286 / 358
第十章 レッドアラート!
第286話 おっさんたちの殴り合い(グロ有り注意)
しおりを挟む
――翌朝!
フルシチョフは、目を覚ました。
「よしっ! 今日は自分で起きたぞ! 異常は……ないな?」
フルシチョフは自分の左右を確認したが、今日はゴブリンもオークもいない。
思わず笑いがこみ上げ、喜びの声をあげた。
「ふふふ……昨日は警備を強化したからな! 曲者もあきらめたか!」
寝室のドアの前には、六名の護衛を張り付かせた。
部屋の窓の下には四名を、また、建物の入り口にも見張りの兵士を立たせて、賊の侵入を防いだのだ。
そう……防げた……はずだった。
賊が、転移魔法の使い手であるルーナ・ブラケットでなければ。
「なんだ……? この臭いは……?」
フルシチョフは、異臭に気が付いた。
何度も息を吸い鼻を動かす。
「ドブの臭いと血の臭いが混じりあったような……」
自分が寝ている寝台から臭うことに気が付いた。
フルシチョフは、そっと毛布を持ち上げた。
「まさか、失禁してしまったのではあるまいな?」
不安を紛らわすために、一人でブツブツとつぶやきながら、恐る恐る行動するフルシチョフ。
毛布を持ち上げると、自分の寝間着にべったりと血が付いていた。
臭いの元はここからだった。
「うっ! これは……一体何が……」
寝間着には、緑色の液と真っ赤な血が大量に付いている。
続けて、そっと毛布をめくると緑色の液と赤い血は、寝台の端の方へと続いている。
毛布を持ち上げ血の跡を追う。
すると、寝台の端にゴブリンとオークの生首が転がっていた。
恨めしそうな目でフルシチョフを見つめるゴブリンとオークの生首と目が合い、フルシチョフは悲鳴を上げた。
「あああ! ああー! あーーーーー!」
扉の外にいた兵士たちが、フルシチョフの悲鳴を聞きつけて、寝室に飛び込んできた。
「フルシチョフ閣下! いかがなされ――あっ!」
兵士たちの目に映ったのは、真っ赤なオークの血と緑色のゴブリンの体液にまみれ、生首と戯れるフルシチョフだった。
フルシチョフ本人は、驚きおののいていたのだが、兵士たちには、そう見えなかったのだ。
「ひでえ!」
「オエッ!」
「ご乱心!」
マニアックな趣味が高じて、行き着くところまで行き着いてしまったのかと、次々に嫌悪の声があがる。完全な誤解である。
護衛の隊長がすぐに指示を出した。
「幹部のみなさんを呼んでこい! 俺たちでは対処不能だ!」
兵士が急いで駆け出す。
フルシチョフは、錯乱して怒鳴りだした。
「オマエたちは、何をやっていたのだ! この体たらく! 役立たずめ!」
エキサイトするフルシチョフを兵士たちが必死でなだめる。
「閣下落ち着いて下さい!」
「今、みなさんを呼んでいますから!」
「このことは、誰にも言いませんから!」
「どんな趣味を持とうと、閣下は大丈夫です!」
兵士たちは、心の中で『ちっとも、大丈夫じゃない!』と思っていたが、フルシチョフをなだめ続けた。
やがて、この国の幹部――政治将校たちが、フルシチョフの寝室に駆け込んできた。
政治将校たちは、寝室を一瞥すると盛大にため息をついた。
やがて、年輩の政治将校が首を振りながらフルシチョフに苦言を申し述べた。
「閣下……、閣下……。これはいけません……。どんな性癖を持とうが、閣下のご自由ですが……。いくら何でも、魔物をバラバラにして嬲るなどとは!」
「違う! 違うのだ! これは罠だ!」
「何の罠だとおっしゃるのですか! いい加減にして下さい!」
「馬鹿者おおおぉぉぉ~! 罠だと言っているだろうがあああぁぁぁ~!」
フルシチョフと年輩の政治将校は、言い合いになった。
フルシチョフは、『敵対勢力の陰謀だ!』と主張し、年輩の政治将校は、『火遊びにしても、悪趣味すぎる!』と苦言を呈し、胸ぐらをつかみ合い、最後は殴り合いになった。
二人のケンカを見ていた政治将校たちも、実力行使となったのでさすがに止めに入った。
「同志! お止め下さい!」
「我々は、同じ志を持つ仲間です!」
「話せばわかるのです! たぶん……」
「グーは、いけませんぞ! グーは!」
力尽くで二人を引き離し、なんとか騒ぎを収めた。
肩で息をする二人をよそに、若い政治将校が思いついた事を口にした。
「あの……。もしも、フルシチョフ閣下の言う通り、外部の者が侵入してイタズラをしたと仮定するとですよ……」
「仮定とはなんだ! これは、ワシがやったのではないぞ!」
「わかりました! それで、外部の者の犯行だとするとですよ。フルシチョフ閣下は、なぜ生きているのですか?」
「貴様! なにを――」
フルシチョフは、若い政治将校が言いたいことを理解した。
フルシチョフは、普通に寝て起きただけなのだ。
寝て起きたら、自分の横にゴブリンやオークが寝ていたのだ。
それは、つまり、曲者は自由にフルシチョフの寝室に出入りしている証拠であり、その気になれば、いつでもフルシチョフの命を奪えるということなのだ。
――では、今日のゴブリンとオークの生首は何であろうか?
『オマエも、こうなるぞ!』
という意味のメッセージだろうか?
フルシチョフは震え上がり、奇声を上げた。
「あっ……あっ……ああああぁぁぁー!」
そして、失禁した。
フルシチョフは、目を覚ました。
「よしっ! 今日は自分で起きたぞ! 異常は……ないな?」
フルシチョフは自分の左右を確認したが、今日はゴブリンもオークもいない。
思わず笑いがこみ上げ、喜びの声をあげた。
「ふふふ……昨日は警備を強化したからな! 曲者もあきらめたか!」
寝室のドアの前には、六名の護衛を張り付かせた。
部屋の窓の下には四名を、また、建物の入り口にも見張りの兵士を立たせて、賊の侵入を防いだのだ。
そう……防げた……はずだった。
賊が、転移魔法の使い手であるルーナ・ブラケットでなければ。
「なんだ……? この臭いは……?」
フルシチョフは、異臭に気が付いた。
何度も息を吸い鼻を動かす。
「ドブの臭いと血の臭いが混じりあったような……」
自分が寝ている寝台から臭うことに気が付いた。
フルシチョフは、そっと毛布を持ち上げた。
「まさか、失禁してしまったのではあるまいな?」
不安を紛らわすために、一人でブツブツとつぶやきながら、恐る恐る行動するフルシチョフ。
毛布を持ち上げると、自分の寝間着にべったりと血が付いていた。
臭いの元はここからだった。
「うっ! これは……一体何が……」
寝間着には、緑色の液と真っ赤な血が大量に付いている。
続けて、そっと毛布をめくると緑色の液と赤い血は、寝台の端の方へと続いている。
毛布を持ち上げ血の跡を追う。
すると、寝台の端にゴブリンとオークの生首が転がっていた。
恨めしそうな目でフルシチョフを見つめるゴブリンとオークの生首と目が合い、フルシチョフは悲鳴を上げた。
「あああ! ああー! あーーーーー!」
扉の外にいた兵士たちが、フルシチョフの悲鳴を聞きつけて、寝室に飛び込んできた。
「フルシチョフ閣下! いかがなされ――あっ!」
兵士たちの目に映ったのは、真っ赤なオークの血と緑色のゴブリンの体液にまみれ、生首と戯れるフルシチョフだった。
フルシチョフ本人は、驚きおののいていたのだが、兵士たちには、そう見えなかったのだ。
「ひでえ!」
「オエッ!」
「ご乱心!」
マニアックな趣味が高じて、行き着くところまで行き着いてしまったのかと、次々に嫌悪の声があがる。完全な誤解である。
護衛の隊長がすぐに指示を出した。
「幹部のみなさんを呼んでこい! 俺たちでは対処不能だ!」
兵士が急いで駆け出す。
フルシチョフは、錯乱して怒鳴りだした。
「オマエたちは、何をやっていたのだ! この体たらく! 役立たずめ!」
エキサイトするフルシチョフを兵士たちが必死でなだめる。
「閣下落ち着いて下さい!」
「今、みなさんを呼んでいますから!」
「このことは、誰にも言いませんから!」
「どんな趣味を持とうと、閣下は大丈夫です!」
兵士たちは、心の中で『ちっとも、大丈夫じゃない!』と思っていたが、フルシチョフをなだめ続けた。
やがて、この国の幹部――政治将校たちが、フルシチョフの寝室に駆け込んできた。
政治将校たちは、寝室を一瞥すると盛大にため息をついた。
やがて、年輩の政治将校が首を振りながらフルシチョフに苦言を申し述べた。
「閣下……、閣下……。これはいけません……。どんな性癖を持とうが、閣下のご自由ですが……。いくら何でも、魔物をバラバラにして嬲るなどとは!」
「違う! 違うのだ! これは罠だ!」
「何の罠だとおっしゃるのですか! いい加減にして下さい!」
「馬鹿者おおおぉぉぉ~! 罠だと言っているだろうがあああぁぁぁ~!」
フルシチョフと年輩の政治将校は、言い合いになった。
フルシチョフは、『敵対勢力の陰謀だ!』と主張し、年輩の政治将校は、『火遊びにしても、悪趣味すぎる!』と苦言を呈し、胸ぐらをつかみ合い、最後は殴り合いになった。
二人のケンカを見ていた政治将校たちも、実力行使となったのでさすがに止めに入った。
「同志! お止め下さい!」
「我々は、同じ志を持つ仲間です!」
「話せばわかるのです! たぶん……」
「グーは、いけませんぞ! グーは!」
力尽くで二人を引き離し、なんとか騒ぎを収めた。
肩で息をする二人をよそに、若い政治将校が思いついた事を口にした。
「あの……。もしも、フルシチョフ閣下の言う通り、外部の者が侵入してイタズラをしたと仮定するとですよ……」
「仮定とはなんだ! これは、ワシがやったのではないぞ!」
「わかりました! それで、外部の者の犯行だとするとですよ。フルシチョフ閣下は、なぜ生きているのですか?」
「貴様! なにを――」
フルシチョフは、若い政治将校が言いたいことを理解した。
フルシチョフは、普通に寝て起きただけなのだ。
寝て起きたら、自分の横にゴブリンやオークが寝ていたのだ。
