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わたしだって恋をする。
肆
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西園寺綾乃、西園寺佳乃。言わずと知れた西園寺本社アパレル部門のトップツーである妖艶な美女たちは、我が専務である西園寺要の双子の姉である。
「あ!」
「綾姉、佳姉!」
表も裏も真っ黒な佐伯が、突如、人が変わったように笑みを浮かべふたりの美女に駆け寄っていく。その後ろ姿はまさに、喜び勇んで尻尾を振る大型犬。
「美女に尻尾を振る佐伯さん……初めて見たわ……」と、口に出してしまったのは不可抗力だ。
「久しぶりね、祐ちゃん」
「ほんとよー、祐ちゃんったら最近ちっとも顔見せてくれないんだもの」
「なんだよぉ、連絡くれれば迎えに行ったのに」
チラと振り返れば、専務は口をパカッと開けたまま、親密そうにボディタッチを繰り返しつつ歓談する美女ふたりと大型犬一匹を呆然と眺めている。
「専務?」
「あ? ああ……」
ハッと我に返った専務が思い直したように姿勢を正して立ち上がった。
「綾乃姉さん、佳乃姉さん、ふたりとも、突然訪ねてくるなんてどうしたんだよ? なにかあったのか?」
その言葉を合図に、ふたつの顔がこちらを向いた。
一方は、真っ黒で艶やかなストレートショートボブ。遠目で見ても高級感漂う艶々のブラックスーツと同色のピンヒールで上から下までバッチリ決まった如何にも仕事のできる女。もう一方は、肩口で揺れる豊かな栗色のウエーブヘアに、深いカットが胸の谷間を際出させた色気たっぷりゴージャスな金色のワンピース姿。
髪型化粧服装がどこまでも対照的な同じ顔が、なぜかわたしを凝視している。
「あ、あの……」
「相沢さん?」
「あなたが相沢優香さんね?」
「は、はい。あ?」
その問いは、正確には問いではなくて断定だったよう。
きゃあと上がった悲鳴とともに迫ってきた、ふたりの魔女——もとい美女に、わたしは両側からがっちりホールドされた。
「ちっちゃくてかわいいわぁ」
「噂どおりねー」
早口で捲し立てるふたりに、髪を撫で引っ張り眼鏡を奪われ抱きつかれ身体中を撫で回されてされるがまま。呆然とするだけで抵抗する隙もない。
為す術も無くそれを見守る男ふたりにかろうじて動く目だけで助けを求めたが、専務は諦めろと言わんばかりに目を逸らし、佐伯は生け贄を差し出す邪教の神官の如く、十字を切ってわたしを拝んだ。
ちょっとどういうことよ、助けてくれたっていいじゃないの。
「じゃあ行きましょうか」
「要、優香ちゃんちょっと借りるわねー」
「えっ? ちょ……なっ……」
「大丈夫よ、帰りはちゃんと送るから」
「いいから。あんたたちは仕事しなさい」
「…………」
こうしてわたしは、訳もわからぬまま、突如現れた美女ふたりに両側から腕を組まれ引き摺られるようにしてオフィスから拉致された。
「あ!」
「綾姉、佳姉!」
表も裏も真っ黒な佐伯が、突如、人が変わったように笑みを浮かべふたりの美女に駆け寄っていく。その後ろ姿はまさに、喜び勇んで尻尾を振る大型犬。
「美女に尻尾を振る佐伯さん……初めて見たわ……」と、口に出してしまったのは不可抗力だ。
「久しぶりね、祐ちゃん」
「ほんとよー、祐ちゃんったら最近ちっとも顔見せてくれないんだもの」
「なんだよぉ、連絡くれれば迎えに行ったのに」
チラと振り返れば、専務は口をパカッと開けたまま、親密そうにボディタッチを繰り返しつつ歓談する美女ふたりと大型犬一匹を呆然と眺めている。
「専務?」
「あ? ああ……」
ハッと我に返った専務が思い直したように姿勢を正して立ち上がった。
「綾乃姉さん、佳乃姉さん、ふたりとも、突然訪ねてくるなんてどうしたんだよ? なにかあったのか?」
その言葉を合図に、ふたつの顔がこちらを向いた。
一方は、真っ黒で艶やかなストレートショートボブ。遠目で見ても高級感漂う艶々のブラックスーツと同色のピンヒールで上から下までバッチリ決まった如何にも仕事のできる女。もう一方は、肩口で揺れる豊かな栗色のウエーブヘアに、深いカットが胸の谷間を際出させた色気たっぷりゴージャスな金色のワンピース姿。
髪型化粧服装がどこまでも対照的な同じ顔が、なぜかわたしを凝視している。
「あ、あの……」
「相沢さん?」
「あなたが相沢優香さんね?」
「は、はい。あ?」
その問いは、正確には問いではなくて断定だったよう。
きゃあと上がった悲鳴とともに迫ってきた、ふたりの魔女——もとい美女に、わたしは両側からがっちりホールドされた。
「ちっちゃくてかわいいわぁ」
「噂どおりねー」
早口で捲し立てるふたりに、髪を撫で引っ張り眼鏡を奪われ抱きつかれ身体中を撫で回されてされるがまま。呆然とするだけで抵抗する隙もない。
為す術も無くそれを見守る男ふたりにかろうじて動く目だけで助けを求めたが、専務は諦めろと言わんばかりに目を逸らし、佐伯は生け贄を差し出す邪教の神官の如く、十字を切ってわたしを拝んだ。
ちょっとどういうことよ、助けてくれたっていいじゃないの。
「じゃあ行きましょうか」
「要、優香ちゃんちょっと借りるわねー」
「えっ? ちょ……なっ……」
「大丈夫よ、帰りはちゃんと送るから」
「いいから。あんたたちは仕事しなさい」
「…………」
こうしてわたしは、訳もわからぬまま、突如現れた美女ふたりに両側から腕を組まれ引き摺られるようにしてオフィスから拉致された。
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