじいがやって来た。
「ふう。ただいま、戻りました」
「お疲れ様。ありがとう。どう?」
「ダメですじゃ。ノラリクラリですじゃ」
エリザ女王国との交渉はあまり上手くいっていない。
じいは、エリザ女王国の女王エリザ・グロリアーナと面会し、黄金航路の海賊について抗議をした。
だが、女王エリザ・グロリアーナは、すっとぼけて言質を取らせないそうだ。
『海賊? それは物騒だ。商人たちに注意を促そう』
『女王陛下。海賊はエリザ女王国の手の者であるそうですじゃ!』
『知らぬぞ』
『女王陛下が、お命じになったのでは?』
『そんなことをするわけがなかろう。我が国と貴国は、貿易を通じて密に交流しているではないか』
『では、海賊のことは知らぬと?』
『うむ。知らん。我が国の軍船にパトロールをさせよう。貴国とは、協力をせねばな』
というような会話が、じいと女王エリザ・グロリアーナの間で交されたそうだ。
じいは、商務大臣、海軍大臣とも会談しているが、似たような会話が続くばかりで、まったく進展がない。
俺は、応接ソファーに腰掛けるじいと話しながら、ため息をついた。
「海賊は証拠を残さないしね」
「はい。そして冬になり海が荒れたら、海賊が出没しなくなりましたのじゃ」
「喜ばしいことだけれど、尻尾はつかめなかったね」
「アンジェロ様の言う通りですじゃ。面目ない」
「いや、気にしないで! あちらも慎重にやっているのだろう」
海賊は、アルドギスル兄上の国に所属する商船だけを狙い撃ちにしていた。
そして、俺とアルドギスル兄上が不仲だと噂を流し、俺とアルドギスル兄上の仲を裂こうと画策したことが、じいのスパイ活動で判明している。
俺とアルドギスル兄上の兄弟仲は、非常に良い。
だが、他人が悪い噂を聞いたら『ひょっとして……』、『本当は仲が悪いのでは……』などと、要らぬ誤解をするかもしれない。
何よりもアルドギスル兄上の部下がアルドギスル兄上を担ぎ上げるとか、俺の部下がアルドギスル兄上を抹殺しようと考えるとか、そういった不測の事態を起こさないようにしなくてはならない。
お家騒動は、どこの王家にも付き物なのだ。
じいは、お茶を一口飲むと姿勢を正した。
「アンジェロ様。確認しますが、エリザ女王国との武力衝突や占領は、お望みではないのですね?」
「出来れば避けたい。貿易への影響が心配だし、これ以上支配領域を広げる必要はない」
俺はじいに答えた。
じいは、無言でうなずく。
「だが、海賊は別だ。エリザ女王国の息がかかっていようと、海軍で叩く!」
「それは問題ないでしょう。海賊はエリザ女王国の仕込みですが、エリザ女王国は海賊のことを知らぬと公式に回答しております。さて、それでですな……」
じいが、首をかしげアゴに手をあてる。
何か考えているな……。
「じい。何か仕掛けるの?」
「はい。守ってばかりは性に合いませんな。そろそろ、攻めに転じる頃合いかと」
じいが、ニマリと笑った。
何をする気なのだろう?
「俺は海軍の整備で忙しいから、じいに任せるよ。好きにやって」
「ありがとうございます」
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