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第十章 レッドアラート!

第271話 星夜の爆撃

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 ベロイア王宮の飛行場は、滑走路の両端に松明が沢山灯され、夜にもかかわらず離陸に十分な明るさを保っていた。

 リス族の整備員が、光の魔道具を手に持ってマーシャリングを開始する。

「魔導エンジン始動!」

「車輪止め外せ!」

「グース一番機から順次離陸せよ!」

 異世界飛行機グース一番機が、ゆっくりと滑走路に進入した。
 一旦停止して、プロペラの回転数を上げる。

 やがてグースが動き出した。
 グングン加速しフワリと宙に浮きあがると、無数の星がきらめく夜空へと羽ばたいて行った。

 続いて、二番機、三番機と飛び上がっていく。
 プロペラが発する魔力の残滓が、うっすらと光の線を引き、やがて溶けるように闇夜に消えた。

「美しいですな……」

 俺の横で離陸を見守っていたベロイア国王カール三世が、ため息とともに言葉をもらした。
 カールおじさんみたいな外見だが、意外とロマンチストなのかな?

「お見送りありがとうございます。それでは、我々も出撃します!」

「ご武運を!」

 カールおじさんと軽く言葉を交して、俺、ルーナ先生、黒丸師匠も空へ上がった。

 今回の攻撃では、俺たち三人は自前で飛ぶ。
 初めての爆撃なので、不測の事態に備えるのだ。

 パスファインダーは、グース一番機が勤めている。
 一番機を先頭に、一列の編隊で爆撃空域へと向かう。
 グース後部のカンテラが赤い光を放つ。

 カンテラの赤い光を目印に、俺、ルーナ先生、黒丸師匠は、編隊の後につけた。
 今日は月明かりがあるので、地上がよく見える。

「チキン♪ チキン♪ フライドチキン♪」

 ルーナ先生がご機嫌だ。
 空を飛びながら、歌っている。
 クリスマスイブのフライドチキンとケーキは、爆撃の後だぞ。

「アンジェロ少年……。ルーナがご機嫌なのである……」

「絶対悪巧みですよ!」

 黒丸師匠と俺は、飛びながらヒソヒソ声で話し始めた。

「何であるか? クリスマスのフライドチキンに何か仕掛けが?」

「いやあ~、爆弾だと思いますよ」

「チキンが爆発するのであるか!?」

「いえ! そうじゃなくて!」

 もう、やだ、俺の師匠二人……。

 しばらく飛行すると爆撃地点が近づいたらしい。
 先頭を行く一番機が翼を振り上昇をかけた。

 高度をとったところで、編隊を横一列に組み直す。

 ルーナ先生から指示が飛んできた。

「私が光魔法を発動する! アンジェロは、派手な火魔法の用意!」

「ルーナ先生! 派手な火魔法ですか!?」

「赤軍の連中を脅かしてやれ!」

「了解です!」

 よかった。
 十万人皆殺しにしろとか、クレイジーサイコな指示だったらどうしようかと思った。

 ルーナ先生が、グンとスピードを上げて前へ出た。
 一番機の横につけて、何やら隊長と言葉を交している。

 そして、ルーナ先生が、右腕を振り降ろした。

 ほっそり白い指先から無数の光のボールが地上へと放たれ、光のボールは更に分裂し、くっきりと地上を照らす。

 地上の敵軍勢を見て、俺は思わず声を上げる。

「うおっ……! なんて数だよ……」

「むうう! である!」

 黒丸師匠もうなり声を上げた。

 ベロイアのなだらかな丘陵地帯に、ビッシリと人が詰まっている。
 天幕を用意しきれなかったのだろう。

 ほとんどの人が、そこかしこでゴロ寝している。

「やはりである……。一般人がほとんどであるな……。民兵どころか、暴徒である」

 黒丸師匠が嘆く。

 俺たちは空にいるが、ここまで驚きの声、悲鳴、怒声が聞こえてくる。
 軍隊らしい統制は、かけらもない。

「投下! 投下!  投下!」

 一番機の隊長が、左手を振り降ろしながら、大声で爆弾投下指示を出した。

 グース後部座席のリス族とブラックホーク後部座席の白狼族が、マジックバックから小さな樽型爆弾を地面に次々と放り投げる。

 重力に引かれて、樽型爆弾は地上へと真っ直ぐに落ちていった。
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