それは、つまり、曲者は自由にフルシチョフの寝室に出入りしている証拠であり、その気になれば、いつでもフルシチョフの命を奪えるということなのだ。
――では、今日のゴブリンとオークの生首は何であろうか?
『オマエも、こうなるぞ!』
という意味のメッセージだろうか?
フルシチョフは震え上がり、奇声を上げた。
「あっ……あっ……ああああぁぁぁー!」
そして、失禁した。
19
お気に入りに追加
4,055
あなたにおすすめの小説
異世界王女に転生したけど、貧乏生活から脱出できるのか
片上尚
ファンタジー
海の事故で命を落とした山田陽子は、女神ロミア様に頼まれて魔法がある世界のとある国、ファルメディアの第三王女アリスティアに転生!
悠々自適の贅沢王女生活やイケメン王子との結婚、もしくは現代知識で無双チートを夢見て目覚めてみると、待っていたのは3食草粥生活でした…
アリスティアは現代知識を使って自国を豊かにできるのか?
痩せっぽっちの王女様奮闘記。

元ゲーマーのオタクが悪役令嬢? ごめん、そのゲーム全然知らない。とりま異世界ライフは普通に楽しめそうなので、設定無視して自分らしく生きます
みなみ抄花
ファンタジー
前世で死んだ自分は、どうやらやったこともないゲームの悪役令嬢に転生させられたようです。
女子力皆無の私が令嬢なんてそもそもが無理だから、設定無視して自分らしく生きますね。
勝手に転生させたどっかの神さま、ヒロインいじめとか勇者とか物語の盛り上げ役とかほんっと心底どうでも良いんで、そんなことよりチート能力もっとよこしてください。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
異世界で等価交換~文明の力で冒険者として生き抜く
りおまる
ファンタジー
交通事故で命を落とし、愛犬ルナと共に異世界に転生したタケル。神から授かった『等価交換』スキルで、現代のアイテムを異世界で取引し、商売人として成功を目指す。商業ギルドとの取引や店舗経営、そして冒険者としての活動を通じて仲間を増やしながら、タケルは異世界での新たな人生を切り開いていく。商売と冒険、二つの顔を持つ異世界ライフを描く、笑いあり、感動ありの成長ファンタジー!
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

転生貴族の異世界無双生活
guju
ファンタジー
神の手違いで死んでしまったと、突如知らされる主人公。
彼は、神から貰った力で生きていくものの、そうそう幸せは続かない。
その世界でできる色々な出来事が、主人公をどう変えて行くのか!
ハーレム弱めです。

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~
ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。
異世界転生しちゃいました。
そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど
チート無いみたいだけど?
おばあちゃんよく分かんないわぁ。
頭は老人 体は子供
乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。
当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。
訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。
おばあちゃん奮闘記です。
果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか?
[第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。
第二章 学園編 始まりました。
いよいよゲームスタートです!
[1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。
話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。
おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので)
初投稿です
不慣れですが宜しくお願いします。
最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。
申し訳ございません。
少しづつ修正して纏めていこうと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる