239 / 358
第九章 グンマー連合王国
第239話 サーベルタイガー・テイマーのイネス
しおりを挟む
アンジェロが黒丸からテイマーについて報告を受けている頃、キャランフィールドの冒険者ギルドでは『砂利石』のミディアムたちが書類と奮闘していた。
全国のギルドから転送されてきたテイマーについての報告書である。
「ええっと……。この書類はテイマーなしの報告だから、左の箱に入れる……。こっちの書類は、テイマーあり! じゃあ、右の箱に入れて、迎えのグースを出す手配だな――」
「ミディアム! 待てよ! テイマーなしが右の箱。テイマーありは左の箱だろう?」
「なに!?」
「バカ! おまえら向かい合って座っているだろ! 自分から見て右がテイマーなし! 左がテイマーありだ!」
「えっ!? 俺、逆にやってたぜ?」
「「「テメー!」」」
ミディアムたちは、仲が良い。
だが、書類は整理しなおしだ。
ジンジャーが冒険者ギルドのロビーをチラリと見てから、ミディアムを肘で小突いた。
「なあ、ミディアム。あのテイマーどうすんだ?」
「俺に聞くな……」
「副ギルド長だろ?」
「あんな物騒な魔物をテイムしているヤツと話したくねえよ!」
冒険者ギルドのロビーには、一人のテイマーと一匹の魔物がいた。
テイマーの名は、イネス。
お色気ムンムンのお姉様である。
「スタイル良いな~」
「良い女だな~」
「デートしてくれねえかな~」
「オマエら! 魔物に殺されるぞ!」
ジンジャーたちが、だらしなく鼻の下を伸ばし、イネスに声をかけようとするのを、ミディアムが慌てて止めた。
イネスが寄りかかる魔物が、鋭い視線を飛ばし、うなり声を上げ、ミディアムたちを威嚇する。
その魔物は、大型のサーベルタイガーだ。
鋭く長い牙は、ハードレザーアーマーや金属鎧をたやすく貫通する。
サーベルタイガーの威嚇を受けて、ミディアムたちは冒険者ギルドのカウンターに身を隠し、怖々とロビーをのぞき込む。
テイマーのイネスは、サーベルタイガーの喉をやさしくなでた。
「ふふ……大丈夫よ……。ラモン……静かにして頂戴……」
ラモンと呼ばれたサーベルタイガーは、目を細め気持ちよさそうに喉を鳴らす。
そこへ突然、冒険者ギルドのドアが、勢いよく開いた!
グンマークロコダイル軍団を引き連れたルーナ・ブラケットである。
ルーナは、イセサッキにまたがり先頭を行く。
続いて、右にマエバシ、左にタカサキ、トライアングル・フォーメーションだ。
テイマーのイネスとサーベルタイガーのラモンに向かって、ノシノシと歩みを進めた。
イセサッキたちは、サーベルタイガーのラモンまで五メートルの距離で止まった。
ルーナとイネスの間で視線が交錯する。
「私はルーナ・ブラケット。グンマークロコダイルをテイムしている。名前は、マエバシ、タカサキ、イセサッキ!」
「そう……。私はイネスよ……。この子はサーベルタイガーのラモン……。かわいいいでしょう?」
「イセサッキたちの方が、かわいい!」
「あら、そう。でも、ラモンの大きな肉球にはかなわないわ。ほら、プニプニ……」
「ムッ……。肉球の問題ではない。イセサッキの方が強い!」
「どうかしらね……。サーベルタイガーの爪と牙なら、そちらのワニちゃんの皮も貫くと思うけれど……」
険悪な空気が冒険者ギルドのロビーに充満した。
ギルドの職員は、部屋の隅に退避し、ロビーにいた冒険者は壁際まで後ずさる。
見かねたミディアムが、カウンターから飛び出し仲裁に入った。
「ちょっと! ルーナの姉さん! 止めてくれよ!」
「ミディアムは、黙る。これはテイマーとしてのプライドがかかっている」
「いや……! アンタの本職は、魔道士だろう! それに、王様の婚約者だろ! もめ事起こすなよ!」
「ある時は、王の婚約者! また、ある時は謎の魔道士! 果たして、その実体は!」
「知らねえよ! とにかくもめ事は、止めてくれよ!」
ミディアムが必死にルーナを止めようとする。
一方、ミディアムのパーティー『砂利石』の残りのメンバーは、サーベルタイガーのテイマーであるイネスを説得していた。
「よせって! あの人は、魔法使いでメチャクチャ強いんだ!」
「それに、王様の婚約者だぞ!」
「そうそう! もめたらヤバイよ!」
イネスはゆらりと立ち上がった。
「ふーん……。王様の婚約者なんだ……。それが、魔物を連れて……。あなた面白いわね……」
ルーナは、イネスの瞳の奥に好戦的な光を見た。
「やろう」
「いいわよ……」
副ギルド長のミディアムは、絶叫した。
「ふざけるな! 俺は知らねえぞ! おまえら外でヤレ!」
ルーナとイネスは、それぞれの従魔を連れて、ギルドの外に出た。
全国のギルドから転送されてきたテイマーについての報告書である。
「ええっと……。この書類はテイマーなしの報告だから、左の箱に入れる……。こっちの書類は、テイマーあり! じゃあ、右の箱に入れて、迎えのグースを出す手配だな――」
「ミディアム! 待てよ! テイマーなしが右の箱。テイマーありは左の箱だろう?」
「なに!?」
「バカ! おまえら向かい合って座っているだろ! 自分から見て右がテイマーなし! 左がテイマーありだ!」
「えっ!? 俺、逆にやってたぜ?」
「「「テメー!」」」
ミディアムたちは、仲が良い。
だが、書類は整理しなおしだ。
ジンジャーが冒険者ギルドのロビーをチラリと見てから、ミディアムを肘で小突いた。
「なあ、ミディアム。あのテイマーどうすんだ?」
「俺に聞くな……」
「副ギルド長だろ?」
「あんな物騒な魔物をテイムしているヤツと話したくねえよ!」
冒険者ギルドのロビーには、一人のテイマーと一匹の魔物がいた。
テイマーの名は、イネス。
お色気ムンムンのお姉様である。
「スタイル良いな~」
「良い女だな~」
「デートしてくれねえかな~」
「オマエら! 魔物に殺されるぞ!」
ジンジャーたちが、だらしなく鼻の下を伸ばし、イネスに声をかけようとするのを、ミディアムが慌てて止めた。
イネスが寄りかかる魔物が、鋭い視線を飛ばし、うなり声を上げ、ミディアムたちを威嚇する。
その魔物は、大型のサーベルタイガーだ。
