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第九章 グンマー連合王国

第204話 オークの釜めし???

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 ――三日後。

 シメイ伯爵領の領都カイタックから、午前の定期便で飛んできたグースのパイロットが、俺に伝言を告げた。

「釜めしが出来た?」

「はい。シメイ伯爵が、試食しに来て欲しいと」

「わかった。ありがとう」

 もう、出来たのか。
 シメイ伯爵は、あんな感じだが、フットワークは良いらしい。
 彼への評価を上方修正しておこう。

 試食だから、ルーナ先生と黒丸師匠を誘うことにした。
 こういうイベントに呼ばないと、二人はグチグチとうるさいのだ。

「釜めしは、食べたことがない。楽しみ」

「もう、出来たのであるか! アンジェロ少年の指導の賜物である」

「概要を教えただけですけどね」

 子供の頃に横川駅の駅弁『峠の釜めし』を食べたことがあったので、前回訪問時、シメイ伯爵には釜めしがどういった食べ物なのか、大まかに伝えた。

 さて、シメイの釜めしは、どんな物かな?

 俺は、ルーナ先生と黒丸師匠を連れて、シメイ伯爵領カイタックに転移した。


 *


「どうです! 王様! オークの釜めしを作ってみました!」

「「「……」」」

 シメイ伯爵の屋敷の中庭で、オークの釜めしが作られていた。
 作られていたのだが……。

「違う! 違う! そうじゃない!」

 シメイ伯爵が作ったオークの釜めしは、釜めしではなかった。

 巨大な鉄製の釜を用意して、釜にオークを丸ごと放り込む。
 そして、火でグラグラとオークを煮立てているのだ。

 これでは、五右衛門風呂に放り込まれたオークである。

 オークは死んでいるはずだが、表情がグッタリと見えるのは気のせいだろうか。

 黒丸師匠が、真面目くさって論評する。

「これでは、オークの釜ゆでである」

 本当にその通りだ。
 だが、シメイ伯爵は、理解できないらしい。

「えっ!? ダメですか!? ホラ! 名産品を釜に入れると良いって、王様が言ったじゃないですか!」

「これじゃ、食べられないだろう……。お弁当になってないし……」

「食べられますよ!」

 そう言うとシメイ伯爵は、オークの肉を引きちぎって口に放り込んだ。
 グチャグチャと不味そうな音がする。

 ダメだな。
 シメイ伯爵への評価を、下方修正しておこう。

「シメイ伯爵は、料理の何たるかをわかっていない!」

 あっ……。
 ルーナ先生がキレた。

「こっちへ来る! 説教!」

「ちょっと!? 王様! 助けてえ~!」

「あーあ、なのである」

 食べ物の事でルーナ先生を怒らせてはいけない。
 シメイ伯爵の無事を祈ろう。

 合掌!
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