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第十一章 文明開化
第336話 グンマー連合改造論!
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――八月三日。王都キャランフィールド。
キャランフィールド郊外に設営した特設会議場に、旧メロビクス王大国貴族が多く集まった。
特設会議場は俺とルーナ先生が魔法で外側を作り、ドワーフやリス族のキューたちが木工細工で内装を整えた。
貴族らしい優雅さはないが、会議を行う用は足りる。
質実剛健な感じで、俺は嫌いじゃない。
「では、これより! 会議を始めます!」
ギュイーズ侯爵が開会を宣言した。
ギュイーズ侯爵は、俺の婚約者アリーさんの祖父である。
俺の強力な与党であるので、議長役をお願いしたのだ。
『ギュイーズ侯爵は、アンジェロ総長の後見である』
というアピールを、旧メロビクス王大国貴族たちにしているのだ。
特設会議場は、地球世界の国連の会議場をイメージして作った。
円形に席が配置されていて、円の一角に俺の席がある。
俺の後ろに議長席と副議長席を配置し、議長席にギュイーズ侯爵が、副議長席にフォーワ辺境伯が座る。
「では、グンマー連合王国総長アンジェロ陛下より、今後の計画についてご説明をいただきます」
俺は立ち上がり、会議場の旧メロビクス王大国貴族たちへ向け話し始めた。
「貴族諸君! 私は知っている! 君たちの中に不満を持つ者がいるということを!」
俺の声は風魔法に乗って会場中に響き渡った。
会場の隅に控えているルーナ先生が放つ魔法だ。
会場の隅にも俺の声はきちんと届いているようだ。
旧メロビクス王大国貴族たちの反応は様々で、興味深い顔をする者もいれば、不快そうに顔をしかめる者もいる。
なかには俺から視線をそらしたり、口を尖らせ俺をにらみつけたりする者もいた。
会場の隅では、黒丸師匠が護衛として目を光らせている。
不満顔の旧メロビクス王大国貴族を警戒しているので、何か起っても大丈夫だ。
俺は安心して話を続ける。
「現在、グンマー連合王国の経済は好調で、潤っている領地が多いと思うが……どうかな?」
俺は顔を知っている貴族に視線を送った。
何人かの貴族が笑い声を上げ、『いや~、それほどでも!』とか、『ぼちぼちですよ!』とか、満更でもない声を上げた。
「ああ、儲かっているようで大変結構だ! 一方で、それほど潤っていない領地もあると聞くが……どうかな?」
今度は、会議場にうなり声が起った。
不満顔で『ウチは置いてきぼりだ……』などと、つぶやく貴族もボチボチいる。
不満を持つ旧メロビクス王大国貴族は、俺が予想していたよりも多そうだ。
「だが、心配は無用だ! 私はグンマー連合王国の発展のために、ある計画を策定した。この計画は、諸君らの領地に潤いをもたらすであろう!」
会場がザワつき始めた。
良い感じだ。
俺が何を話すのか、貴族たちは興味を持っている。
「テーブルに二枚の書類が伏せられている。この計画の概要を記した書類だ! 裏返して、書類を見たまえ!」
会議場のテーブルには、あらかじめ二枚の書類を伏せて置いておいた。
一枚は計画の概要を記した文章。
もう一枚は、鉄道の路線図などを書き込んだ地図だ。
計画のタイトルは――グンマー連合改造論だ!
「私、アンジェロ・フリージアは、今ここに『グンマー連合改造論』の開始を宣言する!」
「「「「「おおお!」」」」」
グンマー連合改造論の要旨はシンプルだ。
・人の流れと物の流れをよくして、経済を発展させましょう。
・そのために、鉄道網と道路網を整備しましょう。
・移動速度が速くするために、木炭自動車や軽便鉄道を販売します。
・木炭自動車の工房を旧メロビクス王大国王都メロウリンクに設立します。
現在、ギュイーズ侯爵とフォーワ辺境伯の領地は非常に潤っている。
軽便鉄道で人と物の流れが活発だからだ。
その辺りの事情は、この会場にいる旧メロビクス王大国貴族もわかっているのだろう。
会場中から熱っぽい視線が俺に注がれているのがわかる。
ふふ、どうやら釣れたな!
*
エリザ女王国の女王エリザ・グロリアーナが、謁見の間でドレイク船長と面会した。
ドレイク船長は三十代前半の色男で、巻き毛の金髪を後ろで束ね、日に焼けた首筋を見せつけていた。
「女王陛下!」
ドレイク船長は、胸に手をあてひざまずく。
女王エリザ・グロリアーナは、潮の香りをかいだ気がした。
「よい! 楽にせよ!」
「はっ!」
ドレイク船長がスッとよどみない動作で立ち上がる。
長身に白いシャツがまぶしい。
「卿の艦隊は何隻だ?」
「三隻でございます。女王陛下」
「ふむ……頼みたい仕事がある」
「何なりとお申し付け下さい。女王陛下」
ドレイク船長は、貴族ではない。
平民の商人である。
商人といっても、平和的な商人ではない。
武装商船に乗り、交易もすれば海賊退治もする。
国に雇われて傭兵として海戦に参加することもある。
見た目の色男ぶりに似合わず、なかなか荒っぽい男なのだ。
ドレイク船長は、女王エリザ・グロリアーナが即位する前から彼女のために活動をして来た。
平民でありながら、女王の直臣に近い立場を得ている。
爵位を得るのではないかと噂され、ドレイク船長自身も爵位を望んでいた。
そして、女王エリザ・グロリアーナは、爵位を持たぬドレイク船長を『卿』と呼んでいる。
貴族と同様の呼び方をすることで、ドレイク船長に期待を持たせ、自分に協力をさせるためだ。
女王エリザ・グロリアーナは、表情を一切変えず淡々と言い渡した。
「グンマー連合王国に楔を打ち込む。卿の力を貸せ」
「ほう! 面白そうですな!」
キャランフィールド郊外に設営した特設会議場に、旧メロビクス王大国貴族が多く集まった。
特設会議場は俺とルーナ先生が魔法で外側を作り、ドワーフやリス族のキューたちが木工細工で内装を整えた。
貴族らしい優雅さはないが、会議を行う用は足りる。
質実剛健な感じで、俺は嫌いじゃない。
「では、これより! 会議を始めます!」
ギュイーズ侯爵が開会を宣言した。
ギュイーズ侯爵は、俺の婚約者アリーさんの祖父である。
俺の強力な与党であるので、議長役をお願いしたのだ。
『ギュイーズ侯爵は、アンジェロ総長の後見である』
というアピールを、旧メロビクス王大国貴族たちにしているのだ。
特設会議場は、地球世界の国連の会議場をイメージして作った。
円形に席が配置されていて、円の一角に俺の席がある。
俺の後ろに議長席と副議長席を配置し、議長席にギュイーズ侯爵が、副議長席にフォーワ辺境伯が座る。
「では、グンマー連合王国総長アンジェロ陛下より、今後の計画についてご説明をいただきます」
俺は立ち上がり、会議場の旧メロビクス王大国貴族たちへ向け話し始めた。
「貴族諸君! 私は知っている! 君たちの中に不満を持つ者がいるということを!」
俺の声は風魔法に乗って会場中に響き渡った。
会場の隅に控えているルーナ先生が放つ魔法だ。
会場の隅にも俺の声はきちんと届いているようだ。
旧メロビクス王大国貴族たちの反応は様々で、興味深い顔をする者もいれば、不快そうに顔をしかめる者もいる。
なかには俺から視線をそらしたり、口を尖らせ俺をにらみつけたりする者もいた。
会場の隅では、黒丸師匠が護衛として目を光らせている。
不満顔の旧メロビクス王大国貴族を警戒しているので、何か起っても大丈夫だ。
俺は安心して話を続ける。
「現在、グンマー連合王国の経済は好調で、潤っている領地が多いと思うが……どうかな?」
俺は顔を知っている貴族に視線を送った。
