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第八章 メロビクス戦争2
第159話 父親がしょげたら、息子が頑張るのです!
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俺はメロビクス王大国とニアランド王国の連合海軍五十隻を、魔法で瞬間凍結させた。
これで連合海軍は壊滅だ。
凍り付いた敵船を、次々とアイテムボックスに収納して行く。
アイテムボックスに収納できるということは、生存者はいないということだ。
気の毒だが、仕方がない。
ここでやらなければ、キャランフィールドが火の海になっていたのだ。
非戦闘員の農民や子供も殺されていただろう。
俺は、そうやって理屈づけて自分を納得させる。
「五十隻の艦隊を丸々収納である……。アンジェロ少年のアイテムボックスは、今さらながら常識外である!」
黒丸師匠が呆れて絶叫しているが、知らんよ!
あの適当神メリクリウスに言ってくれ!
この船はキャランフィールドで解凍し、フリージア王国海軍船として使うのだ。
問題は、五十隻分の船員をどうするのか……。
ウォーカー船長に頼んでみるか。
キャランフィールドへ戻ると、もう日暮れだ。
「アンジェロ!」
「母上! どうしてここに!?」
キャランフィールドの執務室へ戻ると、アリーさんたち幹部連中と……母上がいた!
いや、母上だけじゃない。
俺の父である国王陛下、アルドギスル兄上の母である第二王妃。
そして、サラに白狼族の特殊部隊員も戻ってきている。
「これは……一体……。王都で何があったのですか?」
国王陛下である父上が代表して答えた。
「王都は敵の手に落ちた……」
「なっ!?」
「すまぬ……。私の力不足だ……」
そこからは、みんなが興奮してしまって収拾がつかなくなった。
王都から脱出してきて状況を伝える方も、聞く方のキャランフィールド組も冷静ではいられなかった。
メロビクス王大国軍に奇襲され、一気に王宮へ侵入されたらしい。
どうしたものかと頭を抱えた。
そここへエーベルバッハ男爵を乗せて王都へ飛んだグースが戻ってきた。
リス族のパイロットが手短に報告する。
「王宮から脱出できたのは、約二百人です! エーベルバッハ男爵と部下の二名は、王都へ潜入し情報収集を行うそうです!」
「「「「「おおっ!」」」」」
まとまった人数が無事だったことで、部屋の中の緊迫した空気が幾分柔らかくなった。
「ご苦労だった! パイロットは、休んでくれ。サラたちも良くやってくれた! ありがとう!」
「約束を守った! お袋様と親父様を守ると言っただろ?」
獣人は、家族と一族を大切にする。
サラは自分の功績を誇るでもなく、ただ家族を守ったのだと言う。
サラが俺の父と母を家族として守ってくれたことに、俺の心が温かくなった。
「そうだな。サラ! ありがとう! 白狼族の特殊部隊員も休んでくれ」
「おう!」
次は、父上たちだ。
見るからに憔悴している。
ここはアリーさんにお任せしよう。
「アリーさん。父上たちをお願いします」
「ええ。お休み頂きましょう」
「アンジェロ……。すまぬ……」
父上は血の気のない青い顔で、終始申し訳なさそうだった。
王都失陥の責任に押しつぶされそうになっているのだろう。
もちろん国王である父上の責任は免れない。
だが、俺も、まさか敵に王都を直撃されるとは、思ってもみなかった。
じいも、情報部も、アルドギスル兄上も、ヒューガルデン伯爵も、第二騎士団も、誰もが予想をしていなかったのだ。
せめて、俺だけでも……。
父上を責めまい。
息子の俺がしっかりしなくちゃ!
俺はニッコリと笑顔で父上を励ました。
「父上! ご安心ください! このアンジェロがおりますれば、王都はすぐに取り戻します!」
「アンジェロ……そなた……」
「それに、先ほどキャランフィールドへ迫っていた敵の連合海軍を撃滅いたしました。商業都市ザムザに迫った獣人たちは駆逐され、シメイ伯爵領を襲った敵は全滅。メロビクス王大国南部では、第二騎士団らが逆襲に出ています!」
「う……うむ……」
父上の顔に血色が戻ってきた。
こうして戦況を話していて気が付いたけれど、全体では我が軍の方が押しているのでは?
俺自身も父上に話している間に、大分冷静になってきた。
「残る敵は、アルドギスル兄上が対しているニアランド王国軍と、王都のメロビクス王大国軍だけです。問題なく片付きます」
そうだ。
一見すると……、敵軍はフリージア王国王都を抑えて有利に見える。
敵軍が北上すれば、アルドギスル兄上は挟撃されてしまう。
そうなれば、我が国北部は敵に奪われてしまう。
だが、そうなる前に手を打てば……。
我が軍の勝ちだ!
メロビクス王大国南部は、既に第二騎士団やじいたちが抑えている。
さらに北上し、アルドギスル兄上が守るアルドギスル領アルドポリスで、ニアランド王国軍を挟撃可能なのだ。
そこまで行けば、大河を渡って敵の王都直撃も見えてくる。
俺の話を聞いて、父上がゴクリとツバを飲んだ。
「それは……可能なのか?」
「我らなら可能です」
俺の言葉に、ルーナ先生と黒丸師匠も同意する。
「国王殿。アンジェロが語ったことは、絵空事ではない。実現可能」
「そうである。我ら『王国の牙』がいるからには、心配ご無用であるな!」
「というわけです。父上。お心を安んじ、ゆっくりとお休みください」
父上も安心したのだろう。
ほんの少しだが、笑顔を見せてくれた。
「うむ……。では、万事アンジェロに任せる。王命である! 王都からメロビクス軍を追い散らせ! 後は良きに計らえ!」
「謹んでお受けいたします!」
俺たちは膝を折って、父上からの王命を拝領した。
父上たちが、執務室を出てお休みになった所で、俺は矢継ぎ早に指示を出す。
「キューちゃん。グースを飛ばして、アルドギスル兄上や主立った連中に伝えて。『王都は落ちたが国王、王妃は無事。王都はアンジェロが、すぐに取り返す』とね。夜間飛行になるけど、頼むね」
「かしこまりました!」
「ウォーカー船長。ギュイーズ侯爵の所まで急いで頼む。『連合海軍は壊滅。王都は俺が奪還する。手出し無用』とね」
「よっしゃ! 『愛しのマリールー号』の快速を見せてやるぜ!」
「ジョバンニとエルハムさん。クイックの生産やミスリルの採掘は、いつも通りに。動揺する者がいても、生産や商取引は止めないで」
「お任せを! 戦争資金は稼ぎ続けます!」
「キャランフィールドは、お任せ下さい!」
これで、ヨシ!
次は、王都奪還だ。
「ひとまず王都へ少数で潜入しましょう。俺とルーナ先生と黒丸師匠で、どうでしょう?」
「了解した」
「しかし、どこへゲートをつなぐのであるか? 王宮はメロビクス王大国軍に押さえられてしまっているのである」
黒丸師匠が疑問を口にする。
もっともだ。
転移魔法で王宮にゲートをつないで、ゲートから出たらメロビクス兵と鉢合わせ……なんてことになれば、大騒ぎになる。
そこで――。
「じいちゃんの所へ行きます」
俺の祖父。
王都で商会を営むフランチェスコ・モリーノ。
モリーノ商会の祖父の仕事部屋には、何回か転移したことがある。
あそこなら安全だろう。
「なるほど。それは名案。メロビクス王大国軍も商人の所までは、兵を回していないなだろう」
「賛成なのである!」
ルーナ先生と黒丸師匠からOKをもらえた。
俺は、転移魔法でモリーノ商会にゲートをつないだ。
さあ、王都を取り返すぞ!
これで連合海軍は壊滅だ。
凍り付いた敵船を、次々とアイテムボックスに収納して行く。
アイテムボックスに収納できるということは、生存者はいないということだ。
気の毒だが、仕方がない。
ここでやらなければ、キャランフィールドが火の海になっていたのだ。
非戦闘員の農民や子供も殺されていただろう。
俺は、そうやって理屈づけて自分を納得させる。
「五十隻の艦隊を丸々収納である……。アンジェロ少年のアイテムボックスは、今さらながら常識外である!」
黒丸師匠が呆れて絶叫しているが、知らんよ!
あの適当神メリクリウスに言ってくれ!
この船はキャランフィールドで解凍し、フリージア王国海軍船として使うのだ。
問題は、五十隻分の船員をどうするのか……。
ウォーカー船長に頼んでみるか。
キャランフィールドへ戻ると、もう日暮れだ。
「アンジェロ!」
「母上! どうしてここに!?」
キャランフィールドの執務室へ戻ると、アリーさんたち幹部連中と……母上がいた!
いや、母上だけじゃない。
俺の父である国王陛下、アルドギスル兄上の母である第二王妃。
そして、サラに白狼族の特殊部隊員も戻ってきている。
「これは……一体……。王都で何があったのですか?」
国王陛下である父上が代表して答えた。
「王都は敵の手に落ちた……」
「なっ!?」
「すまぬ……。私の力不足だ……」
そこからは、みんなが興奮してしまって収拾がつかなくなった。
王都から脱出してきて状況を伝える方も、聞く方のキャランフィールド組も冷静ではいられなかった。
メロビクス王大国軍に奇襲され、一気に王宮へ侵入されたらしい。
どうしたものかと頭を抱えた。
そここへエーベルバッハ男爵を乗せて王都へ飛んだグースが戻ってきた。
リス族のパイロットが手短に報告する。
「王宮から脱出できたのは、約二百人です! エーベルバッハ男爵と部下の二名は、王都へ潜入し情報収集を行うそうです!」
「「「「「おおっ!」」」」」
まとまった人数が無事だったことで、部屋の中の緊迫した空気が幾分柔らかくなった。
「ご苦労だった! パイロットは、休んでくれ。サラたちも良くやってくれた! ありがとう!」
「約束を守った! お袋様と親父様を守ると言っただろ?」
獣人は、家族と一族を大切にする。
サラは自分の功績を誇るでもなく、ただ家族を守ったのだと言う。
サラが俺の父と母を家族として守ってくれたことに、俺の心が温かくなった。
「そうだな。サラ! ありがとう! 白狼族の特殊部隊員も休んでくれ」
「おう!」
次は、父上たちだ。
見るからに憔悴している。
ここはアリーさんにお任せしよう。
「アリーさん。父上たちをお願いします」
「ええ。お休み頂きましょう」
「アンジェロ……。すまぬ……」
父上は血の気のない青い顔で、終始申し訳なさそうだった。
王都失陥の責任に押しつぶされそうになっているのだろう。
もちろん国王である父上の責任は免れない。
だが、俺も、まさか敵に王都を直撃されるとは、思ってもみなかった。
じいも、情報部も、アルドギスル兄上も、ヒューガルデン伯爵も、第二騎士団も、誰もが予想をしていなかったのだ。
せめて、俺だけでも……。
父上を責めまい。
息子の俺がしっかりしなくちゃ!
