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第二章 流刑地への追放
第31話 実験農場
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領主エリアに土魔法で建物を作り始めて三日が経った。
制作は順調で、俺の作業は昨日終わった。
ルーナ先生は、室内の階段、玄関、窓を魔法で作り出している。
食堂の竈やキッチンは凝るつもりらしい。
現在のアンジェロ領の領主エリアは、穴あきの箱が沢山並んでいる状態だ。
明日から大工がドアや窓の取り付け作業に入る。ジョバンニが商業都市ザムザで手配したので、俺が朝夕転移魔法で送迎する。
小さいながらもやっと自分の領地が動き出した実感があるよ!
さて、俺は次の仕事だ……。
領主エリアの方はルーナ先生にお任せして、俺はジョバンニと村に来た。
領主として村の面倒も見ないとね。
アンジェロ領唯一の村は、人口十二名の寒村だ。
掘っ立て小屋が並ぶ村の住居エリアに、森を切り拓いて作った大して広くもない畑しかない。
領主としては、もうちょっと何とかしてやらないと。
「これは! これは! ご領主様!」
ジョバンニが村長を連れて来た。
「村長さん、今日は色々用事があって来ました。最初は農具から……」
俺はアイテムボックスから、商業都市ザムザで調達した鉄の農具を取り出した。
種類ごとに地面に置いていく。色々な道具をまとめ買いしたので、かなりの分量だ。
「ええっ! 領主様! 一体これは?」
「この農具や道具を村に貸し出します。クワ、鎌、ナタ、ノコギリ、手斧、斧、ナイフ、全部鉄製で各十ずつ用意しました」
「ええっ! よろしいのですか!? 鉄製の農具は高価と聞きますが、それをこんなに沢山!」
「ええ、良いのですよ。村の人数が減っちゃいましたからね。これで上手くやって下さい」
「ありがとうございます! これから大麦を育てる季節ですので、助かります!」
「鍛冶師を雇う予定なので、壊れたら鍛冶師に修理させます」
「はい! わかりました! ありがとうございます!」
この村は若者が出て行ってしまったので、年寄りが多い。人口も半減した。
だが、誰かが出て行った村人たちの畑を耕さなくてはならない。
畑なんて、放っておけばすぐに雑草が生えて荒れ地になってしまうのだ。
村の畑を維持するには、一人当たりの仕事効率を上げるしかない。
しかし、村人が使っている木製の農具や石器みたいな道具じゃ効率が上がるわけがない。
そこで、鉄製の農具や道具を俺が与えて、何とか効率的にやってもらおうと思う。
「ただし、税はちゃんと納める事。良いですね?」
これはじいから注意された事だ。
俺は最初鉄製の農具を村にプレゼントしようと思ったのだけれど、じいに反対された。
「何でもかんでも施すのはいけません。領民を甘やかす事になります。線を引くところはキチンと線を引いて下さい。鉄製農具は貸出とし、その代わりきちんと税を納めるようにお申し付け下さい」
確かにじいの言う通りだよね。
俺は領主の義務として、領民の面倒を見る。鉄製の農具を貸し出し、色々と村が住みやすいようにしてあげる。
その代わりに領民も義務を果たす。つまり税を納めて貰わないと。
「……わかりました。それで……、税は……、どれほどお納めすれば……」
しまった! そこはじいと打ち合わせてなかった!
税ってどれ位取れば正解なのだ?
うーん……。
日本人だった時は、どうしていただろう?
社員になった時は、税金と社会保険で二割くらい天引きされていた気がする。
村長さんが暗い顔をしているな。
税が高いか、安いかは死活問題だ。
小さな村だし、取れる税なんてたかがしれているだろし……。
うーんと……。
「じゃあ、農産物の二割で!」
「えっ!? それだけでよろしいのですか!?」
あれ!? 安すぎ!?
ジョバンニをチラッと見ると、天を仰いでいる。
あー! やっちまたか!
ど、どうしよう……。
そういや江戸時代は、四公六民や五公五民だったって学校で習ったな。
つまり当時の税率は四十パーセントから五十パーセント……。
そ、そうか。俺の提示した二十パーの税率は安すぎだよな。
また、じいにクドクドと小言を言われそうな予感が……。
そ、そうだ!
「こ……、これは臨時の特別措置だ! 村人が減ってしまったからな。正式な税率は追って沙汰する!」
「ははー!」
俺は精一杯威厳をつくろった。
とりあえず今年は二割で様子を見て、収穫の具合を見てじいに決めて貰おう。
「それから……、ジョバンニ! 魔物の素材の買い取り分を渡そう!」
俺はアイテムボックスから、塩の入った小ぶりな壺を取り出すとジョバンニに渡した。
商取引は商人のジョバンニの担当だからね。俺はあくまでアイテムボックスに入れて運んだだけ。今後を考えて、話はジョバンニからさせる。
「村長さん、これが前回お預かりしたホーンラビット二匹分の毛皮と角の対価です」
ジョバンニが小ぶりなツボを渡すと村長は中身を見て驚いている。
壺にはコップ二杯分の塩が入っている。
「こ、こんなに塩を頂けるのですか!」
「はい。お受け取り下さい。手数料は頂いていますので、その塩は正当な村の受け取り分ですよ」
「あ、ありがとうございます! これでしばらく塩には困りません」
村長はとても喜んでいる。
前のレートは塩小さじ一杯だったからな。いくらなんでも少なすぎだろ騎士ゲー。
「それから、次に魔物を倒したら、アンジェロ様がお貸しなされた鉄製のナイフを使って、丁寧に魔物を解体して下さい。綺麗に解体すれば、高く売れますよ。他に欲しい物があれば、交換するので希望を言って下さいね」
「次は……、布……、服が欲しいですね」
「ちょっと高くなりますが、大丈夫ですよ」
いつの間にか他の村人も集まって来ている。
村長とジョバンニの話を聞いて、女性陣がヒソヒソ話しながら目をギラつかせている。
「何々?」
「えっ!? 塩がそんなに沢山!?」
「布と交換出来るの?」
「鍋とは交換出来ないかしら?」
いいよ! いいよ!
健全な物欲は、健全な経済を育てるからね!
男性陣は鉄製の農具と道具に群がっている。
年寄りが多いが、鉄製の道具を使えば、年寄りでもそれなりに働けるだろう。
「なあ、このナイフ鉄製だぞ!」
「俺たちが使ってよいのか?」
「このクワ! 先端が鉄だぞ!」
「すげえ! これで冬の薪割がはかどる!」
喜んで貰って何よりだ。
俺も嬉しい!
男ってさ、大工道具とか見ると意味もなく燃えるよね。
日本に住んでいた頃の話だけれど、ホームセンターに行くと使いもしないのに電動ドリルとか凄そうな工具が欲しくなったもん。
ただ、今回農具を買ってきて俺も驚いたのだけれど、クワは日本にあるクワと形が違う。
クワというよりもスコップの様な形をしていて、鉄製と言っても先端部分の木を鉄でカバーしただけの物だった。
鍛冶屋いわく、これがフリージア王国で標準的なクワだそうだ。
ちなみにお値段銀貨一枚、日本円で約一万円。
農民の買えない値段じゃないと思うけど、ちょっと高いよね。
こんなクワでも木製のクワよりもマシ……、なんだろうな。
うーん、日本にあったL字型の鍬の方が、優れていると思う。先端の鉄の重みで鍬が深く畑に入るだろうしさ。
ああ、思い出した。
他にもクワの先端が櫛みたいになっているタイプもあったな。
鍛冶師を雇えて時間があれば、日本のクワを制作させてみよう。
ここの村で試してもらって……。
うん、この村は実験農場的な位置づけにしても良いかもしれないな。
制作は順調で、俺の作業は昨日終わった。
ルーナ先生は、室内の階段、玄関、窓を魔法で作り出している。
食堂の竈やキッチンは凝るつもりらしい。
現在のアンジェロ領の領主エリアは、穴あきの箱が沢山並んでいる状態だ。
明日から大工がドアや窓の取り付け作業に入る。ジョバンニが商業都市ザムザで手配したので、俺が朝夕転移魔法で送迎する。
小さいながらもやっと自分の領地が動き出した実感があるよ!
さて、俺は次の仕事だ……。
領主エリアの方はルーナ先生にお任せして、俺はジョバンニと村に来た。
領主として村の面倒も見ないとね。
アンジェロ領唯一の村は、人口十二名の寒村だ。
掘っ立て小屋が並ぶ村の住居エリアに、森を切り拓いて作った大して広くもない畑しかない。
領主としては、もうちょっと何とかしてやらないと。
「これは! これは! ご領主様!」
ジョバンニが村長を連れて来た。
「村長さん、今日は色々用事があって来ました。最初は農具から……」
俺はアイテムボックスから、商業都市ザムザで調達した鉄の農具を取り出した。
種類ごとに地面に置いていく。色々な道具をまとめ買いしたので、かなりの分量だ。
「ええっ! 領主様! 一体これは?」
「この農具や道具を村に貸し出します。クワ、鎌、ナタ、ノコギリ、手斧、斧、ナイフ、全部鉄製で各十ずつ用意しました」
「ええっ! よろしいのですか!? 鉄製の農具は高価と聞きますが、それをこんなに沢山!」
「ええ、良いのですよ。村の人数が減っちゃいましたからね。これで上手くやって下さい」
「ありがとうございます! これから大麦を育てる季節ですので、助かります!」
「鍛冶師を雇う予定なので、壊れたら鍛冶師に修理させます」
「はい! わかりました! ありがとうございます!」
この村は若者が出て行ってしまったので、年寄りが多い。人口も半減した。
だが、誰かが出て行った村人たちの畑を耕さなくてはならない。
畑なんて、放っておけばすぐに雑草が生えて荒れ地になってしまうのだ。
村の畑を維持するには、一人当たりの仕事効率を上げるしかない。
しかし、村人が使っている木製の農具や石器みたいな道具じゃ効率が上がるわけがない。
そこで、鉄製の農具や道具を俺が与えて、何とか効率的にやってもらおうと思う。
「ただし、税はちゃんと納める事。良いですね?」
これはじいから注意された事だ。
俺は最初鉄製の農具を村にプレゼントしようと思ったのだけれど、じいに反対された。
「何でもかんでも施すのはいけません。領民を甘やかす事になります。線を引くところはキチンと線を引いて下さい。鉄製農具は貸出とし、その代わりきちんと税を納めるようにお申し付け下さい」
確かにじいの言う通りだよね。
俺は領主の義務として、領民の面倒を見る。鉄製の農具を貸し出し、色々と村が住みやすいようにしてあげる。
その代わりに領民も義務を果たす。つまり税を納めて貰わないと。
「……わかりました。それで……、税は……、どれほどお納めすれば……」
しまった! そこはじいと打ち合わせてなかった!
税ってどれ位取れば正解なのだ?
うーん……。
日本人だった時は、どうしていただろう?
社員になった時は、税金と社会保険で二割くらい天引きされていた気がする。
村長さんが暗い顔をしているな。
税が高いか、安いかは死活問題だ。
小さな村だし、取れる税なんてたかがしれているだろし……。
うーんと……。
「じゃあ、農産物の二割で!」
「えっ!? それだけでよろしいのですか!?」
あれ!? 安すぎ!?
ジョバンニをチラッと見ると、天を仰いでいる。
あー! やっちまたか!
ど、どうしよう……。
そういや江戸時代は、四公六民や五公五民だったって学校で習ったな。
つまり当時の税率は四十パーセントから五十パーセント……。
そ、そうか。俺の提示した二十パーの税率は安すぎだよな。
また、じいにクドクドと小言を言われそうな予感が……。
そ、そうだ!
「こ……、これは臨時の特別措置だ! 村人が減ってしまったからな。正式な税率は追って沙汰する!」
「ははー!」
俺は精一杯威厳をつくろった。
とりあえず今年は二割で様子を見て、収穫の具合を見てじいに決めて貰おう。
「それから……、ジョバンニ! 魔物の素材の買い取り分を渡そう!」
俺はアイテムボックスから、塩の入った小ぶりな壺を取り出すとジョバンニに渡した。
商取引は商人のジョバンニの担当だからね。俺はあくまでアイテムボックスに入れて運んだだけ。今後を考えて、話はジョバンニからさせる。
「村長さん、これが前回お預かりしたホーンラビット二匹分の毛皮と角の対価です」
ジョバンニが小ぶりなツボを渡すと村長は中身を見て驚いている。
壺にはコップ二杯分の塩が入っている。
「こ、こんなに塩を頂けるのですか!」
「はい。お受け取り下さい。手数料は頂いていますので、その塩は正当な村の受け取り分ですよ」
「あ、ありがとうございます! これでしばらく塩には困りません」
村長はとても喜んでいる。
前のレートは塩小さじ一杯だったからな。いくらなんでも少なすぎだろ騎士ゲー。
「それから、次に魔物を倒したら、アンジェロ様がお貸しなされた鉄製のナイフを使って、丁寧に魔物を解体して下さい。綺麗に解体すれば、高く売れますよ。他に欲しい物があれば、交換するので希望を言って下さいね」
「次は……、布……、服が欲しいですね」
「ちょっと高くなりますが、大丈夫ですよ」
いつの間にか他の村人も集まって来ている。
村長とジョバンニの話を聞いて、女性陣がヒソヒソ話しながら目をギラつかせている。
「何々?」
「えっ!? 塩がそんなに沢山!?」
「布と交換出来るの?」
「鍋とは交換出来ないかしら?」
いいよ! いいよ!
健全な物欲は、健全な経済を育てるからね!
男性陣は鉄製の農具と道具に群がっている。
年寄りが多いが、鉄製の道具を使えば、年寄りでもそれなりに働けるだろう。
「なあ、このナイフ鉄製だぞ!」
「俺たちが使ってよいのか?」
「このクワ! 先端が鉄だぞ!」
「すげえ! これで冬の薪割がはかどる!」
喜んで貰って何よりだ。
俺も嬉しい!
男ってさ、大工道具とか見ると意味もなく燃えるよね。
日本に住んでいた頃の話だけれど、ホームセンターに行くと使いもしないのに電動ドリルとか凄そうな工具が欲しくなったもん。
ただ、今回農具を買ってきて俺も驚いたのだけれど、クワは日本にあるクワと形が違う。
クワというよりもスコップの様な形をしていて、鉄製と言っても先端部分の木を鉄でカバーしただけの物だった。
鍛冶屋いわく、これがフリージア王国で標準的なクワだそうだ。
ちなみにお値段銀貨一枚、日本円で約一万円。
農民の買えない値段じゃないと思うけど、ちょっと高いよね。
こんなクワでも木製のクワよりもマシ……、なんだろうな。
うーん、日本にあったL字型の鍬の方が、優れていると思う。先端の鉄の重みで鍬が深く畑に入るだろうしさ。
ああ、思い出した。
他にもクワの先端が櫛みたいになっているタイプもあったな。
鍛冶師を雇えて時間があれば、日本のクワを制作させてみよう。
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