何人かの貴族が笑い声を上げ、『いや~、それほどでも!』とか、『ぼちぼちですよ!』とか、満更でもない声を上げた。
「ああ、儲かっているようで大変結構だ! 一方で、それほど潤っていない領地もあると聞くが……どうかな?」
今度は、会議場にうなり声が起った。
不満顔で『ウチは置いてきぼりだ……』などと、つぶやく貴族もボチボチいる。
不満を持つ旧メロビクス王大国貴族は、俺が予想していたよりも多そうだ。
「だが、心配は無用だ! 私はグンマー連合王国の発展のために、ある計画を策定した。この計画は、諸君らの領地に潤いをもたらすであろう!」
会場がザワつき始めた。
良い感じだ。
俺が何を話すのか、貴族たちは興味を持っている。
「テーブルに二枚の書類が伏せられている。この計画の概要を記した書類だ! 裏返して、書類を見たまえ!」
会議場のテーブルには、あらかじめ二枚の書類を伏せて置いておいた。
一枚は計画の概要を記した文章。
もう一枚は、鉄道の路線図などを書き込んだ地図だ。
計画のタイトルは――グンマー連合改造論だ!
「私、アンジェロ・フリージアは、今ここに『グンマー連合改造論』の開始を宣言する!」
「「「「「おおお!」」」」」
グンマー連合改造論の要旨はシンプルだ。
・人の流れと物の流れをよくして、経済を発展させましょう。
・そのために、鉄道網と道路網を整備しましょう。
・移動速度が速くするために、木炭自動車や軽便鉄道を販売します。
・木炭自動車の工房を旧メロビクス王大国王都メロウリンクに設立します。
現在、ギュイーズ侯爵とフォーワ辺境伯の領地は非常に潤っている。
軽便鉄道で人と物の流れが活発だからだ。
その辺りの事情は、この会場にいる旧メロビクス王大国貴族もわかっているのだろう。
会場中から熱っぽい視線が俺に注がれているのがわかる。
ふふ、どうやら釣れたな!
*
エリザ女王国の女王エリザ・グロリアーナが、謁見の間でドレイク船長と面会した。
ドレイク船長は三十代前半の色男で、巻き毛の金髪を後ろで束ね、日に焼けた首筋を見せつけていた。
「女王陛下!」
ドレイク船長は、胸に手をあてひざまずく。
女王エリザ・グロリアーナは、潮の香りをかいだ気がした。
「よい! 楽にせよ!」
「はっ!」
ドレイク船長がスッとよどみない動作で立ち上がる。
長身に白いシャツがまぶしい。
「卿の艦隊は何隻だ?」
「三隻でございます。女王陛下」
「ふむ……頼みたい仕事がある」
「何なりとお申し付け下さい。女王陛下」
ドレイク船長は、貴族ではない。
平民の商人である。
商人といっても、平和的な商人ではない。
武装商船に乗り、交易もすれば海賊退治もする。
国に雇われて傭兵として海戦に参加することもある。
見た目の色男ぶりに似合わず、なかなか荒っぽい男なのだ。
ドレイク船長は、女王エリザ・グロリアーナが即位する前から彼女のために活動をして来た。
平民でありながら、女王の直臣に近い立場を得ている。
爵位を得るのではないかと噂され、ドレイク船長自身も爵位を望んでいた。
そして、女王エリザ・グロリアーナは、爵位を持たぬドレイク船長を『卿』と呼んでいる。
貴族と同様の呼び方をすることで、ドレイク船長に期待を持たせ、自分に協力をさせるためだ。
女王エリザ・グロリアーナは、表情を一切変えず淡々と言い渡した。
「グンマー連合王国に楔を打ち込む。卿の力を貸せ」
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