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第十章 レッドアラート!

第267話 墜ちる黒丸

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 ソビエト連邦の方に、土煙が見える。
 目をこらして見ると……敵だ!

 テロ攻撃の次は、陸上戦力による侵攻か!
 敵は、なかなか嫌らしい攻め方をする。

「アンジェロ少年。防壁の入り口をふさぐのである!」

「黒丸師匠。それでは、防壁の中の兵士が、出撃できませんよ?」

「防壁の中は、混乱しているのである。混乱している兵士は、役に立たないのである」

 確かに、その通りだ。
 防壁の中で爆発を間近に体験した兵士は、混乱している。
 戦場に出せば、死傷者を増やすだけだ。

 俺と黒丸師匠で迎撃した方が良い。

 俺は防壁の入り口を土魔法の石壁でふさぐと、黒丸師匠の横に並んだ。

「黒丸師匠。爆弾だけは気をつけてください」

「爆発する兵器であるな?」

「ええ。例え斬っても、爆発する可能性が高いです。大きく距離をとってください」

「承知したのである」

 我が国で、爆弾は既に開発済みだ。
 樽に火薬を詰めて、導火線を付けただけの原始的な爆弾だが、結構な威力がある。

 敵には、俺と同じ転生者がいる。
 ならば、敵にも爆弾があると考え対処をしないと危険だ。

 敵がさらに近づいてきた。
 ここの地形は平地なので、敵の陣形がわかる。
 俺は、敵の陣形が奇妙に思えた。

「黒丸師匠……敵の陣形が変です。やけに薄いような……」

「ふむ……。敵の狙いは、何であるか?」

 俺の目にした戦いでは、歩兵は密集隊形をとるのが定石だった。
 厚みのある隊形を作って、前列が崩れればすぐに後列と交代する。

 歩兵が固まっていれば、指揮官の指示も伝えやすい。

 だが、目の前の敵は、横に薄い隊列をしいている。

「アンジェロ少年! 空に上がるのである!」

「はい!」

 飛行魔法を発動して、空に上がる。
 三階建てのビルくらいの高さから見ると、敵が横一列の横陣を敷いているのがはっきりわかる。

 横陣の後ろには、盾や剣を持った部隊が控えているが……。

「何であるか? 随分とバラバラで、まとまりがないのである」

「指揮系統が機能してないとか?」

「それもそうであるが、兵士の装備もバラバラであるし、前方の横陣は女性ばかりである」

 なるほど、確かに横陣を構成している兵士は、女性……。
 それも、その辺にいそうな普通の女の人だ。
 太ったおばちゃんや、そばかすのある若い女性……。
 家からそのまま出てきたような服装で、兵士というよりは民兵だな。

 冒険者や魔法使いの女性を配置するならわかるが、敵の狙いはなんだ?
 こちらが戦いづらくする為に、あえて女性を前に出したとか?

「そう……ですね……。後ろの部隊は男が中心ですが……。前の横陣は囮とか?」

「ううむ……。装備は短槍であるか?」

「短槍というよりも、棒ですね……。穂先がついてないです」

「であるか……」

 横陣を構成する女の人たちは、一メートルほどの棒を持っている。
 あれは武器……だよな?

 俺と黒丸師匠は、敵の出方、狙いがわからずに、攻撃をためらった。
 さっきまでは、敵の卑怯は自爆攻撃に怒り、熱くなっていたが……。
 今は、二人して困惑している。

 その間に敵は距離を詰めてきて、空に浮かぶ俺たちのすぐ下まで近づいた。

「構え!」

 横陣の中の一人が、何か指示をした。
 彼女が隊長か?

 横陣の女の人たちは、棒を脇に構えこちらに棒の先端を向けた。

 何だ?
 一瞬、背中にぞわりとした嫌な感覚が走った。

 そして、横陣の女の人たちが、片手に火縄を持っているのが見えた。
 火縄を棒に近づけている。

(まさか! あの棒は銃!? 火縄銃なのか!?)

 俺はすぐに飛行魔法を全開にして、垂直上昇をかけた。
 同時に黒丸師匠に怒鳴る。

「黒丸師匠! 逃げて!」

 だが、遅かった。
 俺が上昇をかけると同じタイミングで、横陣の隊長と思われる女性が、高く上げた右手を振り下ろし号令をかけた。

「撃て!」

 ダン!
 バン!
 パン!
 パーン!

 無数の発射音が響き、火薬の焦げる臭いがした。

 やはりあの棒は鉄砲。
 原始的な火縄銃なのだろう。

 俺は急上昇したので弾は当たらなかったが、黒丸師匠は地面に落ちていく。

「黒丸師匠!」

 俺は落下する黒丸師匠を追って、地面に向けて降下した。
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