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第十一章 文明開化
第322話 神々の争い
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神々の世界は、再び紛糾していた。
女神ジュノーが管理している世界で、地球の神の使いが殺害された……と地球の神々から訴えがあった。
しかし、女神ジュノーから、『地球の神々が勝手に転生者を送り込み、こちらの世界を大混乱に陥れた。相次ぐ戦争で大勢の民が死んだ』と逆に訴えがあったのだ。
今日は始祖の神による審判が行われる日である。
全ての世界の神々が一堂に会する。
女神ジュノーと地球の神々の言い分は、果たしてどちらが正しいのか?
今日、始祖の神により判断が下される。
始祖の神が管理する神界の会合場所には、沢山の神々が集まっていた。
会合場所の中央には始祖の神が座り、その前には女神ジュノーと地球の神々が対決するように座っていた。
女神ジュノーの部下神である女神ミネルヴァと神メルクリウスは、女神ジュノーの後ろに陣取った。
始祖の神が、そこにいることは誰にでもわかるが、その姿は強力な魔力のベールに遮られて、誰にも見ることが出来ない。
他の神々の席はスタジアムのように階段状になっており、沢山の神々の目が女神ジュノーと地球の神々をジッと黙ってみている。
やがて、始祖の神の部下神、鹿型の神が厳かに審判の開始を告げた。
「では、これより! 女神ジュノーと地球の神々の争いについて審判を開始する!」
会場の空気は重い。
女神ジュノーと地球の神々の因縁を、他の神々も知っているからだ。
女神ジュノーは元々地球の夫婦神だったが、夫は現在の地球の神々に殺されてしまった。
神々の争いに敗れた女神ジュノーたちは、現在アンジェロたちが住む世界の神となった。
両者には、そんな因縁があるのだ。
まず、最初に鹿型の神に促されて、地球の神々が発言した。
「女神ジュノーは、我ら地球の神の使いを殺害した! これは重罪である!」
「以前も地球に無許可で侵入し、自らの世界に地球人を転生させた!」
「女神ジュノーは、好戦的で手段を選ばない! このような暴挙は許されない!」
地球の神々の三人は、口々に女神ジュノーを非難した。
女神ミネルヴァと神メルクリウスは、眉根を寄せ不快感をあらわにしていた。
だが、女神ジュノーは、ジッと静かに地球の神々を見ている。
激高しない女神ジュノーを見て、女神ミネルヴァは珍しいと驚いた。
「ジュノー? どうしたのだ?」
「ミネルヴァ。何も心配いらないわ。始祖の神様は全てお見通しよ。私たちが、あんな風に無駄吠えする必要はないの」
「ほう……」
女神ミネルヴァは、女神ジュノーの落ち着きを見て、愁眉を開く。
地球の神々の言い分を、心を穏やかにして聞いてみれば、同じ内容を表現を変えて繰り返しているだけだ。
つまり、地球の神々は、女神ジュノーたちを攻める材料が限られているのだ。
(これならば負けることはあるまい)
女神ミネルヴァも、ジッと機会を待つ。
地球の神々の発言がループしてしまったので、鹿型の神が発言を止めた。
「地球の神々の言い分は、よく分かった。先ほどから同じ話の繰り返しになっているぞ。他に何かあるか?」
「「「……」」」
地球の神々は言葉に詰まった。
鹿型の神は、すかさず女神ジュノーに発言の機会を与えた。
「では、女神ジュノーの話を聞こう」
「ありがとうございます。皆さんご存じの通り、私、ミネルヴァ、メルクリウスは、謹慎をしておりました。ですので、地球の神の使いが殺されたことは、知りませんでした。そして――」
女神ジュノーの口から、地球の神々の悪行、妨害行為が語られた。
女神ジュノーは、事実に即した内容を誇張せずに淡々と語る。
事実を告げる。それが最も効果的だと、女神ジュノーはわかっていたのだ。
他の神々は、女神ジュノーの話を聞き、地球の神々のやり口に非難を口にし始めた。
「いくらなんでも、やり過ぎじゃないか?」
「お互いの世界には、手を出さない約定がある」
「うむ……。乱暴者を転生させるなど、やり口が悪質だ」
地球の神々の旗色が悪くなってきた。
地球の神の一人が堪らず立ち上がり大声で怒鳴った。
「ウソだ! こんなのは作り話だ!」
「不規則発言は控えるように!」
すぐに進行役の鹿型の神が注意する。
だが地球の神は聞き入れない。
それどころか、三人の地球の神々が一斉にわめき立てだした。
「いや! 私は自分の潔白を訴えているだけですよ!」
「然り! このような作り話で、人を陥れようとするなど品性下劣!」
「まったく、バカバカしい! みなさん! みなさんがご存じの通り、我ら地球世界は、文化文明が発展し大きくポイントをリードしています。他の世界を妨害する必要はないのですよ!」
「そうだ! そうだ!」
地球の神々は明らかにウソをついていた。
だが、『ポイントをリードしているのだから、他者を妨害する必要は無い』という理屈は、地球の神々の主張に一定の説得力を持たせた。
他の神々は、どちらの言うことが正しいのか、わからなくなった。
旗色が悪くなりそうな気配に女神ミネルヴァと神メルクリウスは、焦りを感じ目だけ動かして会場の様子を探った。
(不味い……このままでは!)