鋭く長い牙は、ハードレザーアーマーや金属鎧をたやすく貫通する。
サーベルタイガーの威嚇を受けて、ミディアムたちは冒険者ギルドのカウンターに身を隠し、怖々とロビーをのぞき込む。
テイマーのイネスは、サーベルタイガーの喉をやさしくなでた。
「ふふ……大丈夫よ……。ラモン……静かにして頂戴……」
ラモンと呼ばれたサーベルタイガーは、目を細め気持ちよさそうに喉を鳴らす。
そこへ突然、冒険者ギルドのドアが、勢いよく開いた!
グンマークロコダイル軍団を引き連れたルーナ・ブラケットである。
ルーナは、イセサッキにまたがり先頭を行く。
続いて、右にマエバシ、左にタカサキ、トライアングル・フォーメーションだ。
テイマーのイネスとサーベルタイガーのラモンに向かって、ノシノシと歩みを進めた。
イセサッキたちは、サーベルタイガーのラモンまで五メートルの距離で止まった。
ルーナとイネスの間で視線が交錯する。
「私はルーナ・ブラケット。グンマークロコダイルをテイムしている。名前は、マエバシ、タカサキ、イセサッキ!」
「そう……。私はイネスよ……。この子はサーベルタイガーのラモン……。かわいいいでしょう?」
「イセサッキたちの方が、かわいい!」
「あら、そう。でも、ラモンの大きな肉球にはかなわないわ。ほら、プニプニ……」
「ムッ……。肉球の問題ではない。イセサッキの方が強い!」
「どうかしらね……。サーベルタイガーの爪と牙なら、そちらのワニちゃんの皮も貫くと思うけれど……」
険悪な空気が冒険者ギルドのロビーに充満した。
ギルドの職員は、部屋の隅に退避し、ロビーにいた冒険者は壁際まで後ずさる。
見かねたミディアムが、カウンターから飛び出し仲裁に入った。
「ちょっと! ルーナの姉さん! 止めてくれよ!」
「ミディアムは、黙る。これはテイマーとしてのプライドがかかっている」
「いや……! アンタの本職は、魔道士だろう! それに、王様の婚約者だろ! もめ事起こすなよ!」
「ある時は、王の婚約者! また、ある時は謎の魔道士! 果たして、その実体は!」
「知らねえよ! とにかくもめ事は、止めてくれよ!」
ミディアムが必死にルーナを止めようとする。
一方、ミディアムのパーティー『砂利石』の残りのメンバーは、サーベルタイガーのテイマーであるイネスを説得していた。
「よせって! あの人は、魔法使いでメチャクチャ強いんだ!」
「それに、王様の婚約者だぞ!」
「そうそう! もめたらヤバイよ!」
イネスはゆらりと立ち上がった。
「ふーん……。王様の婚約者なんだ……。それが、魔物を連れて……。あなた面白いわね……」
ルーナは、イネスの瞳の奥に好戦的な光を見た。
「やろう」
「いいわよ……」
副ギルド長のミディアムは、絶叫した。
「ふざけるな! 俺は知らねえぞ! おまえら外でヤレ!」
ルーナとイネスは、それぞれの従魔を連れて、ギルドの外に出た。
26
お気に入りに追加
4,055
あなたにおすすめの小説
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
暗殺者から始まる異世界満喫生活
暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。
流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。
しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。
同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。
ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。
新たな生活は異世界を満喫したい。
「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした
御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。
異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。
女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。
――しかし、彼は知らなかった。
転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――
生活魔法しか使えない少年、浄化(クリーン)を極めて無双します(仮)(習作3)
田中寿郎
ファンタジー
壁しか見えない街(城郭都市)の中は嫌いだ。孤児院でイジメに遭い、無実の罪を着せられた幼い少年は、街を抜け出し、一人森の中で生きる事を選んだ。武器は生活魔法の浄化(クリーン)と乾燥(ドライ)。浄化と乾燥だけでも極めれば結構役に立ちますよ?
コメントはたまに気まぐれに返す事がありますが、全レスは致しません。悪しからずご了承願います。
(あと、敬語が使えない呪いに掛かっているので言葉遣いに粗いところがあってもご容赦をw)
台本風(セリフの前に名前が入る)です、これに関しては助言は無用です、そういうスタイルだと思ってあきらめてください。
読みにくい、面白くないという方は、フォローを外してそっ閉じをお願いします。
(カクヨムにも投稿しております)
神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく
霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。
だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。
どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。
でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる