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第十章 レッドアラート!
第283話 共産主義にとって、宗教は麻薬である!
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エルキュール族の工作員を、ギガランドへ送り込んでから十五日が経った。
俺はじいを連れて三日ごとにギガランド郊外に転移して、定時連絡を受けている。
何をしているのか報告を受けているのだが……。
「なあ、じい……。その……ドアを叩いて敵を寝かせない作戦って、有効なのかな?」
「有効ですじゃ。睡眠不足と不安感によって、政治将校たちの精神はジワジワと削られておりましょう。やがて冷静な判断が出来なくなりましょう」
「そ、そうだな……」
嫌がらせを指示したのは、俺なのだが……。じいの解説を聞くと、敵が気の毒に思えてきた。
報告の続きを聞いていると、工作員が用途不明のリクエストを告げた。
「ゴブリンを生け捕りにして連れて来て欲しい?」
「はっ! 次の嫌がらせを……。いえ! 作戦で必要です!」
ゴブリンを生け捕りにして何に使うのだろうか?
まさか、首都に放つのか?
「その作戦だが、住民に被害は出るのか?」
「いえ。住民に一切の被害はございません。ご安心を!」
ベテラン工作員の男は、楽しそうにニヤニヤ笑っている。
また、ろくでもないことを考えているな!
「わかった……用意しよう……」
俺とじいは、キャランフィールドへ転移魔法で戻ることにした。
ゴブリンの生け捕りか……。一体、何に使うつもりなのだろう?
*
ソビエト連邦のフルシチョフ。
彼はギガランドにおける共産党のトップ――つまり支配者として、そこそこ能力を発揮していた。
赤軍を使って首都の治安を維持し、いくつかの反社会的勢力を逮捕、見せしめとして即決裁判で処刑した。
また、高利貸しも何かと理由をつけて逮捕し、即決裁判で処刑した。
逮捕⇒処刑。
すがすがしいまでの独裁である。
しかし、反社会的勢力や高利貸しは、平民から嫌われていたので、フルシチョフと共産党は、そこそこの人気を得ることに成功した。
しかし、その後が悪かった。
「共産主義にとって、宗教は麻薬である! 祈るべきは、ヨシフ・スターリン閣下ただお一人である!」
フルシチョフは、宗教勢力を迫害したのだ。
当初、フルシチョフは宗教勢力に『共産主義の素晴らしさを教会で啓蒙して欲しい』と依頼した。
しかし、宗教勢力はこう回答した。
『教会は女神ジュノー様たちに祈りを捧げる場であり、特定の思想を広める場ではない』
これがフルシチョフのかんに障ったのだ。
ヨシフ・スターリンを絶対的に崇拝し、共産主義を熱烈に信奉し、例えて言えば――ソビエト連邦国歌で、ドンブリメシを三杯食える。
そんなフルシチョフに、教会の回答は許しがたい、万死に値する回答だった。
その日から教会関係者は、次々と逮捕され、即決裁判で処刑された。
ギガランドの人々は恐怖し、フルシチョフを憎んだ。
そんなフルシチョフだが、根は真面目な男である。
ギガランドにおける独裁者ではあるが、なんと! 寝室で一人寝ていたのだ!
『権力は、正しく使われるべきである! 権力は、女性と同衾する為に使うモノではない!』
フルシチョフは部下たちに、そう訓示し、今夜も一人ベッドで眠っていた。
――そして、翌朝。
事件は起こった。
俺はじいを連れて三日ごとにギガランド郊外に転移して、定時連絡を受けている。
何をしているのか報告を受けているのだが……。
「なあ、じい……。その……ドアを叩いて敵を寝かせない作戦って、有効なのかな?」
「有効ですじゃ。睡眠不足と不安感によって、政治将校たちの精神はジワジワと削られておりましょう。やがて冷静な判断が出来なくなりましょう」
「そ、そうだな……」
嫌がらせを指示したのは、俺なのだが……。じいの解説を聞くと、敵が気の毒に思えてきた。
報告の続きを聞いていると、工作員が用途不明のリクエストを告げた。
「ゴブリンを生け捕りにして連れて来て欲しい?」
「はっ! 次の嫌がらせを……。いえ! 作戦で必要です!」
ゴブリンを生け捕りにして何に使うのだろうか?
まさか、首都に放つのか?
「その作戦だが、住民に被害は出るのか?」
「いえ。住民に一切の被害はございません。ご安心を!」
ベテラン工作員の男は、楽しそうにニヤニヤ笑っている。
また、ろくでもないことを考えているな!
「わかった……用意しよう……」
俺とじいは、キャランフィールドへ転移魔法で戻ることにした。
ゴブリンの生け捕りか……。一体、何に使うつもりなのだろう?
*
ソビエト連邦のフルシチョフ。
彼はギガランドにおける共産党のトップ――つまり支配者として、そこそこ能力を発揮していた。
赤軍を使って首都の治安を維持し、いくつかの反社会的勢力を逮捕、見せしめとして即決裁判で処刑した。
また、高利貸しも何かと理由をつけて逮捕し、即決裁判で処刑した。
逮捕⇒処刑。
すがすがしいまでの独裁である。
しかし、反社会的勢力や高利貸しは、平民から嫌われていたので、フルシチョフと共産党は、そこそこの人気を得ることに成功した。
しかし、その後が悪かった。
「共産主義にとって、宗教は麻薬である! 祈るべきは、ヨシフ・スターリン閣下ただお一人である!」
フルシチョフは、宗教勢力を迫害したのだ。
当初、フルシチョフは宗教勢力に『共産主義の素晴らしさを教会で啓蒙して欲しい』と依頼した。
しかし、宗教勢力はこう回答した。
『教会は女神ジュノー様たちに祈りを捧げる場であり、特定の思想を広める場ではない』
これがフルシチョフのかんに障ったのだ。
ヨシフ・スターリンを絶対的に崇拝し、共産主義を熱烈に信奉し、例えて言えば――ソビエト連邦国歌で、ドンブリメシを三杯食える。
そんなフルシチョフに、教会の回答は許しがたい、万死に値する回答だった。
その日から教会関係者は、次々と逮捕され、即決裁判で処刑された。
ギガランドの人々は恐怖し、フルシチョフを憎んだ。
そんなフルシチョフだが、根は真面目な男である。
ギガランドにおける独裁者ではあるが、なんと! 寝室で一人寝ていたのだ!
『権力は、正しく使われるべきである! 権力は、女性と同衾する為に使うモノではない!』
フルシチョフは部下たちに、そう訓示し、今夜も一人ベッドで眠っていた。
――そして、翌朝。
事件は起こった。
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