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§ 嫁にするのも悪くは……ない?
06
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爽快な気分で風呂を出ると、洗濯機の上にバスタオルと着替えがきちんと畳まれて置いてある。
「ああ、やっぱり嫁ほしー」
独り言ち、全身を拭いて着替えの下着を手に取ったところで、夢から覚めた。
「ちょっと待て。あいつは俊輔だぞ?」
ハッと嫌な予感がして洗濯カゴの中を見ると、今脱いだ服以外の汚れ物はやはり、何も入っていない。
「あいつ……」
大急ぎで服を着てバスタオルを頭に乗せたまま寝室へ駆け込み、ベランダに面した窓のカーテンを開けると、目の前には、シワを綺麗に伸ばされ干されたシーツやジャージと一緒に、お気に入りの高級レースのブラジャーとパンツが風に揺れていた。
「うわぁああぁぁあ!!!」
叫び声に驚いたのか、ダダダっと大きな足音を立て俊輔が寝室へ駆け込んできた。
「どうした? 大丈夫か?」
「あ、あ、あ、あれ……」
「なに? 洗濯物がどうかした?」
俊輔は怪訝そうな顔をして私の指差す方向を見た瞬間、ああと合点がいった顔をして得意気に説明を始めた。
「ああ、ブラジャーとパンツ! 大丈夫。ちゃんと内側に干してあるから、外から見えねえって」
「ち、違う。そういうこと言ってるんじゃなくて……」
「なに? ……ああ! あれは、レースだったからちゃんと洗濯マーク確認して手洗いしたから大丈夫。俺、こう見えて洗濯は得意なんだよ。ねーちゃんにたっぷり仕込まれたからさ。あいつは煩いんだ。色物と白物は分けて洗えとか、洗う前に洗濯マークを必ず確認しろとか、繊細な物は手洗いしろとかさ。ねーちゃんのレースのパンツ、そのまま他の洗濯物と一緒に洗濯機に放り込んで穴開けたときには弁償させられたからな。あれは高かったぞ。それ以来、洗濯には慎重になったんだわ」
「手洗い……」
卒倒しそうだ。ブラジャーとパンツを手洗いされてしまうなんて。それにしても、美咲ちゃんはこいつにいったい何をさせていたのか。
「波瑠? どうした? 顔、真っ赤だぞ?」
「うー、もうやだ」
私は両手で顔を覆って、ヘナヘナとその場にへたり込んだ。
::
夢と現実は、違う。私は、あっさりと嫁への幻想を捨てた。
俊輔の顔を見るだけで、気持ち良さそうに風に揺れていたブラジャーとパンツが頭に浮かびモヤモヤするので、あれきり話もしていない。あいつはあっちの部屋こっちの部屋とウロウロ何かしているようだったが、残り時間は僅かしかないので、私はブラジャーとパンツ問題を頭から追いやり、仕事に打ち込んだ。
今回のリーフはイメージが掴み易かったためか、それほど悩むこともなく夕方には二案ともデザインが完成した。
プリント出しまで終わり、ホッとしたところで、気が抜けたのか眠気に襲われた。俊輔に一言寝ると告げ、私はそのままベッドにダイブ。朦朧とした頭で夢と現実の狭間を彷徨っていると、何かが身体の上に乗って首に巻きついてきた。生暖かい微風とともに、唇にねっとりと湿った何かが触れる。
「うーん。やだ……。みーさん、やめて……」
目を閉じたままもがいて、手で払い除けると、重みと生暖かさが消えた。
私はそのまま意識を手放した。
「ああ、やっぱり嫁ほしー」
独り言ち、全身を拭いて着替えの下着を手に取ったところで、夢から覚めた。
「ちょっと待て。あいつは俊輔だぞ?」
ハッと嫌な予感がして洗濯カゴの中を見ると、今脱いだ服以外の汚れ物はやはり、何も入っていない。
「あいつ……」
大急ぎで服を着てバスタオルを頭に乗せたまま寝室へ駆け込み、ベランダに面した窓のカーテンを開けると、目の前には、シワを綺麗に伸ばされ干されたシーツやジャージと一緒に、お気に入りの高級レースのブラジャーとパンツが風に揺れていた。
「うわぁああぁぁあ!!!」
叫び声に驚いたのか、ダダダっと大きな足音を立て俊輔が寝室へ駆け込んできた。
「どうした? 大丈夫か?」
「あ、あ、あ、あれ……」
「なに? 洗濯物がどうかした?」
俊輔は怪訝そうな顔をして私の指差す方向を見た瞬間、ああと合点がいった顔をして得意気に説明を始めた。
「ああ、ブラジャーとパンツ! 大丈夫。ちゃんと内側に干してあるから、外から見えねえって」
「ち、違う。そういうこと言ってるんじゃなくて……」
「なに? ……ああ! あれは、レースだったからちゃんと洗濯マーク確認して手洗いしたから大丈夫。俺、こう見えて洗濯は得意なんだよ。ねーちゃんにたっぷり仕込まれたからさ。あいつは煩いんだ。色物と白物は分けて洗えとか、洗う前に洗濯マークを必ず確認しろとか、繊細な物は手洗いしろとかさ。ねーちゃんのレースのパンツ、そのまま他の洗濯物と一緒に洗濯機に放り込んで穴開けたときには弁償させられたからな。あれは高かったぞ。それ以来、洗濯には慎重になったんだわ」
「手洗い……」
卒倒しそうだ。ブラジャーとパンツを手洗いされてしまうなんて。それにしても、美咲ちゃんはこいつにいったい何をさせていたのか。
「波瑠? どうした? 顔、真っ赤だぞ?」
「うー、もうやだ」
私は両手で顔を覆って、ヘナヘナとその場にへたり込んだ。
::
夢と現実は、違う。私は、あっさりと嫁への幻想を捨てた。
俊輔の顔を見るだけで、気持ち良さそうに風に揺れていたブラジャーとパンツが頭に浮かびモヤモヤするので、あれきり話もしていない。あいつはあっちの部屋こっちの部屋とウロウロ何かしているようだったが、残り時間は僅かしかないので、私はブラジャーとパンツ問題を頭から追いやり、仕事に打ち込んだ。
今回のリーフはイメージが掴み易かったためか、それほど悩むこともなく夕方には二案ともデザインが完成した。
プリント出しまで終わり、ホッとしたところで、気が抜けたのか眠気に襲われた。俊輔に一言寝ると告げ、私はそのままベッドにダイブ。朦朧とした頭で夢と現実の狭間を彷徨っていると、何かが身体の上に乗って首に巻きついてきた。生暖かい微風とともに、唇にねっとりと湿った何かが触れる。
「うーん。やだ……。みーさん、やめて……」
目を閉じたままもがいて、手で払い除けると、重みと生暖かさが消えた。
私はそのまま意識を手放した。
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