女神ミネルヴァが、舌打ちする。
そんな中、女神ジュノーは下を向き密かに、ほくそ笑んでいた。
女神ジュノーが管理している世界で、地球の神の使いが殺害された……と地球の神々から訴えがあった。
しかし、女神ジュノーから、『地球の神々が勝手に転生者を送り込み、こちらの世界を大混乱に陥れた。相次ぐ戦争で大勢の民が死んだ』と逆に訴えがあったのだ。
今日は始祖の神による審判が行われる日である。
全ての世界の神々が一堂に会する。
女神ジュノーと地球の神々の言い分は、果たしてどちらが正しいのか?
今日、始祖の神により判断が下される。
始祖の神が管理する神界の会合場所には、沢山の神々が集まっていた。
会合場所の中央には始祖の神が座り、その前には女神ジュノーと地球の神々が対決するように座っていた。
女神ジュノーの部下神である女神ミネルヴァと神メルクリウスは、女神ジュノーの後ろに陣取った。
始祖の神が、そこにいることは誰にでもわかるが、その姿は強力な魔力のベールに遮られて、誰にも見ることが出来ない。
他の神々の席はスタジアムのように階段状になっており、沢山の神々の目が女神ジュノーと地球の神々をジッと黙ってみている。
やがて、始祖の神の部下神、鹿型の神が厳かに審判の開始を告げた。
「では、これより! 女神ジュノーと地球の神々の争いについて審判を開始する!」
会場の空気は重い。
女神ジュノーと地球の神々の因縁を、他の神々も知っているからだ。
女神ジュノーは元々地球の夫婦神だったが、夫は現在の地球の神々に殺されてしまった。
神々の争いに敗れた女神ジュノーたちは、現在アンジェロたちが住む世界の神となった。
両者には、そんな因縁があるのだ。
まず、最初に鹿型の神に促されて、地球の神々が発言した。
「女神ジュノーは、我ら地球の神の使いを殺害した! これは重罪である!」
「以前も地球に無許可で侵入し、自らの世界に地球人を転生させた!」
「女神ジュノーは、好戦的で手段を選ばない! このような暴挙は許されない!」
地球の神々の三人は、口々に女神ジュノーを非難した。
女神ミネルヴァと神メルクリウスは、眉根を寄せ不快感をあらわにしていた。
だが、女神ジュノーは、ジッと静かに地球の神々を見ている。
激高しない女神ジュノーを見て、女神ミネルヴァは珍しいと驚いた。
「ジュノー? どうしたのだ?」
「ミネルヴァ。何も心配いらないわ。始祖の神様は全てお見通しよ。私たちが、あんな風に無駄吠えする必要はないの」
「ほう……」
女神ミネルヴァは、女神ジュノーの落ち着きを見て、愁眉を開く。
地球の神々の言い分を、心を穏やかにして聞いてみれば、同じ内容を表現を変えて繰り返しているだけだ。
つまり、地球の神々は、女神ジュノーたちを攻める材料が限られているのだ。
(これならば負けることはあるまい)
女神ミネルヴァも、ジッと機会を待つ。
地球の神々の発言がループしてしまったので、鹿型の神が発言を止めた。
「地球の神々の言い分は、よく分かった。先ほどから同じ話の繰り返しになっているぞ。他に何かあるか?」
「「「……」」」
地球の神々は言葉に詰まった。
鹿型の神は、すかさず女神ジュノーに発言の機会を与えた。
「では、女神ジュノーの話を聞こう」
「ありがとうございます。皆さんご存じの通り、私、ミネルヴァ、メルクリウスは、謹慎をしておりました。ですので、地球の神の使いが殺されたことは、知りませんでした。そして――」
女神ジュノーの口から、地球の神々の悪行、妨害行為が語られた。
女神ジュノーは、事実に即した内容を誇張せずに淡々と語る。
事実を告げる。それが最も効果的だと、女神ジュノーはわかっていたのだ。
他の神々は、女神ジュノーの話を聞き、地球の神々のやり口に非難を口にし始めた。
「いくらなんでも、やり過ぎじゃないか?」
「お互いの世界には、手を出さない約定がある」
「うむ……。乱暴者を転生させるなど、やり口が悪質だ」
地球の神々の旗色が悪くなってきた。
地球の神の一人が堪らず立ち上がり大声で怒鳴った。
「ウソだ! こんなのは作り話だ!」
「不規則発言は控えるように!」
すぐに進行役の鹿型の神が注意する。
だが地球の神は聞き入れない。
それどころか、三人の地球の神々が一斉にわめき立てだした。
「いや! 私は自分の潔白を訴えているだけですよ!」
「然り! このような作り話で、人を陥れようとするなど品性下劣!」
「まったく、バカバカしい! みなさん! みなさんがご存じの通り、我ら地球世界は、文化文明が発展し大きくポイントをリードしています。他の世界を妨害する必要はないのですよ!」
「そうだ! そうだ!」
地球の神々は明らかにウソをついていた。
だが、『ポイントをリードしているのだから、他者を妨害する必要は無い』という理屈は、地球の神々の主張に一定の説得力を持たせた。
他の神々は、どちらの言うことが正しいのか、わからなくなった。
旗色が悪くなりそうな気配に女神ミネルヴァと神メルクリウスは、焦りを感じ目だけ動かして会場の様子を探った。
(不味い……このままでは!)
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