俺はニッコリと笑顔で父上を励ました。
「父上! ご安心ください! このアンジェロがおりますれば、王都はすぐに取り戻します!」
「アンジェロ……そなた……」
「それに、先ほどキャランフィールドへ迫っていた敵の連合海軍を撃滅いたしました。商業都市ザムザに迫った獣人たちは駆逐され、シメイ伯爵領を襲った敵は全滅。メロビクス王大国南部では、第二騎士団らが逆襲に出ています!」
「う……うむ……」
父上の顔に血色が戻ってきた。
こうして戦況を話していて気が付いたけれど、全体では我が軍の方が押しているのでは?
俺自身も父上に話している間に、大分冷静になってきた。
「残る敵は、アルドギスル兄上が対しているニアランド王国軍と、王都のメロビクス王大国軍だけです。問題なく片付きます」
そうだ。
一見すると……、敵軍はフリージア王国王都を抑えて有利に見える。
敵軍が北上すれば、アルドギスル兄上は挟撃されてしまう。
そうなれば、我が国北部は敵に奪われてしまう。
だが、そうなる前に手を打てば……。
我が軍の勝ちだ!
メロビクス王大国南部は、既に第二騎士団やじいたちが抑えている。
さらに北上し、アルドギスル兄上が守るアルドギスル領アルドポリスで、ニアランド王国軍を挟撃可能なのだ。
そこまで行けば、大河を渡って敵の王都直撃も見えてくる。
俺の話を聞いて、父上がゴクリとツバを飲んだ。
「それは……可能なのか?」
「我らなら可能です」
俺の言葉に、ルーナ先生と黒丸師匠も同意する。
「国王殿。アンジェロが語ったことは、絵空事ではない。実現可能」
「そうである。我ら『王国の牙』がいるからには、心配ご無用であるな!」
「というわけです。父上。お心を安んじ、ゆっくりとお休みください」
父上も安心したのだろう。
ほんの少しだが、笑顔を見せてくれた。
「うむ……。では、万事アンジェロに任せる。王命である! 王都からメロビクス軍を追い散らせ! 後は良きに計らえ!」
「謹んでお受けいたします!」
俺たちは膝を折って、父上からの王命を拝領した。
父上たちが、執務室を出てお休みになった所で、俺は矢継ぎ早に指示を出す。
「キューちゃん。グースを飛ばして、アルドギスル兄上や主立った連中に伝えて。『王都は落ちたが国王、王妃は無事。王都はアンジェロが、すぐに取り返す』とね。夜間飛行になるけど、頼むね」
「かしこまりました!」
「ウォーカー船長。ギュイーズ侯爵の所まで急いで頼む。『連合海軍は壊滅。王都は俺が奪還する。手出し無用』とね」
「よっしゃ! 『愛しのマリールー号』の快速を見せてやるぜ!」
「ジョバンニとエルハムさん。クイックの生産やミスリルの採掘は、いつも通りに。動揺する者がいても、生産や商取引は止めないで」
「お任せを! 戦争資金は稼ぎ続けます!」
「キャランフィールドは、お任せ下さい!」
これで、ヨシ!
次は、王都奪還だ。
「ひとまず王都へ少数で潜入しましょう。俺とルーナ先生と黒丸師匠で、どうでしょう?」
「了解した」
「しかし、どこへゲートをつなぐのであるか? 王宮はメロビクス王大国軍に押さえられてしまっているのである」
黒丸師匠が疑問を口にする。
もっともだ。
転移魔法で王宮にゲートをつないで、ゲートから出たらメロビクス兵と鉢合わせ……なんてことになれば、大騒ぎになる。
そこで――。
「じいちゃんの所へ行きます」
俺の祖父。
王都で商会を営むフランチェスコ・モリーノ。
モリーノ商会の祖父の仕事部屋には、何回か転移したことがある。
あそこなら安全だろう。
「なるほど。それは名案。メロビクス王大国軍も商人の所までは、兵を回していないなだろう」
「賛成なのである!」
ルーナ先生と黒丸師匠からOKをもらえた。
俺は、転移魔法でモリーノ商会にゲートをつないだ。
さあ、王都を取り返すぞ!
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